Jクラブ内定エース「まだ足りない」 長友佑都、松木玖生らから学んだ「100%」

法政大3年FW小湊絆、関東2部前期首位ターンの原動力
関東大学サッカーリーグ2部の前期最終戦となる第9節の延期分、山梨学院大対法政大の一戦が7月13日、山梨学院大学川田ツインサッカー場で行われた。試合は法政大が2-1で勝利を収め、前期を8勝2分1敗の単独首位で折り返すことに成功した。
【PR】DAZNを半額で視聴可能な学生向け「ABEMA de DAZN 学割プラン」が新登場!
この試合で先制ゴールを決めたのは、法政大の3年生エースストライカー小湊絆(つな)。すでにJ1・FC東京入りが内定している注目のストライカーは、開始3分、左CKに鋭く反応してゴールに押し込み、試合の流れを引き寄せた。これが今季5点目となり、得点ランキングでも5位タイに浮上している。
それでも本人は「首位ターンはできましたが、正直、もう少し僕の個人的な数字がそこに上乗せできたらよかったと思います。まだチームへの貢献度は足りないと思います」と語り、結果に対して満足感を見せることはなかった。
とはいえ、小湊のチームへの貢献は、得点やアシストといった数字以上に大きい。今季はアシストも3つを記録し、これはリーグ2位タイ。さらには、持ち前のスプリント能力に加え、相手のボール保持位置や身体の向き、ビルドアップの形を読み取るインテリジェンスを活かした前線からのハイプレスも見逃せない。また、フィジカルを活かしてボールを収め、左サイドの小池直矢や右サイドの松村晃助らアタッカー陣の抜け出しをサポートするプレーでも存在感を発揮。攻守に渡ってダイナミズムをもたらす小湊の存在は、法政大の首位ターンを支えた大きな原動力となっている。
「やっぱりチームが勝つのが一番だと思っているので、そこは惜しまずに守備のところもやらないといけないと思っています。法政大はなるべくボールを持つスタイルでやっているので、自分たちがボールを持つ時間を長くするためにも、ハイプレスやプレスバックはやらないといけない。そこは柳沢将之監督からも要求されていて、僕も納得してそれをやっています。そのタスクをやりながら、自分なりの違いを見せられる選手にならないと上には行けないと思っています」
彼が強くこう思うのは理由がある。もともと小湊は、名門・青森山田高校でキャプテンとエースストライカーを兼務。責任感の強さ、チームのためという献身的な姿勢に加え、結果も残せる選手だった。
大学に進んでからは、その責任の幅も広がった。やがて進路をFC東京に決め、大学サッカーの高いレベルとプロの厳しさに直面し、チームのために自分を生かす意識がさらに研ぎ澄まされていった。
FC東京の練習に参加、プロ選手から学び「チームを引き締めてくれていて…」
2025年6月、小湊は1週間にわたりFC東京の練習に参加。プロの現場に再び触れたことで、その意識はより一層強まった。
「春に(FC東京に)行った時と、6月に行った時の変化を感じました。春はシーズン前でみんなフレッシュな状態で、全員の活気があったのですが、6月はある程度シーズンも消化をして、連戦もあって、個々のコンディション面などの差が大きくなっていると感じました」
そんな状況下で、彼の目を奪ったのが、長友佑都、森重真人、そしてキャプテン・小泉慶らベテラン勢の姿だった。
「モリゲさん、佑都さんは、暑い中でも常に声を絶やさずにチームを引き締めてくれていて、慶さん、ヤンさん(高宇洋)なども周りを鼓舞してくれていました。何より、練習前の準備も入念で、練習に100%で挑めるようにしていますし、暑かったり、連戦が続いたりしても、負荷をかけるべきところはしっかりと負荷をかける。当然、練習後のケアも徹底している。その姿を目の当たりにして、僕も見習っていきたいと強く思いました」
この“着眼点”こそ、小湊が持つ最大の武器の1つだ。表面的なパフォーマンスではなく、本質的な取り組み方に敏感であり、それを見逃さず、自分の成長に即座に取り入れる。
「ピッチ内のこともそうですが、ピッチ外のこと、全体練習が終わった後にどんな練習をしているのか、どんなケアをしているのか、クラブハウスでの過ごし方にも目が向きます。お手本にすべき選手を探して、その人について行くのは昔からです」
高校時代から、小湊にはお手本となる先輩たちがいた。1学年上には松木玖生(サウサンプトン)、日本代表にも選出された宇野禅斗(清水エスパルス)らが在籍。日々のトレーニングや取り組みの姿勢から、多くの学びを得てきた。
「見て学んで取り入れながら行動をして、それを見て周りが『あいつもやっているから俺も』と思ってくれたら嬉しいなと思っています」
その思いは伝播していく。プロフェッショナルな姿勢を持つ選手たちから常に刺激を受け、自らも背中で語ろうとする小湊は、これからも法政大のために、そして来たるFC東京での挑戦に向けて、目の前の“やるべきこと”に全力を注ぎ続ける。その積み重ねが、きっと次の扉を開いてくれると信じて。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。




















