サーの真の後継者 モウリーニョが貫く勝者の哲学

勝者になるための2つの顔

 昨季17ゴールを奪い、有望な若手が集うブルーズの中で最も輝いたアザールにも「彼にはまだチームのために全てをささげる準備ができていない」と切り捨てる。それは華麗なボールさばきで人気のベルギー代表MFが、時折守備をおろそかにするからである。他クラブであれば、アザールのような選手が、これほど守備を強要されることはない。だが、モウリーニョは違う。それが他との違いも生む。こうしてファンタジスタにも守備を強いるのは何もはじめてのことではない。最も印象的なのは、04-05シーズンのジョー・コールとのものだった。さて、モウリーニョの対照的なコールへのコメントをふたつ並べてみたい。
「ジョー・コールは非常に重要な得点を決めた。彼が出場してからチームに力強さが出た。しかしゴールを決めて、彼の試合は終わった。11人の選手に一丸となってプレーしてもらう必要があったが、ピッチには10人しかいなかった。もしも彼がイングランド代表のレギュラーになろうと思っているなら、守備での貢献も必要だ。それに私に対してインパクトを与えなくてはならない。観客に対してではなく、私に対してだ。ジョーには二つの顔がある。一つは美しく、もうひとつの顔を私は好きになれない」(04年10月4日)。
「私もわずかながら助けたが、彼の進歩の原動力となったのは、彼の野心だ。もしも今、ジョーが成功しているといえるなら、それは彼が常に批評を恐れず、助けを求め、進歩しようとしたからだ。彼はチャンスが与えられない時でも決してあきらめることはしない。今の彼に起こっている成功は、彼に与えられるべき正当な報酬だ」(05年3月28日)。
 コールは当時の英国人選手の中ではずばぬけてボールさばきがうまかった。ウエストハム時代は押しも押されもせぬNO.10で、もちろん絶大な人気があった。しかし、モウリーニョは移籍1年目、ライバルのリバプールを相手に、しかもアウェーで決勝ゴールを奪ったコールを手厳しくとがめた。
 このコメント後、コールは攻撃でタッチ数を減らし、シンプルで効果的なプレーに徹した。その上で、守りでも足を止めず、相手ウインガーの突進を同サイドのフェレイラと一緒に食い止めた。

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