鈴木彩艶は「パンチングに頼り過ぎている」 日本代表OBが指摘する課題と“対処法”【見解】
【専門家の目|栗原勇蔵】失点前の安易なパンチングが問題
森保一監督率いる日本代表は、1月31日に行われたアジアカップの決勝トーナメント1回戦でバーレーンを3-1で下し、9大会連続でのベスト8進出を決めた。GK鈴木彩艶は4試合連続のスタメンで起用されたなかで失点を喫し、元日本代表DF栗原勇蔵氏はパンチングへの不安に改めて言及している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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日本は1月24日に行われたグループリーグ第3戦インドネシア戦(3-1)からスタメン1人を変更。1トップにはFW上田綺世が入り、2列目にはMF堂安律、MF久保建英、MF旗手怜央、MF中村敬斗が並んだ。アンカーにはMF遠藤航が起用され、最終ラインはDF冨安健洋、DF板倉滉、DF毎熊晟矢、DF中山雄太、GKは鈴木彩艶という顔ぶれになった。
試合は前半31分、日本が毎熊のミドルがポストに当たった跳ね返りを堂安が押し込んで先制。前半36分に旗手が負傷交代するアクシデントはあったが、後半4分には久保が追加点を奪った。後半19分、鈴木のオウンゴールで1点を返されたが、同27分に上田の個人技から3点目を奪い、3-1で勝利した。
日本は9大会連続のベスト8に駒を進めた一方で、グループリーグのベトナム戦(4-2)、イラク戦(1-2)、インドネシア戦(3-1)に続き、4試合連続の失点。データ分析会社「オプタ」は、今大会でベスト8に進んだチームの中で、全試合で失点を喫しているのは日本と韓国だけだとし、「課題」と指摘した。
後半19分に失点する1分前、日本はサイドからのクロスに対応したDF冨安の左足クリアが甘くなって浮いたところを、鈴木がキャッチではなくパンチングを選択。このボールが再びバーレーンに渡り、最終的にコーナーキックへ。左コーナーキックからのDFサイード・バケルのヘディングシュートは鈴木が右手で弾いたが、こぼれ球で鈴木と上田が交錯して鈴木のオウンゴ-ルとなった。
日本代表OB栗原氏は、「彩艶のパンチングミスからの流れであの失点。(鈴木と交錯した)上田はどう考えても責められない。上田はボールを避けるのは難しいし、彩艶も自分のミスから始まっているので自分で取りに行く気持ちは分かる。ああなってしまうと上田はもう無力だし、上田に任せておけば失点はしなかった気がします」と指摘した。
経験よりも技術的なミスと栗原氏は指摘
中山がバケルに競り負けたことでヘディングシュートを放たれたことも一因だが、栗原氏は鈴木のパンチングの課題に言及している。
「正面に来たボールを弾いた場所も悪いし、キャッチングに不安があるのかもしれないですけど、パンチングに頼りすぎている印象があります。力み過ぎて当たり損なっているところもあるのかも。どこにボールが飛んできたらあのへんに弾こうとか予測、前準備ができていない感じがします。失点になった場面も、基本的にそんなに厳しいボールじゃない。ボールを弾くのは上でも横でもいいですけど、あんなゴール前に弾くことはなかなかない。予測していなくて、面を食らって弾いてしまう影響かなと。余裕がないのかもしれないですね」
もっとも、グループリーグから失点が続き、鈴木に対する厳しい声があるのは事実だが、栗原氏は「ファン・サポーターを含めて外から見ている人たちはもう応援するしかない」とエールを送る。
「批判・指摘は大事かもしれないけど、それが追い詰める形になっているかもしれない。同じミスはもちろんいただけない。でも、ミスをするまでは安定していたように見えました。ミスしていてもチームは勝てているということで、次につなげなくてはいけないと思うし、日本の未来を背負う存在になってほしい。批判するのは簡単。これ以上、上塗りして批判しても仕方ないので、鈴木は足りないと思うことは練習して補っていくしかない。経験よりも今は技術的なミスな気もするので、そこは練習すればどうにかアジャストできると思います」
日本が2010年以来のアジアカップ優勝を果たすには。守護神・鈴木の奮起は不可欠だ。
栗原勇蔵
くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。