最も危機感を抱くべきは? 森保ジャパンのメンバー発表会見で分かった3つのポイント【コラム】

日本代表を率いる森保一監督【写真:森 雅史】
日本代表を率いる森保一監督【写真:森 雅史】

急務となるサイドバックの人材難

 日本代表の森保一監督は8月31日、現地時間9月9日のドイツ代表戦、同12日トルコ代表戦に向けたメンバーを発表した。6月のメンバーからは、瀬古歩夢、川辺駿、相馬勇紀、旗手怜央、川村拓夢、川崎颯太が外れ、町田浩樹、毎熊晟矢、冨安健洋、橋岡大樹、田中碧が入っている。

 森保監督はこれまで移籍直後の選手は招集しない配慮を行っていたが、今回はフランクフルトからラツィオに移籍した鎌田大地、シュツットガルトからリバプールに渡った遠藤航、セルクル・ブルージュからフェイエノールトに行った上田綾世なども招集している。これはドイツ戦、トルコ戦ともドイツ、ベルギーとヨーロッパで開催されるため、日本に戻ってくるほどの移動の負担がないということでの判断だろう。

 会見では、言葉にされない部分で3つのポイントがあった。

 まず1つ目。今回初招集だった毎熊について聞かれた森保監督は「チームでのパフォーマンスがいい」と話し始めた。さらに、「すべてのポジションでポジションを争いはあり、レベルアップもしなければいけないと思いますが、サイドバックのところにおいては、そのポジションで日本代表としての戦力となり得る選手の幅は、より作っていきたい、広げていきたい」と選考理由を続ける。

 この4バックシステムの時のサイドバックが、今の日本代表の最も人材難で苦しんでいる部分だろう。

 2022年のカタール・ワールドカップ(W杯)を振り返ってみよう。4バックでスタートした初戦のドイツ戦は右サイドバックが酒井宏樹、左は長友佑都、コスタリカ戦は右が山根視来、左は長友だった。スペイン戦とクロアチア戦は最初から3バックで、両試合とも右のウイングバックの先発は伊東純也と長友だったのだ。

 その酒井、山根、長友の代わりを見つけるのに森保監督はテストを繰り返している。6月の時はそれまで左ウイングとして起用していた相馬を右サイドバックとして起用するなど、コンバートまで含めた選考を行ってきた。

 誰がいち早くサイドバックのポジションを手に入れるかというのは注目点になる。そしてそこで2つめのポイントが出てくる。

ドイツ戦のシステムは4バックスタートが有力か

 2つ目は、森保監督はシステムをどうするのかという点だ。カタールW杯でドイツと対戦した時は、前半4バックが機能せず、というよりもドイツの次々に飛び出してくる選手を捕まえきれず失点を許した。後半3バックに変更してマークをはっきりさせたことで状況を改善し、カウンターで逆転勝利を収めることができた。

 だが、W杯後は4バックにして、よりボールを保持できる形を模索している。3バックにすればどの程度できるか分かったため、W杯に間に合わなかった4バックを熟成させている途中だ。

 ドイツ戦でのシステムを問われた森保監督は「何をどう試すか選手が集まってから決めたいが、システムはチャレンジしていきたい」と語っていて、今回も4バックスタートを匂わせた。その点を考えても、サイドバックの人材発掘は重要であり、なおかつ強敵相手に招集されたということは、今回のメンバーは今後に向けて期待されていると言えるはずだ。

 また、「攻撃のパーセンテージとチャンスの回数を増やしていけるように、ベース作りと少しずつ積み上げていくということを考えていきながらチャレンジしたい」とも語っていて、カウンター中心という戦いではないだろう。

 現在は2026年アメリカ・カナダ・メキシコW杯のためにチームのベース作りをしている段階。勝敗よりも個人や選手の組み合わせ、そしてシステムの問題点などを洗い出すのではないかと思われる。

 そして3つ目だが、これが一番重要ではないだろうか。それはこのドイツ戦にどれだけの世間の関心度を呼べるだろうかということだ。

 この記者会見で質問した記者は6人。23分で終了してしまった。森保監督は丁寧に答えるので記者会見は長くなりがちで、これまでの会見と比べると今回はとても短い。

 もしもこれがW杯直後だったらどうだっただろうか。もっと熱はあったと思うし、逆に言えば、今年に入って日本代表への関心は急落しているように感じる。

 日本代表は年間を通じて活動しているわけではないので、どうしても試合と試合の間は関心が薄くなってしまう。9月、10月、11月とインターナショナルマッチデーがあるので、ここから11月のW杯予選に向けて盛り上がっていけばいいのだろうが、ドイツでのドイツ戦という好カードを前に現状は寂しい限りだ。

 日本サッカー協会(JFA)はもっと戦略的に日本代表をプロモートしていいのではないだろうか。今のままでは活動していない間、代表選手がヨーロッパでどんなプレーをしているかぐらいしか話題がなくなる。

 日本代表の活動を支えることはもちろん、その価値を高めることをもっと考えてもいいはずだ。きっとこの会見に、日本サッカー協会も危機感を持ったことだろう。

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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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