「あんな不安定な姿は見たことがない」 板倉がイラン戦で精彩を欠いた理由を日本代表OBが分析【見解】
【専門家の目|栗原勇蔵】中2日のイラン戦は「コンディションが良くなかった」
森保一監督率いる日本代表は、2月3日にカタールで行われたアジアカップの準々決勝でイランに1-2で敗れ、無念のベスト8敗退となった。DF冨安健洋と並ぶ最終ラインの要であるDF板倉滉がPK献上を含む2失点に絡む形となり、元日本代表DF栗原勇蔵氏は「あんな不安定な板倉は見たことがない」と指摘した。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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1月31日の決勝トーナメント1回戦バーレーン戦(3-1)から中2日で行われたイラン戦。日本はスタメン3人を変更して挑んだなか、DF冨安健洋とセンターバックのコンビを組んだ板倉は、前半24分に突破を狙ったイランMFモハマド・モヘビを倒してイエローカードを受けてしまう。
その後、日本は前半28分にMF守田英正のゴールで先制し、リードして後半を迎えた。しかし、後半10分に失点を喫したシーンでは、バックパスを受けたGK鈴木彩艶のフィードをイランに奪われると、FWサルダル・アズムンに縦パスが入った瞬間に板倉がモヘビに背後を取られ、同点弾を許してしまった。
白熱の攻防が続き、日本の守備陣もイランの猛攻に耐えていたが、後半アディショナルタイム3分、相手がペナルティーエリア内で頭で落としたボールを板倉と冨安が譲り合うような形になり、イランDFホセイン・カナーニにかっさわれたところを板倉が足をかけてしまいPK献上。これを経験豊富なFWアリレザ・ジャハンバフシュに決められ、日本は1-2で敗れた。
日本代表OB栗原氏は、「だいぶバタバタしていましたね。あんなに不安定な板倉は正直見たことがないというくらい、良くなかった」と板倉の出来に関して率直な感想を述べる。
「イラン戦のプレーを見て、コンディションが良くないように感じました。(前半24分に)イエローカードをもらったプレー自体はカバーに行った結果だったから仕方ないですけど、それで後手後手に回ったというわけでもないし、もしそういうプレーになってしまっていたら、イエローカードをもらった時点で(森保監督は板倉を)代えないといけない」
ハイラインを試みたことが逆効果に
後半18分にはロングボールに抜け出したアズムンにペナルティーエリア内に侵入されると、フェイントで板倉が振り切られ、ゴール左隅にシュートを決められる場面もあった。オフサイド判定で結果的にゴールは認められなかったが、栗原氏は「あれは(スライディングに)滑ろうが、何をしようがもう負け。あの間合いになって遅れているので。滑らなかった滑らなかったでシュートを打たれるだけ。自分の中での感覚がフィットしていない感じは見受けられました」
板倉も自身のパフォーマンスについて「(決勝トーナメント1回戦から)中2日は相手も同じ条件。そのなかで、ああいうパフォーマンスをしている時点で、代表選手としてピッチに立つ資格はないと自分自身、今日強く感じた」と強い責任感を覗かせた。栗原氏も「板倉は豊富な選手ですけど、アズムンの圧力に押されたし、スピード不足が出てしまった」と課題を指摘する。
「冨安は世界レベルでスーパーに速いですけど、板倉は平均的。現代サッカーにおいて、最終ラインの選手が平均的なスピードではやられるし、ハイラインを保てない。イラン戦ではラインを上げたことが逆効果になってしまった。下げたら下げたでアズムンの高さが生きてしまうから上げたと思いますけど、跳ね返してもセカンドボールを拾えないし、1点を取ったあと以外はイランのほうが出足が良かったですね」
アジアカップの戦いが終わった今、板倉にはこの悔しさを糧にさらなる飛躍が期待される。
栗原勇蔵
くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。