激動オフの川崎、主力退団でどうなる? 3分の1入れ替えで浮上した注視すべきポイント【コラム】

主力の多くが入れ替わった川崎【写真:徳原隆元】
主力の多くが入れ替わった川崎【写真:徳原隆元】

鬼木体制8年目のシーズンを前に、主力クラスが続々とチームを退団

 昨年の川崎フロンターレは天皇杯優勝による一冠を達成。シーズンをまたいだACL(AFCチャンピオンズリーグ)ではグループステージを無敗で首位通過するなど、シーズン終盤に存在感を示したと言える。

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 一方でリーグ戦に目を向けると、最終順位は8位。覇権奪還を掲げながらも、優勝戦線に浮上することのないまま中位で終えてしまった。この事実は、リーグ連覇を2度経験している川崎というクラブにとって、小さくない出来事だったと言えるはずだ。

 それだけに、今季は危機感を強く持って臨むシーズンになる。昨年同様、中心選手としての活躍が期待されるMF脇坂泰斗は、始動して間もない日の練習後、力を込めてこう言った。

「昨年の終盤、10月から負けていないと言っても、質の高いサッカーができたかというとそうでもなかった。1年間を通してフロンターレが強くあり続けるための準備というのは、この1か月が非常に大事なんじゃないかなと思います」

 今年の陣容に目を向けると、例年に比べて、選手の入れ替えを積極的に行なった印象は強い。

 ガンバ大阪からMF山本悠樹、ヴァンフォーレ甲府からDF三浦颯太、名古屋グランパスからDF丸山祐市の日本人3選手は即戦力としての期待が懸かる。ルーキーには、桐蔭横浜大から加入したMF山内日向汰、U-18から昇格のMF由井航太、静岡学園高から加入したFW神田奏真と精鋭が揃った。

 外国籍選手ではFWエリソン(←サンパウロ)、MFパトリッキ・ヴェロン(←バイーア)、MFゼ・ヒカルド(←トンベンセ)のブラジル人3選手が同時に加わっている。目を引く存在は、サンパウロから獲得したエリソンだろうか。

 パワフルなプレースタイルやその風貌も含めて、かつて川崎にも在籍していた元ブラジル代表FWフッキを思い出させる存在感がある。昨年はリーグ2桁スコアラーが不在だっただけに、そこを担う仕事をエリソンに期待したいところだ。

 所属選手の約3分の1近い入れ替えがあった背景には、主力数人が移籍を決断したことも関係している。

 ストライカーではFWレアンドロ・ダミアンとFW宮代大聖(→ヴィッセル神戸)、守備陣ではMF山村和也(→横浜 F・マリノス)とMFジョアン・シミッチ(→サントス)。不動の右サイドバック(SB)であったDF山根視来(→LAギャラクシー)と、ピッチ内外で高い貢献をしてきた左SBのDF登里享平(→セレッソ大阪)もチームを離れる決断を下した。

 特に両SBの同時移籍は、チームスタイルに小さくない影響を及ぼす可能性が高い。チームの骨格を考えていくなかで、向き合うべきテーマであり、シーズンが始まってからも注視すべきポイントとなりそうだ。

「期待があります」鬼木監督が期待と自信を覗かせる理由

 とはいえ、いなくなった選手の存在を嘆くのではなく、今いる選手の成長に期待していくのが鬼木達監督のスタンスでもある。全体練習初日の練習後、選手の入れ替えを踏まえたチーム作りの展望を、指揮官はこう述べた。

「次、誰か新しい人が出てくるだろうという期待が、自分の中ではあります。いろんなところで自分から変化を起こせなくても、逆に自然と起きる時もありますし、そういうものをすごくポジティブに捉えながらずっとやってきてるところもあります」

 いなくなった者たちの穴を埋めるという発想ではなく、新しく来た選手の良さと変化をチームに還元して強くしていく。鬼木監督がそこに期待と自信を覗かせるのは、毎年のように代表クラスが海外に旅立っていったなかでも、タイトルを獲得するチーム作りに手腕を発揮してきたからでもある。

 変化という部分では、コーチングスタッフが大幅に入れ替わったことも見逃せないポイントだろう。ヘッドコーチにS級ライセンスの同期である村田達哉氏、フィジカルコーチに石井孝典氏、GKコーチに石野智顕氏、U-12コーチから入閣した狩野健太氏と、過去7年と比べると、鬼木体制の内訳も大きく変わった。そこには現状打破に対する思いもあるのだろう。指揮官は言う。

「スタッフが入れ替わると、選手もそうだし、自分自身も刺激になります。いくつかタイトルを獲ってきましたが、今までのやり方が正しいなんて自分も思ってないですし、フロンターレでは普通だと思っていたことが、実は普通ではないこともよくある。選手もスタッフも、それぞれが持っている個性を出してくれればと思ってます」

 7シーズンで7つの国内タイトルを獲得した鬼木体制は、今季で8年目を迎えた。

Jリーグの歴史においても屈指の長期政権となりつつあるが、だからこそマンネリを嫌って、指揮官は貪欲に変化を求めていくことに力強く舵を切っていく。そんな意思を感じるシーズンとも言えそうである。

 2月13日には、リーグ開幕より前に、ACLラウンド16の第1戦となる中国での戦いが待っている。時間も正解もないなかで、そこに向けた最善の準備を全力で進めていくことになる。

(いしかわごう / Go Ishikawa)



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いしかわごう

いしかわ・ごう/北海道出身。大学卒業後、スカパー!の番組スタッフを経て、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の担当記者として活動。現在はフリーランスとして川崎フロンターレを取材し、専門誌を中心に寄稿。著書に『将棋でサッカーが面白くなる本』(朝日新聞出版)、『川崎フロンターレあるある』(TOブックス)など。将棋はアマ三段(日本将棋連盟三段免状所有)。

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