日本代表の“海外組酷使”問題…解決策は? 新たなフェーズ突入でOB提言「両者納得のうえで機会を減らすのもいい」【見解】

“海外組酷使の”問題に金田喜稔氏が提言【写真:徳原隆元】
“海外組酷使の”問題に金田喜稔氏が提言【写真:徳原隆元】

【専門家の目|金田喜稔】久保が明かした思い、森保監督も理解と感謝

 森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング19位)は、10月13日に新潟・デンカビッグスワンスタジアムでカナダ代表(同44位)と対戦し、4-1で快勝した。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏が日本代表の招集問題に切り込み、「日本で試合をやる時、海外組を毎回呼ぶのは負担が大きすぎる」と指摘。そのうえで「監督と選手、両者納得のうえで招集に対するスタンスを決めるのもいい」と提言している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

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 スペイン1部レアル・ソシエダでプレーするMF久保建英は、今月11日の代表練習後に代表招集後の長距離移動や過密日程の過酷条件について思いを明かしていた。

「代表戦があるので、きついですけど……なんとか戻ってきたという感じですね。正直きついですよ。日本で待ってくれている人がいるし、チケットも新潟は完売と聞いているので、そういった人たちのために試合ができるのは幸せなことですが、きつさがあるのも事実。それは僕だけではないですけれど、例えば今回の代表で言うと、菅原(由勢)選手は僕よりも試合に出場していますし、そのなかで文句の1つも言わず代表のために帰ってきてたので、そういったところを、ファンのみなさまも頭の片隅に入れておいていただけると、より楽しんで代表戦も見ていただけるのではと思います」

 森保監督も「海外組は移動や環境が違ったり、ヨーロッパの大会に出て連戦があったりと過酷の条件の中でも日本代表の一員として頑張ってくれていると思っています」と理解を示すとともに、招集に応じて奮闘する選手たちに対して感謝の言葉を口にしている。

 日本代表招集におけるコンディション問題は、今に始まったことではない。代表で活躍した金田氏は「代表招集は名誉でありステータス。多少の疲労があっても、選手は意気に感じて招集に応じる。選手のモチベーション維持においても、日本代表の存在は大きい。国を背負うことは、それだけで言葉にできないほど充実感があるものなんだ」と語る一方、選手の疲労蓄積については懸念を抱いている。

「選手に疲れがあったとしても、やはり代表に呼ばれる喜びが勝る。本人はやる気満々だと思う。選手本人は、代表でやりたい・プレーしたいという気持ちが上回るだろうが、肉体は正直だから長距離移動や連戦で疲労はどうしても蓄積する。科学的な見地に基づいて考えれば、日本で試合をやる時、海外組を毎回呼ぶのは負担が大きすぎる」

海外組は厳選し「国内組や海外組の新戦力を加えて底上げを図るのが良いのではないか」

 代表招集に応じる海外組の心意気も理解したうえで、金田氏は「日本代表のチーム作りは新たなフェーズに入ったと思う」と続ける。

「海外組の個々の選手が置かれた立場もある。クラブで熾烈な競争をするなか、代表招集で調子を崩してポジションを奪われ、クラブでの出場機会が失われたら成長の機会も損なわれる。そうした事態は本末転倒だ。その意味で、今の日本代表のチーム作りは新たなフェーズに入ったと思う。もちろん重要な試合や大会が間近に迫ればフル招集で良いだろうが、それ以外はむやみやたらに海外組を招集するのではなく厳選し、国内組や海外組の新戦力を加えて底上げを図るのが良いのではないか」

 海外組の日本代表招集におけるメリットとデメリットを踏まえたうえで、日本開催ならではの良さもあると金田氏は強調する。

「クラブチームでの競争、選手の疲労面を考慮すれば無理して招集しないのは選択肢の1つ。ただチームの強化だけでなく、選手のメンタル維持も考えると、多少無理しても招集するのが良いかもしれない。日本の空気を吸う、日本のものを食べる、日本人が周りにいる。そうしたものすべてを含めて、良い意味でのリフレッシュと活力の再注入になる」

 海外組が大半を占めるようになった森保ジャパンにおいて、今後も招集問題は付いて回る。そこで金田氏は、両者納得のうえで招集機会を減らす形も提言する。

「監督と選手個人で面談し、両者納得のうえで招集に対するスタンスを決め、招集機会を減らすのもいいだろう。何も説明しなければ不安になるだけなので両者の納得は不可欠だが、そうは言っても選手のマインドや身体の状態は日々変わるものだから、『直前でやっぱり行きたい・行きたくない』という変化も出てくるだろう。仮に両者納得のうえで招集外が続いたとしても、寂しさを感じるのが人というもの。そこは日本人監督ならではの良さで、そうした心の機微にも敏感に反応できるはずだ」

 代表戦の開催地によっても選手の負担は大きく変わるなか、金田氏は「招集する・しないの良し悪しは一概には言えない。選手個人と代表スタッフの考えも違うかもしれないし、決して簡単ではない」と総括していた。

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金田喜稔

かねだ・のぶとし/1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。

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