鈴木彩艶は「呼ばないとダメ」 日本代表OBが見た3月シリーズで起用すべきGKは?【見解】

アジアカップに出場した鈴木彩艶【写真:Getty Images】
アジアカップに出場した鈴木彩艶【写真:Getty Images】

【専門家の目|栗原勇蔵】鈴木を呼ぶべき理由は「ハンデは少しずつ払拭するしかない」

 森保一監督率いる日本代表は3月14日、21日(ホーム/国立競技場)と26日(アウェー/金日成競技場)に開催される北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選の北朝鮮との2連戦に向けたメンバー発表を行う。アジアカップではGK鈴木彩艶(シント=トロイデン)が全試合でゴールマウスを託されたが、日本代表OB栗原勇蔵氏に今後のW杯予選で誰を起用していくべきなのかを訊いた。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

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 昨年11月のW杯アジア2次予選でミャンマー、シリア相手にともに5-0で快勝した日本は、年明けにカタールで開催されたアジアカップで無念のベスト8敗退。W杯予選が3月から再開するなかで、いきなり“未知”の北朝鮮との2連戦となる。

 アジアカップでは、GKは鈴木彩艶(21歳)、前川黛也(ヴィッセル神戸/29歳)、野澤大志ブランドン(FC東京/21歳)の3人で臨み、大会開幕時点でキャップ数わずか4の鈴木がレギュラーを任された。

 グループリーグ第2戦のイラク戦(1-2)でクロスを弾き切れずに失点したが、その前には相手のミドルシュートをパンチングで左サイドのタッチラインへと出した安易な選択にも厳しい目が向けられた。また、決勝トーナメント1回戦バーレーン戦では、後半19分に失点する直前、サイドからのクロスに対応したDF冨安冨安健洋(アーセナル)のクリアが甘くなって浮いたところを、鈴木がキャッチではなくパンチングを選択した結果、コーナーキックになって相手にチャンスを与える形となった。

 結局、鈴木は全5試合でスタメン起用されたが、ハイボールの対応、セービング、ボールのつなぎで課題を残し、すべての試合でゴールを割られて計8失点。GKだけの責任ではないとはいえ、世間の厳しい目にさらされる試練を味わった。

 森保監督が3月シリーズで誰を招集し、起用するかは大きな注目が集まるところ。日本代表OB栗原氏は、アジアカップの采配を踏まえて「彩艶は呼ばないとダメ」と提言する。

「彩艶がスタメンに名を連ねても違和感はない反面、アジアカップのプレーを見ると少なからず怖さはある。見ている人たちには『やられた』という意識が残るので一生言われることもあるわけで、GKやDFはそのハンデを少しずつ払拭していくしかない。アジアカップの起用は期待を込めてという部分は絶対にあったはず。ここで呼ばないとなると、彩艶が感じた手応えや自信も揺らいでしまうし、ポテンシャルを秘めているのは一目瞭然なので、周囲の気にせずに成長してほしい」

栗原勇蔵氏が注目するGKは?【写真:徳原隆元 & (C) STVV】
栗原勇蔵氏が注目するGKは?【写真:徳原隆元 & (C) STVV】

栗原氏が挙げるJリーガーの対抗馬は広島GK大迫敬介

 もっとも、鈴木のスタメン起用を脅かすほどの選手がいないのも懸念材料だ。前川は今季リーグ戦で開幕3試合に出場(計2失点)しているが、アジアカップメンバーの野澤は波多野豪(25歳)に定位置を奪われている。栗原氏も「ほかに絶対的な存在がいない」と指摘する。

「Jリーグで対抗馬になり得そうなのは大迫敬介(サンフレッチェ広島/24歳)くらい。個人的には、前川の代わりに小島亨介(アルビレックス新潟/27歳)を選んでほしい。アジアカップの編成で苦戦したのを考えると、ベテランが必要なら、長期間の大会でもないので、西川周作(浦和レッズ/37歳)もありな気がします。あとは、シュミット・ダニエル(ヘント/32歳)か中村航輔(ポルティモネンセ/29歳)。正直、どこか消去法みたいになってしまっている感は否めないですね」

 最後に栗原氏は、「見方によっては、『彩艶をもう使わないでくれ』という厳しいファンも中にはいるかもしれない。ただ、チャンスは与えるべきだと思います」とエールを送る。

「最初のチャンスは生かせなかったけど、それで終わりではなくて、苦い経験を生かすための場もまた与えるべきではないかなと。あの経験を生かさないと、彩艶にとっても、日本のサッカー界にとってもアジアカップはなんだったんだとなってしまう。だから、彩艶には乗り越えてほしい」

 鈴木が3月シリーズ以降でさらに一皮剥ければ、森保ジャパンにとっては頼もしい存在となる。

(FOOTBALL ZONE編集部)



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栗原勇蔵

くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。

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