清水・秋葉忠宏監督、名古屋戦後に「2人の監督の差が出た試合でした」

　清水エスパルスの秋葉忠宏監督は潔かった。

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「2人の監督の差が出た試合でした。名古屋の長谷川健太監督は、暑さ、連戦を考慮し、しっかりと5枚のカードを切ってきたのに、僕は大胆な振る舞いができなかった」

　ここまで5位につける清水と、降格圏の19位に沈む名古屋グランパスが対戦した国立競技場には、5万2847人の観衆が押し寄せた。

　ところが順位とは裏腹に前半ゲームを制圧したのは名古屋だった。大半の時間帯で清水を自陣に閉じ込める展開のなかから必然の先制ゴールが生まれる。右ウイングバックの内田宅哉がニアにクロスを送ると、飛び出したボランチの稲垣祥がフリーで合わせた。前半は名古屋が62％も支配し、清水の倍近いパスをつないでいたから形勢は明らかで、当然スコアも流れも相手に持っていかれた清水は後半頭から動いてくるものと推測した。

　だが先に動いたのはリードして、上手く試合を進めていた名古屋のほうだった。長谷川健太監督は、最前線でマテウス・カストロのパスを引き出していた駿足の永井謙佑に代えて山岸祐也を送り出す。

「連戦なので、ある程度プランを固めてきていました。リードできていても、そうでなくても思い切って代えていこうと」

　前半の清水は人数をかけて敵陣に押し込むのが難しく、直前のFC東京戦では見事な股抜きドリブルからダメ押しゴールを決めた乾貴士が、強引に単独打開を試み力んでタッチが大きくなるシーンが見られるほどだった。

　結局清水は前半のままのメンバーで戦い、後半の開始5分間で2失点をして事実上ゲームは決着してしまう（清水が0-3敗戦）。清水の秋葉監督が、ようやく選手交代をしたのは後半10分。しかも、もはやギャンブルに出るしかない状況で切ったカードは1枚で、3枚代えに出たのは後半18分だった。

　清水のベンチには、2人の助っ人選手が控えていた。だが圧倒的劣勢の事態に直面しても、なかなか打開策の回答にはならない。そして秋葉監督は、3点差がついた致命的局面で、アフメド・アフメドフとともに、いずれも18歳の西原源樹と嶋本悠大をピッチに立たせることになった。

大きな志ゆえの悔恨「彼らも出せば躍動してくれるのに…」

　18歳の2人にしても経験値を高められたのは収穫だったかもしれないが、中途半端な期待値に映った可能性がある。それも重々承知したうえで、指揮官は猛省している様子だった。

「彼らも出せば躍動してくれるのに、どうしてもっと大胆にできなかったのか……。いつも言っているように、よりアグレッシブに、超攻撃的に振る舞えるように……またへぼい采配をするわけにはいかないので、しっかりと反省します」

　開幕戦で東京ヴェルディに勝利した時は「清水がJ1を牽引していけると思っている。このまま一分の隙も見せずに36試合戦い抜きたい」と強烈なメッセージを残した。大きな志があるからこそ、悔恨も倍化したに違いない。

　AFCチャンピオンズリーグエリートで決勝進出を果たした川崎フロンターレの長谷部茂利監督は、すべての選手の可能性を引き出す総力戦志向で勝ち上がった。最も厳しい戦いが予想された準決勝のアル・ナスル戦で、脇坂泰斗とエリソンをベンチに残し、神田奏真と大関友翔をスタメンに抜擢したのも、ここまでのリーグ戦の采配そのままだった。メンバーの序列を固めず、好調な選手の起用を躊躇しない。そこが前体制からの大きな変化だった。

　これから日本列島には、本格的な猛暑が襲いかかる。春先まで稀に見る団子状態が続くJ1だが、ここからはチーム内の競争力や総合力の質が明暗を分けていくはずだ。