久保建英は「まさに短剣」 レアル戦1アシスト…スペイン紙と記者の評価は「頭痛の種」「ファウルでしか止められない」【現地発】

ソシエダでプレーする久保建英【写真:Getty Images】
ソシエダでプレーする久保建英【写真:Getty Images】

ソシエダのCL出場により、レアル戦のチケットの最低価格が10ユーロ上昇

 レアル・ソシエダの久保建英は、ラ・リーガ第5節の古巣レアル・マドリード戦で先発フル出場し、1-2で敗れたものの力強いパフォーマンスを披露した。

 代表ウィーク直後の対戦とあり、選手のコンディションが懸念された。なぜならソシエダは、久保(日本)、ミケル・メリーノ、マルティン・スビメンディ、ルビン・ル・ノルマン(いずれもスペイン)、キーラン・ティアニー(スコットランド)、ハマリ・トラオレ(マリ)、ベニャト・トゥリエンテス(U-21スペイン)、モハメド=アリ・チョー(U-20フランス)の8人をそれぞれの代表に輩出していたからだ。

 このなかで、ドイツ、トルコとの親善試合で勝利に貢献する活躍を見せた久保は今回、試合会場がドイツとベルギーと、いつものような長距離移動がなかったことが幸いし、コンディション的には問題なく大一番に挑むことができた。

 一方、マドリードはジュード・ベリンガムやルカ・モドリッチなど12人が代表戦に参加したが、ロドリゴやフェデ・バルベルデは南米移動を強いられていた。

 マドリードはシーズン開幕から唯一4連勝を達成し、首位の座をキープしていた。ティボー・クルトワ、エデル・ミリトン、ヴィニシウス・ジュニオールといった主力を怪我で欠いてはいるが、新加入のベリンガムが予想以上の得点力を発揮し、ラ・リーガ得点ランキングトップと絶好調で、エースのカリム・ベンゼマ退団の穴を上手く埋める存在となっている。

 しかしソシエダは過去10回の対戦でこの相手に、3勝3分4敗と引けを取っていないどころか、ここ2試合負けなし。さらに前回の対戦ではホームで久保が先制点を奪い、8試合ぶりの勝利を収めたのである。

 今対戦のチケットの最低価格は60ユーロ(約9600円)と、昨季より10ユーロ(約1600円)増しとなったが、これは昨今のスペインのインフレに加え、ソシエダが今季、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場チームであるため、その価値が付加されたためと言えるだろう。

存在感を放った久保、スペイン各紙が高評価

ソシエダ戦を行ったサンティアゴ・ベルナベウの当日の様子【写真:高橋智行】
ソシエダ戦を行ったサンティアゴ・ベルナベウの当日の様子【写真:高橋智行】

 チームは10季ぶりのCL初戦を3日後に控えていたが、イマノル・アルグアシル監督はマドリード戦の前日会見で「ベストメンバーで臨む」と宣言。その言葉どおり、ローテーションすることなく、代表戦参加でチーム練習がほとんどできなかった久保を含む前節グラナダ戦と同じ11人を先発起用した。

 いつも通り4-3-3の右ウイングに入った久保は、4試合すべてでスタメン入りし、3得点1アシストでラ・リーガ得点ランキング2位につけ、4戦連続でMVPに輝く好調ぶりをこの試合でもアピールした。

 立ち上がりからハイパフォーマンスを発揮し、前半5分にアンデル・バレネチェアの先制点をお膳立て。さらに同11分、右サイドからカットインして鮮やかなシュートをゴール左下隅に決めるも、オフサイドポジションにいたミケル・オヤルサバルの背中をボールがかすめたため幻のゴールとなった。その後も華麗なドリブルシュートやミケル・メリーノの決定機をクロスで演出し、サンティアゴ・ベルナベウの観衆をざわつかせた。

 しかし後半に入ると、ギアを一段上げてきたマドリードに主導権を握られ、瞬く間に逆転を許してしまう。久保は今季初めてフル出場したが、後半はチームが劣勢な状況に陥ったことであまり存在感を発揮できず、今季初黒星を喫することになった。

 古巣を大いに苦しめた前半の久保のプレーに、スペイン各紙は軒並み高評価。クラブの地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」は、「並外れていた。まさに短剣。バレネチェアのゴールを演出し、ゴラッソを記録したがオヤルサバルのポジションにより取り消された。ほかにも前半に2つの素晴らしいプレーを見せ、(オーレリアン)チュアメニとフラン・ガルシアのイエローカードは、レアル・マドリードが久保をファウルでしか止められないことを示している」と評し、最高の5点をつけた。

 もう1つの地元紙「ノティシアス・デ・ギプスコア」も賛辞を惜しまず、「スペクタクル。ここまでのラ・リーガ最高の選手。時に誰も止められなくなる」とし、さらに「先制点をお膳立てし、ゴールを決めたがオヤルサバルのポジションがオフサイドで取り消された。この夜最高のプレーを披露し、ケパ(アリサバラガ)にセーブされたあと一歩でゴールというカーブをかけたシュートを放ち、ミケル・メリーノに素晴らしいクロスを入れた。後半はファールで止められただけだったが、主役の役割を失っていた」と評し、チームトップの8点(最高10点)を与えた。そして全国紙の「マルカ」は2点(最高3点)、「アス」は最高の3点だった。

最大級の賛辞「ソシエダが勝ち点3を獲得していたら、間違いなく久保がMVP」

久保建英を称賛したマドリードのデジタルメディア「コネクシオン・デポルティーバ」のディエゴ・メングアル記者【写真:高橋智行】
久保建英を称賛したマドリードのデジタルメディア「コネクシオン・デポルティーバ」のディエゴ・メングアル記者【写真:高橋智行】

 試合後、取材に訪れていたマドリードのデジタルメディア「コネクシオン・デポルティーバ」のディエゴ・メングアル記者は、この日の久保のパフォーマンスを次のように評した。

「久保は今日、徐々に調子を落としていったと思う。しかし前半のパフォーマンスは本当に素晴らしかったし、惜しくもオフサイドだったがゴールチャンスもあった。ハードタックルでイエローカードを出されたフラン・ガルシアにとって、久保が常に厄介な存在だったのは間違いないし、今日の試合で彼の高いクオリティーが証明されたのは確かだ」と称賛した。

 続けて、「久保は今日、イマノルのチームの中で最も際立つ活躍をした選手だったし、もしレアル・ソシエダが勝ち点3を獲得していたら、間違いなく彼がMVPに輝いていた。それは久保の存在がアンチェロッティの守備陣にとって常に頭痛の種になっていたからだ」と、チームナンバーワンの選手だったことを強調した。

 また後半、久保のパフォーマンスが低下した理由について、「レアル・ソシエダは前半、試合のテンポを上手くコントロールできていたが、ハーフタイムを経て、チーム状態をガラリと変えてきたレアル・マドリードに後半最初に失点したことが大きな痛手となった。それ以降、調子を上げてきた相手にさらに追加点を奪われてしまったことで、彼らはチームとして試合を安定させるのに苦労したんだと思う」と後半劣勢になったことを挙げていた。

 久保がハイパフォーマンスを見せるも、チームとしてなかなか勝てない厳しい状況が続くなか、ソシエダは現地時間20日のCLグループリーグ初戦で、セリエAで全勝し首位を走るインテルと対戦する。ホームとはいえ非常に厳しい戦いになることが予想されるが、この一戦を落とした場合、公式戦6試合でわずか1勝という状況に陥ることになる。そのため悪い流れを断ち切り、昨季のような勢いを取り戻すためにも、是が非でも勝利が必要となる一戦になるだろう。

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高橋智行

たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。

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