J全カテゴリー&ACL制覇の森脇良太、プロで「最も衝撃を受けた」5選手 「すべての面で規格外」と脱帽したのは?【インタビュー】

愛媛でプレーする元日本代表の森脇良太【写真:(C) EHIMEFC】
愛媛でプレーする元日本代表の森脇良太【写真:(C) EHIMEFC】

森脇が最も衝撃を受けたのはブラジル代表FWフッキ

 愛媛FCは2023年シーズン、J3リーグ優勝を果たして来季のJ2昇格を決めた。チームの精神的支柱としてピッチ内外で活躍を見せたのが、元日本代表DF森脇良太だった。今回の優勝で史上3人目となるJ1、J2、J3優勝を達成。2011年のアジアカップを制した日本代表にもメンバー入りしており、これまで数々のタイトルを獲得してきた。

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 さまざまなカテゴリーでプレーしてきた森脇が、これまでピッチ内で対戦した相手で脅威に感じたのは、どんな選手だったのか。2005年からスタートしたプロキャリアの中で、特に印象に残っている5選手をピックアップしてもらった。(取材・文=河合拓)

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 Jリーグの全カテゴリーを制した森脇だが、プロに入ってから最も大きな衝撃を受けた選手として、真っ先に名前を出したのは同じ1986年生まれであり、Jリーガーからブラジル代表のワールドカップ(W杯)戦士にまで飛躍を遂げたFWフッキだった。

「浦和(レッズ)時代にACL(AFCチャンピオンズリーグ)でも対戦しましたが、フッキ選手は規格外でしたね。初めて見たのは僕が広島ユースの時で、トップチームに練習参加させてもらった時でした。開幕前のキャンプでサンフレッチェが川崎フロンターレと練習試合をしたんです。その時に『とんでもない身体つきの選手がいるなぁ』と思って、メンバー表を見たら、僕と同い年だったんですよ。当時、17歳くらいだったと思うのですが、『同級生にこんなにすごいブラジル人選手がいるのか』とビックリしたのは今でも鮮明に覚えています。『凄い選手になるんだろうな』と思ったら、想像以上に凄い選手になっていきましたよね。そのなかで何度か対戦させてもらいましたが、パワー、シュート、スピード、すべての面で規格外でした」

興梠慎三はプレーだけでなく、フィジカルでも天性のものを持つ

 続いて名前が挙がったのが、浦和ではチームメイトでもあった元日本代表FW興梠慎三だった。鹿島アントラーズでプロのキャリアをスタートさせ、2013年に浦和へ移籍。Jリーグ通算509試合に出場して167得点を挙げているストライカーだが、彼もまた森脇はプロ入り前に衝撃を受けたという。

「日本人で言えば(興梠)慎三。同じチームでもプレーさせてもらいましたが、対戦したこともあるうえで入れさせてもらいたいですね。慎三も同級生なんです。慎三も『日本人にこんなFWがいるのか!』っていうくらい凄かったです。身体はそこまでゴツくはないんですが、スピードもあって、バネもある。何よりも凄いと感じたのが、彼くらいの体型(身長175センチ・72キロ)で、本当にポストプレーが上手だなと。ボールを収める能力がズバ抜けているなと思いました。彼との出会いも、高校時代で彼が所属していた鵬翔高校と対戦したのですが、その時から衝撃を受けた1人でした。プロに行って活躍するのも、納得どころか、当時から『凄いところまでいくな』と感じていましたし、プロ1年目から鹿島で試合に出ていましたが、僕にとっては何も驚きではなかったですね」

 興梠は37歳となった今も、J1の舞台で活躍を続けているが、試合後などのケアはほとんどしないことで有名だ。その事実を森脇に確認すると、「本当に驚きですよ。試合後も治療とか、ほとんど受けないんです。シャワーをパパっと浴びて、すぐに帰る。だけど、あの能力を発揮できるんですから。僕も『治療しないの?』『ケアしないの?』と聞いたことがあるんですけど、『そんなのいらないよ!』と言って、逆に『お前はケアを受けすぎてるからダメなんだよ』と言い返されましたね(笑)。まさに天才という言葉が似合う選手です」と、プレーだけでなく、フィジカル面でも天性のものがあると語った。

森脇がポストプレーに脱帽した大迫勇也【写真:徳原隆元】
森脇がポストプレーに脱帽した大迫勇也【写真:徳原隆元】

大迫勇也のポストプレーには脱帽「身体を入れられない」

 ここまでの名前はパッと出た森脇だが、「3位以降は、順位が付けづらい」と少し悩んだうえで、「また、FWになってしまいますが、大迫勇也選手ですね。あとは中盤で言えば、MF中村憲剛選手ですかね」と、日本代表としても活躍し、Jリーグの年間MVPにも輝いた2人の名手の名前を挙げた。

「大迫選手も本当にポストプレーも凄いし、シュートも上手い。万能タイプのFWという感じですよね。高校から鹿島に入って、対戦したこともありますが、『本当に高校を卒業したばかりの選手かな』って思わされるくらい、完成していた選手でしたね。ポストプレーで身体を張られると、なかなか前に行けないんです。僕は自分の中でインターセプトが結構得意だと思っているのですが、大迫選手にポストプレーをされると、インターセプトを狙えないんです。身体を入れることができないので。大迫選手に腕を使ってポストプレーをされた時は、本当に『大迫、ハンパねぇ』って、対戦しながら試合中に僕はつぶやいちゃいましたね。本当にハンパねぇ選手です(笑)」

 そして、唯一、FWではない選手として名前が上がったMF中村憲剛氏については、「僕はDFなのでパスを止めないといけないのですが、憲剛さんがボールを持った時というのは、本当に神経を研ぎ澄まさないと、どこにボールが出てくるか分からない。憲剛さんが見ていなかったはずの場所、『そこ、見ていなかったでしょ!』という場所に、ボールが出てくるんです。本当に『どこに目がついているのかな?』と思わされるスーパープレーヤーでした」と、視野の広さが別格だったと語った。

 また、FWジュニーニョやFW小林悠といった川崎にいたスピード豊かなFW陣との連係も脅威になっていたと振り返る。「憲剛さんがボールを持ったら、とにかく裏をケアするっていう意識でやっていました。走られてしまうと、絶対にボールが出てゴールになってしまいますから。当時の川崎にも動き出しのいい選手が多くいて、そういう選手たちもすごかったので、憲剛さんのパス1本で急所を突かれる感じでした。僕が言うまでもなく、多くのサッカーファンが憲剛さんの素晴らしさは認識していると思いますが、本当に素晴らしい選手で、すごい方ですね」。

本田圭佑(左)と長友佑都の意識の高さには驚かされたという【写真:Getty Images】
本田圭佑(左)と長友佑都の意識の高さには驚かされたという【写真:Getty Images】

長友佑都や本田圭佑は「意識の高さ」が別格

 中村氏について語った森脇は、「あとは日本代表で一緒にやった同年代の本田圭佑選手、長友佑都選手も、凄かったですね。彼らの何が凄かったかというと、プレーヤーとしての凄さはもちろんですが、意識の高さ。本当に『上手になりたい』『世界のトップになりたい』というのが、一緒にいてヒシヒシと伝わってきました。世界のトップに行くのは、こういうメンタリティーを持った選手たちなんだなと、サッカーを離れたところでの意識の高さを感じましたね」と、イタリアの名門ACミランで10番を付けた元日本代表MF本田圭佑、現在はJリーグのFC東京に所属する元インテルのDF長友佑都の名前を挙げた。

 そして、「長友佑都選手なんかは、ホテルに帰って部屋にお邪魔させてもらった時も、ストレッチマットを引いて、そこでトレーニングをずっとしている感じでした。その意識の高さはビックリしました」と、代表活動中の様子を明かした。「影響を受けやすいタイプ」という森脇も真似をして部屋の中でトレーニングをしたというが、「3日で終わっちゃいましたね、僕の場合は。こういうのが三日坊主だなと自分で思いました」と、継続できなかったと苦笑した。

 キャリアを重ねた森脇の中には、こうした選手たちと対峙した経験であったり、トッププレーヤーのピッチ内外での取り組みが、しっかりとインプットされている。そうした経験を、クラブにいる若い選手たちに伝えていくことも森脇の重要な役割だ。

 だからこそ、才能ある若手の愛媛への加入を森脇は呼びかける。

「僕自身も愛媛FCが経験を伝えることを期待して、迎え入れてくれたと思っています。この記事をご覧になっている若い選手、出場機会を得られていない選手で、もし見てくれていたら、ぜひ愛媛FCに来てください。愛媛FCに来たら、絶対に選手として1つも2つも階段を登れます。それが愛媛FCというクラブだと思っているので、多くの方に愛媛FCに来てチャレンジをしてもらいたいと思います。僕自身もいろいろな経験をさせてもらってきましたし、そういう経験を伝えていきたいので、ぜひなんでも聞いてもらえたらと思います!」

[プロフィール]
森脇良太(もりわき・りょうた)/1986年4月6日生まれ、広島県出身。広島ユース―広島―愛媛―広島―浦和―京都―愛媛。J1通算302試合・19得点、J2通算123試合・9得点、J3通算34試合・0得点、日本代表通算3試合0得点。豊富な運動量と卓越したビルドアップ能力で数々の試合に出場してきた大ベテラン。ムードメーカーとしてもチームに不可欠で、史上3人目となるJ1、J2、J3の全カテゴリーでタイトルを獲得した。人気を誇った“調子乗り世代”の1人でもある。

(河合 拓 / Taku Kawai)



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