J1リーグの“新盟主”に? C大阪&広島が今季序盤で躍進…なぜ上位進出に成功したのか【コラム】

今季新加入でチームに好影響を与えている登里享平と大橋祐紀【写真:徳原隆元 & Getty Images】
今季新加入でチームに好影響を与えている登里享平と大橋祐紀【写真:徳原隆元 & Getty Images】

J1リーグ序盤戦でC大阪&広島が示す強さの背景

 驚きの躍進を遂げるJ1初参戦のFC町田ゼルビアの陰に隠れてはいるものの、第9節を終えて2位に付けるセレッソ大阪と3位のサンフレッチェ広島もまた、今季のJ1リーグの主役となり得る戦いを続けている。

 C大阪はクラブ創立30周年の節目の年に、タイトル奪取を明確に目標に掲げて今シーズンに臨んでいる。

 その本気度はシーズンオフから見て取れた。北海道コンサドーレ札幌からMF田中駿汰とFWルーカス・フェルナンデスを獲得し、川崎フロンターレからDF登里享平を迎え入れた。彼ら新戦力の存在が、開幕8戦無敗を実現し、一時は首位に立つなど、昨季は9位に終わったチームを進化させる要因となっている。

 とりわけ存在感を放つのは登里だ。川崎の黄金期を築いた左サイドバックは、サイドに張るだけではなく、絶妙な立ち位置でボールを引き出し、ビルドアップの流れをスムーズにする役割を担う。組み立てに関わるのみならず、デュエル勝利数、こぼれ球奪取数でもリーグで上位に付けるなど、守備での貢献度の高さも光る。

 田中は札幌では3バックの一角を担ったが、新天地では10番を背負いアンカーの位置で起用されている。攻守のつなぎ役としてリズミカルにボールをさばき、昨季はMF香川真司をアンカー起用するなど試行錯誤が続いた4-3-3の布陣を機能させている。

 この2人に、両センターバックと日本代表にも選出される右サイドバックのDF毎熊晟矢も加わったビルドアップの機能美は、今季のJ1でも指折りだろう。流動的にボールを前に進め、ギャップを生み出し、FWレオ・セアラが仕上げ役を担う。個で打開できる両ウイングも含めた強力3トップはハイプレスも厭わず、小菊昭雄監督が求める戦術を献身的に体現しているのも見逃せないポイントだ。

 ここに一時は離脱した大黒柱の香川、さらに怪我からの復帰を目指すMF清武弘嗣の存在もある。第9節の名古屋グランパス戦では今季初黒星を喫したものの、確かなスタイルとタレントが揃うC大阪が、今後もしばらくは上位争いを演じていく可能性は高いだろう。

広島はリーグ戦で唯一の負けなしクラブ【写真:徳原隆元】
広島はリーグ戦で唯一の負けなしクラブ【写真:徳原隆元】

9試合で唯一無敗の広島、勝星よりも引き分けの数が上回る状況

 一方で開幕から無敗を続けるのが広島だ。

 2年連続で3位となった広島の昨季データを振り返ると、シュート数をはじめ、クロス数、チャンスクリエイト数、ゴール期待値など軒並み高い数値をはじき出していた。

 しかし、足りなかったのはリーグワーストの決定率。FWドウグラス・ヴィエイラ、FWナッシム・ベン・カリファ(現アビスパ福岡)、FWピエロス・ソティリウと3人の助っ人ストライカーはいずれも怪我がちで稼働率が低く、点取り屋としての能力に物足りなさは否めなかった。

 明らかな課題を解消すべく、湘南ベルマーレから獲得したのがFW大橋祐紀だ。昨季は13ゴールをマークし、遅まきのブレイクを果たした27歳のストライカーは、新天地でもゴールを量産。開幕の浦和レッズ戦でいきなり2ゴールを奪うと、第7節の古巣戦でも2得点。ここまで全試合にフル出場し、6得点と期待どおりの働きを見せている。

 待望の得点源を手にした一方で、ハイプレス、ハイインテンシティーを体現する広島のサッカーにおいて、いずれも個の力で相手の攻撃を凌げるDF塩谷司、DF荒木隼人、DF佐々木翔の3バックは欠かすことができない。しかしその一角を担う荒木が第6節の町田戦で負傷離脱。緊急事態に陥ったが、代わって中央に入ったDF中野就斗がその穴を埋めるパフォーマンスを示している。むしろ起用の選択肢が増えたという意味では、まさに怪我の功名と言えるだろう。

 また日本代表にも選ばれたMF川村拓夢をはじめ、FW満田誠、GK大迫敬介、MF東俊希ら20代半ばのタレントが主軸を担っている点も広島の未来を明るく照らす。着実に経験を積み、自信を深める彼らのさらなる成長が、そのままチーム力の向上へとつながるはずだからだ。

 もっとも開幕から唯一負けなしを続ける広島だが、4勝5分と勝星よりも引き分けの数が上回る状況だ。大橋の獲得は確かにヒットだが、2シャドーを務める満田とFW加藤陸次樹の2人に結果がついてきておらず、その実、決定力不足の課題は思うように改善されていない。

 また今季もFWマルコス・ジュニオールをはじめとする助っ人陣が怪我で稼働できていないのも気掛かりな点。彼らの復調も今後の戦いに向けて不可欠な要素となるだろう。

 C大阪と広島に共通するのは、継続路線を突き進んでいることだ。確かな強化ビジョンを持ち、足りない部分を補いながら、着実に積み上げを実現している。小菊体制4年目のC大阪と、スキッベ体制3年目の広島。ともに戴冠への機は熟している。

(原山裕平 / Yuhei Harayama)



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原山裕平

はらやま・ゆうへい/1976年生まれ、静岡県出身。編集プロダクションを経て、2002年から『週刊サッカーダイジェスト』編集部に所属し、セレッソ大阪、浦和レッズ、サンフレッチェ広島、日本代表などを担当。2015年よりフリーランスに転身。

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