「一生に一度」小野伸二・引退セレモニーの裏側 札幌ドーム4年ぶり3万人動員は「人徳と功績」【インタビュー】

 引退セレモニーでスピーチする小野伸二【写真:(C)mm】
引退セレモニーでスピーチする小野伸二【写真:(C)mm】

社内で立ち上がった小野伸二プロジェクト「一生に一度の引退セレモニーを成功させる」

 2023年12月3日のJ1最終節・北海道コンサドーレ札幌対浦和レッズ戦、小野伸二現役ラストマッチに3万人を超えるファン・サポーターが詰めかけ、引退セレモニーを目に焼き付けた。そんなレジェンドの引退セレモニーを担当した葛西駿平さんが舞台裏について語った。

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 運営を担当して9年目になります。伸二さんとの出会いは、僕が2015年入社で、伸二さんが2年目の年でした。小学生の時に2002年の日韓ワールドカップをテレビで見て憧れていました。そのテレビで見ていた伸二さんを目の前にした時、めちゃくちゃ緊張したのを今でも覚えています。

 伸二さんがインスタグラムで引退を発表された頃に、一生に一度の引退セレモニーを成功させるプロジェクトが社内で立ち上がりました。「海外でプレーしている小野伸二」というのが僕の中にはあって、UEFAカップ優勝などの偉大な功績がある選手が、自分の仕事をしている札幌で引退するというのは、一生に一度のことですし、関わろうとしてもなかなか巡り合うものではないと思いました。久しぶりの3万人を超える興行ということもありましたが、第一は小野選手を最高の引退セレモニーで送り出せるように、ただその一心でやっていました。

 引退セレモニーは、海外で活躍してサガン鳥栖で引退した元スペイン代表FWのフェルナンド・トーレス選手やヴィッセル神戸で退団した元スペイン代表MFのアンドレス・イニエスタ・ルハン選手、あと伸二さんが所属していたウェスタン・シドニー・ワンダラーズFC(オーストラリア)から離れる時の様子などを参考にして、スタジアム全体で温かく送り出したいという思いがありました。

 サプライズメッセージとしては、フェイエノールト時代に共闘した元オランダ代表FWのロビン・ファン・ペルシ、稲本潤一選手(南葛SC選手兼コーチ)、そしてMr.Childrenの桜井和寿さんにお願いしました。

 サッカーをやっていた人たちはきっと、ファン・ペルシーがメッセージを送ったのを見て「伸二さんってやっぱり凄いんだ」ということが改めて分かると思いますし、コンサドーレを見てきた人からすれば伸二さんと稲本選手の強い絆をメッセージで感じることができると思います。各界の著名人としてアーティストとも繋がっている伸二さんということで、伸二さんをあまり知らない人でもこんなに繋がりの深い人なんだと感じてもらえる。そうやって、さまざまな人の心に届いてほしいという思いがありました。

日本地図、世界地図、優勝カップを背景に日本代表と赤黒のユニフォームを身にまとい、世界を渡り歩いた小野伸二の姿が壮大に描かれた旗【写真:(C)mm】
日本地図、世界地図、優勝カップを背景に日本代表と赤黒のユニフォームを身にまとい、世界を渡り歩いた小野伸二の姿が壮大に描かれた旗【写真:(C)mm】

札幌ドームの3万人超えは約4年ぶり「伸二さんの人徳であり、過去積み重ねてきた功績の結果」

 札幌ドームで観客が3万人を超えたのは、2019年8月10日のJ1リーグ第22節浦和レッズ戦以来、約4年ぶりになりました。「小野伸二ラストマッチ」というのが3万人を動員した要因ですが、3万人超えで送り出せる環境が整ったのは伸二さんの人徳であり、過去積み重ねてきた功績の結果だと思いますし、改めて偉大な選手が札幌で現役を引退したんだと感じました。

 僕の中では、世界を渡り歩いた小野伸二が、コンサドーレで引退するというのを演出や会場の雰囲気として入れたいという思いが強かったです。ゴール裏でサポーターのみなさんが準備してくれたフラッグを見て、その思いはみんな一緒だったんだと思いました。そして浦和レッズから伸二さんを送り出す横断幕が出るというのは、やっぱり偉大な伸二さんならではだなと思いました。

「天才 小野伸二、引退。」と題されたゲートが来場者を迎えた【写真:(C)mm】
「天才 小野伸二、引退。」と題されたゲートが来場者を迎えた【写真:(C)mm】

引退セレモニーの翌日、小野本人からかけられた言葉

 試合後にそのままお客さんに残ってもらえたのも本当に良かったです。3万人が入った札幌ドームというのは声も響きますし、雰囲気もあるのでそれだけでも十分ですし、凝ったことをしようとは思っていなかったんです。あの雰囲気の中での引退セレモニーは伸二さんだから成立した部分がありました。最終戦は伸二さん一色。これは、伸二さんくらいのレベルにならないとできないものです。これまでも選手の引退セレモニーはやってきましたが、日本のレジェンドですから規模感の差はやっぱりありますし、見ている人も「伸二さんだから納得」というのがあったと思います。

 最終戦の翌日に伸二さんとお話できる機会があって、「伸二さんの引退セレモニーに関わることができて本当に良かったです」とご挨拶をした時に、「本当にいろいろな人に協力してもらってありがとうね」と声をかけてもらえました。小野伸二選手の引退セレモニーに関わることができる人は限られている。札幌にいなかったら関われなかったと思いますし、その一員になれたことは一生の思い出になると思います。

 引退セレモニー自体もそうですが、運営として3万人のお客さんを迎える準備があり、最終戦に向けて夜遅くまで作業することも度々ありましたが、「伸二さんのため」と自分の中で言い聞かせていました(笑)。だから本当に良かったと思っています。

(mm)



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