仏リーグ・アン、新シーズン展望 王者PSGの対抗馬は?…南野モナコ、伊東&中村ランスの健闘にも期待【コラム】

リーグ・アンの2023-24シーズンを展望【写真:Getty Images】
リーグ・アンの2023-24シーズンを展望【写真:Getty Images】

2023-24シーズンを展望、リーグ全体の競争力が底上げされ混戦の可能性も

 欧州5大リーグの新シーズンが、いよいよ幕を開ける。「FOOTBALL ZONE」では、各リーグの始動に合わせて特集を展開するなかで、ここでは8月11日(現地時間)に開幕したフランス1部「リーグ・アン」の2023-24シーズンを展望する。

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 新シーズンのリーグ・アンはかなり混戦になってくる可能性もある。昨シーズンはパリ・サンジェルマン(PSG)がRCランスを勝ち点1差で上回り、なんとか連覇を成し遂げた。過去6シーズンを遡っても、2020-21シーズンにリールが優勝した以外はPSGが優勝しているが、リーグ全体の競争力が底上げされてきている。

 もちろんルイス・エンリケ監督が率いるPSGは優勝の大本命だが、より組織的なチームになっていきそうだ。昨季16得点16アシストのFWリオネル・メッシがアメリカ・メジャーリーグサッカー(MLS)のインテル・マイアミに移籍し、契約が残り1年となっている得点王のFWキリアン・ムバッペは延長オプションも今夏の移籍も拒否ということで、やむなく“飼い殺し”になる可能性も出てきている。

 その一方で、来日ツアーではお披露目のなかったFWネイマールが、韓国の釜山で行われた全北現代戦にはスタメン起用されて2ゴール。こちらもクラブ側から戦力外通告がされたとの噂もあるが、いわゆる“MNM”最後の1人として、改めてエースの活躍が期待される。PSGは悲願の欧州制覇も期待されるなかで、エンリケ監督の戦術を多くの選手に浸透させながら、2つのコンペティションを回していくのは簡単ではないだろう。

 昨シーズン2位に大躍進したRCランスは昨季失点29のディフェンスが強みになる。ただし、チーム得点王のFWロイス・オペンダがドイツ1部のRBライプツィヒに移籍しており、昨季7得点の32歳FWフロリアン・ソトカに多くを期待するのは難しいか。新加入の若きコロンビア代表FWオスカル・コルテスなどの台頭が鍵になる。

 そのランス以上に、PSGにとって脅威になりそうなのが昨シーズン3位のマルセイユだ。スペイン人のマルセリーノ監督が率いる南仏の名門は攻守のバランスが取れているだけに、イングランド1部チェルシーから加入したガボン代表FWピエール=エメリク・オーバメヤンが爆発的な得点力を発揮できれば、タイトル争いに絡んでくるはず。ただ、リーグ・アンに先立って、UEFAチャンピオンズリーグ予選ラウンドを戦っており、この結果がリーグ戦にも影響してくる可能性がある。

昨季6位モナコ、同7位リヨンも戦力的なポテンシャルは高い

 ここ数シーズン上位争いを続けるレンヌ、昨季24得点のカナダ代表FWジョナサン・デイビッドを擁するリールなども優勝を狙えるチームだが、昨季6位に終わったASモナコ、7位のリヨンも戦力的なポテンシャルは高い。モナコはドイツ1部のフランクフルトやボルシアMGで指揮したアドルフ・ヒュッター監督が立て直しを図っている。

 勝負のシーズンとなるMF南野拓実もドイツ1部バイエルン・ミュンヘンとのプレシーズンマッチで得点するなど、開幕スタメンに向けてアピールしている。エースFWのウィサム・ベン・イェデルや得点力とアシスト力を兼ね備えるロシア代表MFアレクサンドル・ゴロビンは健在だけに、南野が主力に加わることで、得点を伸ばしたいところ。また中盤でフランス代表のユスフ・フォファナが攻守の要として、さらに存在感を高められるかも注目だ。

 ローラン・ブラン監督が率いるリヨンは昨季27得点をマークしたFWアレクサンドル・ラカゼットを中心に、新たな“神童”として期待される19歳のMFラヤン・チェルキなどがダイナミックな攻撃を展開する。爆発力はPSGにも引けを取らないものがあるだけに、シーズンの波をどう良い方に安定させていくかが鍵に。MFコランタン・トリッソとMFマクサンス・カケレが組む中盤のハンドリングにも懸かっている。

 そして日本代表MF伊東純也を擁するスタッド・ランスにはオーストリア1部のLASKリンツから同FW中村敬斗が加わり、日本人アタッカーの両翼が誕生する期待がある。昨シーズン11位のチームはウィリアム・スティル監督がソリッドなディフェンスを植え付けているが、昨季は得点45失点45でプラスマイナス0。欧州カップ戦出場圏内となる昨季5位リールとは総得点で20の開きがある。その意味でも、オーストリアで左ウイングのポジションから昨季14得点した中村の存在は頼もしいが、攻撃の手が増えることで、中央や伊東の右サイドからもチャンスが増えていけば、ジャンプアップする可能性もある。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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