森保ジャパンは世界で最も注目すべきチームの1つ 同時多発的な攻撃が生む凄まじい破壊力…「決定力不足」は遠い昔【コラム】

攻撃陣が好調な森保ジャパン【写真:徳原隆元】
攻撃陣が好調な森保ジャパン【写真:徳原隆元】

攻め込みの選択肢が増加、際立つのはチャンスを決め切る個の能力

 日本代表といえば「決定力不足」という評価も遠い昔のようだ。カタール・ワールドカップ(W杯)後からカナダ戦までの7試合で24得点、ここ5試合はすべて4得点以上の22得点と凄まじい破壊力である。

 ただ、そのすべての試合で内容が素晴らしかったわけではない。トルコ、カナダとの2試合に関しては守備時のプレスがはまらずに攻め込まれる場面はかなりあった。攻め込まれるのでカウンターアタックがやりやすかったという側面もあったと思われる。

 とはいえ、それだけでこれほど点が取れるわけではない。森保一監督はコーチングスタッフの仕事ぶりを高く評価していたが、攻め込みの選択肢が多くなっている。

 カタールW杯までは三笘薫、伊東純也の突破力が頼みの綱だった。この2人の個人技は相変わらず強力なのだが、それだけではなくなっている。相手ディフェンスラインの裏を狙う動きと、ラインの手前へ下りる動きを組み合わせている。基本的な組み合わせ方とはいえ、裏と手前を同時多発的に狙われると守備の対処が難しくなるわけだ。

 下りるポジションは守備時に4-4-2の「2」に入っている選手。鎌田大地、久保建英、堂安律、南野拓実が起用されてきたが、右側のハーフスペースへ下りる機能性は共通している。左側にボランチの1人が上がるのも同じ。攻め込んだ時は4-3-3に近い形となり、いわゆる5レーンをすべて埋めている。

 起用する選手によって効果は異なるのが現状だが、誰が出ても高いレベルを維持しようというのが現在の試みのようだ。チームとしての機能性は一定にしつつ、より多くの選手を起用して層を厚くするのは、長いスパンで強化していく代表のチーム作りとして理に適っている。

 しかし、なんといっても個々の決定力が破壊力の要因だろう。平均4ゴール以上の5試合に関しても、それほどチャンスを量産できていたわけではないのに気味が悪いほど効率良く得点が入っている。チャンスを決め切る個の能力が大きい。

 カタールW杯以降の7戦で最も点を取っているのは中村敬斗(4ゴール)だが、出場時間は152分にすぎない。およそ40分間に1ゴールである。三笘や伊東のようなドリブル突破はないかわりに、チャンスを冷静に決め切るシュートの上手さが光る。まだそこまでチームの中での機能性は確立されていないのに、シュートはやたら決める。その効率の良さは現在の得点ラッシュを象徴する存在かもしれない。

 浅野拓磨も結果を出している。ポストプレーなどに粗も見られるので、「結果しか出していない」という感じなのだが、ストライカーは結果が一番大事とよく言われるとおりかもしれない。

 世界中で決定力満足というチームはあまりなく、決定力不足はむしろ普通だ。そんななか、ゴールを大量生産している日本代表は今、世界で最も注目すべきチームの1つとなっている。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)



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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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