日本代表から「無敵のオーラ」消滅なぜ? 英記者が指摘、W杯アジア予選で求められるもの【コラム】

英国人記者が日本代表に言及【写真:徳原隆元】
英国人記者が日本代表に言及【写真:徳原隆元】

北朝鮮戦は「より大差で勝つべき試合だった」

 森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング18位)は3月21日、北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選で北朝鮮(同114位)を1-0で下した。かつてアジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ(W杯)を7大会連続で現地取材中の英国人記者マイケル・チャーチ氏は「より大差で勝つべき試合だった」と物足りなさを指摘している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

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 風格が失われ、昨年、日本が名だたる対戦相手から複数得点を奪った事実は過去のものとなり始めている。

 しかし、少なくとも結果は正しい方向へと進んでいるようだ。失意のアジアカップの後で、日本は東京で行われた北朝鮮戦で勝利する必要があり、森保一監督の率いるチームは期待通りにそれを成し遂げた。

 とはいえ、この僅差での勝利がすべてを物語るわけではない。日本はクオリティーを欠いた北朝鮮に苦しめられる場面はほとんどなく、試合は最初の15分間で終わる可能性があったし、そうなるべきだった。

 試合を見ていた多くの人は、ぬるい試合がゆっくりと終わり、北朝鮮の希望と信念と同じように試合のエネルギーが国立競技場から徐々に消えていくなかで、試合が終わる前から勝ち点を確保したと考えていただろう。

 だが、この勝利の仕方ではアジア杯での大失敗の前の自信を回復する助けにはほとんどならない。精彩を欠いたパフォーマンスと弱々しい戦いぶりが続いたアジア杯では、最終的に強靭なフィジカルを持つイランに敗れた。

 イランはフィジカルだけでなく、技術も持ち合わせていたが、北朝鮮が同等の脅威を与えてくることはなかった。日本は難なく勝ち点を獲得したが、より大差で勝つべき試合だった。

 日本はキャプテンの遠藤航がベンチスタートだった。これは、リバプールがマンチェスター・ユナイテッドに3-4で敗れた日曜日のFAカップ準々決勝で120分間プレーした影響があったことは間違いない。そのなかで、誰の目にも明らかな存在感を示していたのが田中碧だ。

 フォルトゥナ・デュッセルドルフの男は、森保監督が彼をアジア杯のメンバーから外すという考えの愚かさを強調した。

 田中がピッチの中央で見せたエネルギーは、アジア杯での日本に欠けていたものだった。アジア杯前のタイとのフレンドリーマッチで見せたように、彼がチームに何をもたらせるのかを改めて示した。今となっては明らかに遅すぎるが、森保監督は間違いに気づいただろう。

 堂安律も輝きを放った。フライブルクのアタッカーは活気に満ちあふれ、勤勉だった。北朝鮮の守備に圧力をかけ、ミスを誘発させた。前田大然は左サイドで、南野拓実は中央で同じように相手に脅威を与えていた。

 それでも、日本の優位性にはまだ何かが欠けていた。それは昨年、森保ジャパンが魅力的なスタイルでいくつものゴールを奪い、連勝を続けていた時に醸し出されていたオーラだ。

 あの無敵のオーラを再構築する必要がある。アジアカップの結果は非常に残念だった。日本はドイツを破った時のレベルに戻るために取り組む必要がある。カタール(アジアカップ)ではイラク戦とイラン戦の敗戦が目立っているが、勝利したベトナムとインドネシア戦のパフォーマンスも完全に納得のいくものではなかった。

 森保監督がどのようにして対戦相手の心のなかに残る畏怖の念を取り戻すのかはわからない。このW杯予選で北朝鮮やシリア、ミャンマーに大勝したところで効果は期待できないが、1つのきっかけにはなるだろう。

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マイケル・チャーチ

アジアサッカーを幅広くカバーし、25年以上ジャーナリストとして活動する英国人ジャーナリスト。アジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ6大会連続で取材。日本代表や日本サッカー界の動向も長年追っている。現在はコラムニストとしても執筆。

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