森保一は“勝負師” 大一番采配に代表OBが驚き「よほど肝が据わっていないとできない」【見解】

金田喜稔氏がインドネシア戦のスタメンに驚き【写真:ロイター】
金田喜稔氏がインドネシア戦のスタメンに驚き【写真:ロイター】

【専門家の目|金田喜稔】総力戦で戦う日本「森保監督が選手全員の力を信じている証拠」

 森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング17位)は、1月24日にカタールで行われたアジアカップ・グループリーグ第3戦でインドネシア代表(同146位)と対戦し、3-1と勝利した。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏は、「“凄い”と素直に感じた」と指揮官の起用法を称えている。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

   ◇   ◇   ◇   

 グループリーグ初戦で苦戦しながらもベトナム代表に4-2と勝利した日本は、続く第2戦でイラク代表に1-2と敗戦。第3戦のインドネシア戦は引き分け以上でグループ2位突破が決まるものの、敗れると他グループの結果次第で敗退の可能性もある一戦だった。

「ドイツやトルコなども撃破して10連勝していた日本は、大げさに言えば『もはや敵なし』ぐらいの勢いが感じられた。それがベトナム戦で苦戦し、イラク戦ではよもやの敗北。選手が一生懸命やっているのは試合を見れば分かる。それでも思うようにいかないのが、サッカーの奥深さなのだろう」

 そうしたなかで迎えたインドネシア戦。金田氏は先発メンバーに驚いたという。

「万が一負けたら大会敗退の可能性もあったインドネシア戦で、普通ならいわゆる鉄板のメンバーを起用したくなるものだ。それでも森保監督は、これまで起用していないメンバーも組み込んで送り出した」

 グループリーグ3試合を通じて、森保ジャパンはメンバーを入れ替えながら戦ってきた。決勝まで見据えると最大7試合を戦うなか、文字どおりの総力戦で挑んだ。金田氏はその起用法に指揮官の信念を見たと語る。

「グループリーグの3試合で先発出場を続けているのは、鈴木彩艶と遠藤航の2人のみ。あとはメンバーを入れ替えて戦っている。これだけ多くの選手をグループリーグで起用したのは日本ぐらいだろう。それは裏を返せば、森保監督が選手全員の力を信じている証拠だし、そこには信念があったのだろう」

試合後、選手たちに声をかける森保一監督【写真:ロイター】
試合後、選手たちに声をかける森保一監督【写真:ロイター】

予想を超えた起用法「『解任』というワードも一部メディアで見られたが…」

 インドネシア戦の起用は金田氏の予想を超えるものであり、そこに“勝負師・森保一”の凄みを感じたと明かす。

「第2戦でイラクに敗れたあと、『解任』というワードも一部メディアで見られたが、そのなかで今回の采配はよほど肝が据わっていないとできない。カタール・ワールドカップでの大胆采配の時もそうだったが、今回も“凄い”と素直に感じた」

 森保監督の起用は的中し、先発メンバーが結果を残す形でインドネシア戦は3-1と勝利。チームとしても収穫は大きかったと金田氏は指摘する。

「インドネシア戦ではメンバーを入れ替えながらも、10連勝をしていた時の日本の原点に立ち返った。前線からのプレスと連動性、コンパクトネスとラインコントロール。日本の生命線が戻ったゲームだったし、改めてチーム全員で“同じ絵”や“同じ景色”を確認できたという意味でも、単なる1勝以上の価値があったと思う」

 グループ2位通過を決めた日本は、1月31日の16強でグループE・1位(※ヨルダン、韓国、バーレーンのいずれか。25日の第3節次第で決定)と対戦する。

page1 page2 page3

金田喜稔

かねだ・のぶとし/1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング