パリ五輪最終予選メンバー“当落線上3人” 大岩J常連MFは不完全燃焼、駆け込みアピールも【コラム】
東京Vの染野は京都戦で2ゴール、京都の川﨑は自身にカツ
4月16日のU-23中国代表戦から幕を開けるAFC・U-23アジアカップ(カタール)。2024年パリ五輪切符3.5枚を懸けたアジア最終予選でもある同大会。この重要な決戦に挑むU-23日本代表メンバー23人の発表が4日に迫ってきた。
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鈴木唯人(ブロンビー)ら欧州組招集可否は最終的に2日に判明すると見られるが、国内組主体とした陣容で挑むことはほぼ確実だ。同組のU-23韓国代表はA代表が臨んだ1~2月のアジアカップ(カタール)に参戦したキム・ジス(ブレントフォード)やヤン・ヒョンジュン(セルティック)ら欧州組5人を招集したのを見ると、やはり不安も少なくないが、日本としては最大限の力を出し切るしかない。
こうした中、“当落線上”と言われる面々も気を吐いている。とりわけ、際立った存在感を示しているのが、FW染野唯月(東京ヴェルディ)。3月のU-23マリ、ウクライナ2連戦では連続してピッチに立ちながらも、ノーゴールに終わり、悔しい思いしてクラブに戻った彼は3月29日の京都サンガ戦で2ゴールをゲット。敗戦濃厚だったチームを救っている。
染野の1点目は、山見大登のドリブル突破から得たPKを確実に決めたもの。「自分が『蹴らせてくれ』とお願いして、蹴らせてもらえたので。蹴る時は冷静に決めることができたので良かったです」と本人は自ら志願して奪った得点だったことを明かした。
さらに、齋藤功佑のクロスに飛び込んだ後半ロスタイムの2点目は、駆け引きとゴール前の嗅覚に秀でる染野の真骨頂だった。
「あそこは常に狙っているところ。ゴール前に入っていく回数を絶対に誰よりも増やさなきゃいけないと思っていたので、本当にボールが来て、うまく相手の裏を取って決められたのでよかった」と安堵感をのぞかせた。
こういったゴールシーンのみならず、前線からの守備やハードワーク、敵を背負ってタメを作る動きなどにも目に見える進化が感じられた。それは東京ヴェルディで城福浩監督から信頼され、起用され続けたことで、磨かれた部分だろう。
この一挙手一投足に対し、SNS上では「大迫(勇也=神戸)二世」といった評価も出ているほど。今の好調ぶりを見ていると、最終予選のキーマンになる可能性は大いにある。FWは旬な人材を積極的に使った方が好結果を得られることも多い。そういう意味で、染野の滑り込みは有力ではないか。
一方、染野擁する東京Vにギリギリのところで追いつかれた京都のキャプテン川﨑颯太の方は少し元気がない様子だった。彼はU-23マリ戦に先発し、山本理仁(シント=トロイデン)、植中朝日(横浜F・マリノス)と中盤を形成したが、失点につながるミスパスをしてしまい、不完全燃焼のままクラブに戻ることになった。だからこそ、この一戦に懸けていたはずだが、後半に入って2点のリードを守り切れず、納得のいかない表情を浮かべていた。
「代表で悔しい思いをしたので、ここで見せないと次もないと思いましたし、ここでしっかりやることが代表にもサンガにも自分にも繋がると思って高いモチベーションでやりましたけれども、自分の中でも、今ひとつだったかな。苦しい時にもっと声を出すところはまだまだ足りないですね」と彼は厳しい自己評価を下していた。
大岩ジャパンでは常連組としてここまで来た川﨑は昨年、A代表にも呼ばれた逸材。22歳にして曺貴裁監督からキャプテンマークを託されるあたりは、遠藤航(リバプール)を彷彿させるところがある。しかしながら、今回のU-23マリ戦で受けたショックは相当に大きかった模様。今季ベルギー1部で戦っている山本や藤田譲瑠チマ(シント=トロイデン)に比べて、身体能力の高い相手への対応力、苦境での発信力や統率力という部分でも見劣りしたと言わざるを得ない。
「もっと発信したり、リーダーシップ取って声を出すことを自分に求めていきたいし、それをサンガでできなきゃ代表でもできない。自分に厳しく求めたいと思います」と本人も改めて自らにカツを入れていた。
川﨑に関しては、ウクライナ戦でゴールという形でアピールした田中聡(湘南)との一騎打ちと見られるが、大岩剛監督からの信頼度や経験値を考えると、最終的にはメンバー入りするのではないか。本人も指揮官を信じて4日の発表を待っているはずだ。
左SB争いは熾烈…浦和DF大畑の推進力には期待
そしてもう1人、注目すべきなのが、左サイドバック(SB)の大畑歩夢(浦和レッズ)。このポジションはA代表経験のあるバングーナガンデ佳史扶(FC東京)が主軸で、左右のSBをこなせる内野貴史(デュッセルドルフ)と大畑が残り1枠を争っている状態だ。ドイツ6年目の内野は圧倒的な国際経験値があり、万能性もあるが、大畑のビルドアップ能力も捨てがたい。そこは指揮官も判断しかねるところではないか。
その大畑は3月30日のアビスパ福岡戦は後半途中からプレー。最初の3~4分間は左ウイングに入り、戦況が落ち着いたところで背後にいた渡邊凌磨とポジションを交代。左SBに下がるという異例の形を強いられた。
「昨日の練習後に監督から『サイドの前で行くぞ』と言われてビックリした」と本人もサプライズだったことを明かしたが、ベア・マティアス・ヘグモ監督は「大畑も非常にいい影響をチームに与えてくれている」と彼の攻撃力を高く評価。ここ一番の推進力や的確なゲームメイク能力、ポジショニングは確かに目を引くものがあったと言っていい。
最終予選ではサイドからのクロスというのが1つの大きな攻撃パターンになる。大畑はバングーナガンデ同様にレフティーで、精度の高いボールを入れられる。ただ、高さがあまりないため、守備時のハイボール対策や空中戦では不安要素もある。そうなると、彼の選出は五分五分かもしれない。大岩監督の最終的な決断の行方が気になるところだ。
それ以外にも、荒木遼太郎(FC東京)、植中、小見洋太(アルビレックス新潟)のようにギリギリのライン上の選手が何人かいる。彼らの扱いは最後の最後まで未知数だ。もちろん3日のJリーグの試合も判断材料になるはず。アタッカーであれば、そこでゴールという明確な結果を出せれば、滑り込みの確率をより引き上げられるだろう。
果たして大岩監督の口からは誰の名前が呼ばれるのか。今回、注目した染野、川﨑、大畑はカタールへ赴けるのか。「JFA TV」でライブ配信される予定の4日午後2時の記者会見から目が離せない。
(元川悦子 / Etsuko Motokawa)
元川悦子
もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。