森保ジャパン復活へ呼ぶべき「新人材リスト」 W杯予選へ“救世主になり得る”5人【コラム】

日本代表の救世主になり得る選手たちをピックアップ【写真:Getty Images】
日本代表の救世主になり得る選手たちをピックアップ【写真:Getty Images】

アジアカップで見えた課題を踏まえ、招集を推薦したい新たな人材をピックアップ

 日本代表はアジアカップで5度目の王者を目指しながら、まさかの8強止まりとなった。5試合戦ってイラクとイランに2敗するという散々な結果に。近年の日本代表を見ると、第1次森保ジャパンで挑んだ2022年カタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選ではオマーンとサウジアラビアに敗戦。一時は崖っぷちまで追い込まれている。18年ロシアW杯を目指したバヒド・ハリルホジッチ監督体制の日本も最終予選でUAEに敗戦。中東勢に負けるケースが少なくない。

「相手のラフなロングボールに対して弾くところでは、耐えながら我々の時間帯にしていかないといけなかったが、できなかったところはある。まだまだ力をつけないといけないということだと思います」と森保一監督も神妙な面持ちで語っていたが、24~25年にかけて26年北中米W杯アジア予選が続くことを考えると、中東勢対策を強化していくことはマスト。そこでタフな状況でも戦える新たな人材をピックアップしてみた。

■1:GKシュミット・ダニエル(GK/ヘント)

 アジアカップでは5試合8失点と守備の不安定感が目立った。そこで大きくクローズアップされたのが、5戦連続出場した21歳の若き守護神・鈴木彩艶(シント=トロイデン)の出来だ。

「本当に何もできなかった大会だったと率直に思います」と本人も反省しきりだったが、A代表での国際舞台デビューは想像以上にハードルが高かったのだろう。フィジカルの強さやキック力、ビルドアップ能力などポテンシャルの高さは間違いないが、いきなりすべてを発揮できるわけではない。鈴木を育てていくことも重要だが、彼と切磋琢磨できるクオリティーの高いGKは必要不可欠だ。

 そこで再招集を求めたいのが、32歳のシュミットだ。彼は第2次森保ジャパン発足後、3試合に出場。主軸としての期待が高かった。しかし昨夏の移籍市場でフランス1部メス移籍がギリギリの段階で破談になり、シント=トロイデンに残留。そこにはすでに後釜の鈴木が加入し、定位置を確保していたため、半年間戦力外扱いを受けた。

その影響で代表も選外になっていたが、12月末にヘント移籍が決まり、今季後半戦再開後は4戦フル出場中。代表復帰の環境は整ったと言っていい。

 シュミット自身、ビッグトーナメントで修羅場をくぐった経験はないが、年齢を重ねている分、より落ち着いて構えることができるはず。シュミットと鈴木を競わせる形のほうがどちらも成長できる。そういった環境を早急に作るべきだ。

オランダでブレイクした小川、森保ジャパンに欠けている高さでも有効なピースに

■2:小川航基(FW/NECナイメヘン)

 空中戦に絶対の自信を持つ中東勢に対し、今大会の日本に足りなかったのは競り勝てる点取屋の存在だ。エースFW街道を突き進んだ上田綺世(フェイエノールト)もポストプレーやここ一番の決定力などで目に見える成長を遂げたが、クロスを頭で押し込むような形が得意中の得意というわけではない。となれば、競ってゴールできる、あるいは自身が潰れ役になって周りに点を取らせることができる人材が必要だろう。

 その有力候補と言えるのが小川だ。今夏、横浜FCから初のオランダ移籍を果たし、即座に定位置を掴むと、ここまでリーグ戦7ゴールをマーク。直近2月3日のヘラクレス戦では2得点を挙げるなど調子を上げている。186センチと高さのある点取屋は日本に数少ないターゲットマンタイプ。カタールW杯の時はより万能型の町野修斗(ホルシュタイン・キール)に代表の座を奪われたが、今の小川ならいざという時の高さ対策でも有効なピース。そういう人材を1人は追加したいところだ。

■3:鎌田大地(MF/ラツィオ)

 イラン戦で久保建英(レアル・ソシエダ)を下げたあと、ボールを収められなくなった日本代表を見て「鎌田大地(ラツィオ)がいれば違ったのに……」と感じた人も少なくなかったはず。昨夏、ラツィオに赴いてからは出場機会をコンスタントに得られず苦境が続いているが、日本代表には必要なピースだと森保一監督も再認識したのではないだろうか。

 今大会は久保とともにトップ下を担った南野拓実(ASモナコ)も活躍し、得点感覚の鋭さを示したが、イラン戦の終盤のように一方的に押し込まれる中で時間を作れるのはやはり鎌田だ。そういった感覚は錆びついてはいない。

 本人はチームでの苦しい立場を何とかしたいと考え、もがき苦しんでいるだろうが、インターナショナルマッチデー(IMD)に代表活動に参加することで、逆に新たなヒントを得られるかもしれないし、コンディションも上がると見られる。1月の欧州移籍市場では動けなかったものの、今夏より試合に出られる理想的な環境を掴み取るためにも、3月のW杯アジア2次予選・北朝鮮とのホーム&アウェー戦ではぜひ代表に戻ってきてほしい。

新潟からスパルタ・ロッテルダムに移籍をした三戸舜介【写真:徳原隆元】
新潟からスパルタ・ロッテルダムに移籍をした三戸舜介【写真:徳原隆元】

若さと大胆さ、傑出した得点センスを持ち合わせた19歳・福田は興味深い存在

■4:三戸舜介(MF/スパルタ・ロッテルダム)

 バーレーン戦当日に週刊誌報道が出て、伊東純也(スタッド・ランス)が使えなくなったことで、イラン戦の日本は攻撃の重要な打開策を失う形になった。「伊東がいれば、三笘薫(ブライトン)とともに左右の槍を置き、町田浩樹(ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ)を最終ラインに入れる形の3バックも可能だったはず」といった見方もメディアや解説者の間で数多く出ていて、右の槍になれる新たな人材を見出さなければならない時期に来ている。

 そこでフォーカスしたいのが、パリ五輪世代の新星・三戸だ。アルビレックス新潟でプレーした昨季はJリーグベストヤングプレーヤー賞を受賞し、1月からオランダのスパルタ・ロッテルダムへ移籍。同じパリ世代の斉藤光毅と左右のウイングを形成し、急激に存在感を高めている。

 164センチと小柄な選手ではあるが、彼の突破力とスピードはやはり魅力。体幹がしっかりしているため、屈強な中東系の相手と対峙しても潰されないだけの強さを出せるだろう。2002年9月生まれの21歳という若さも魅力。伸びしろの大きさに賭けてみる手もあるのではないか。

■5:福田師王(FW/ボルシアMG)

 もう1枠は空中戦の守備で跳ね返せるタイプの角田涼太朗か藤井陽也(ともにコルトレイク)の選出も考えたが、イラン戦で森保監督がピッチに送り出さなかった町田や渡辺剛(ヘント)も優れた人材。センターバックに関しては彼らを冨安健洋(アーセナル)と板倉滉(ボルシアMG)の鉄板コンビとローテーションしながら回していけば、もっと戦力は厚くなる。

 そこで守備系プレーヤーを見送り、前線に目を向けたが、三戸同様、ポテンシャルを考えて福田を推薦したい。

 19歳の福田はまだパリ五輪代表でも主軸になったわけではないが、1月からトップ昇格を果たし、レバークーゼン戦とバイエルン・ミュンヘン戦に連続出場。まだプレー時間は短いが、ドイツ1部ブンデスリーガの強度に適応しつつあるのは大きい。同じチームに板倉がいるため、A代表に来てもすぐに溶け込めるだろうし、新たなエッセンスをもたらしてくれるはずだ。

 アジアカップで上田以外のFWが結果を出せなかったこともあり、FWの陣容は見直しが求められるところ。そういう意味でも若さと大胆さ、傑出した得点センスを持ち合わせた彼は興味深いピースになり得る。森保監督にも真剣に考えてほしいものである。

(元川悦子 / Etsuko Motokawa)



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元川悦子

もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。

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