女子W杯で花開くなでしこ杉田妃和の強みと真骨頂 アメリカで磨いたスキル、狙うは「間に流す」ピンポイントパス【コラム】

なでしこジャパンの杉田妃和【写真:早草紀子】
なでしこジャパンの杉田妃和【写真:早草紀子】

なでしこジャパンでの主戦場は左ウイングバック、柔軟な姿勢に高まる期待感

 女子ワールドカップ(W杯)第2戦のコスタリカ代表戦でこの選手ならどう動いてみせるのか――。そのプレーに期待を寄せずにはいられないのが杉田妃和(ポートランド・ソーンズFC)だ。これまでなでしこジャパン(日本女子代表)では、ボランチやサイドハーフとしてプレーすることの多かった杉田だが、池田太監督が3バックを起用してからは左ウイングバックが主戦場となった。

 スピードスターの多いサイドを抑えこみ、守備をハメていくにはウイングバックの動きが1つのバロメーターとなる。初戦では同じアメリカでプレーする遠藤純(エンジェル・シティFC)がその任を務めた。

 スピードとパワーが武器の遠藤に対し、杉田は持ち前の柔軟性のある精度の高いクロスに加え、アメリカへ渡ってから磨き上げられたコンタクトスキルが攻守に光る。その実力は2月のSheBelieves Cupでは視察に訪れていたNWSL(ナショナル・ウィメンズ・サッカーリーグ)の関係者もゴール前への配球と、直接ゴールを狙うシュート嗅覚に舌を巻くほど。杉田はアメリカの地でも着々と評価を高めている。

 なでしこでは左ウイングバックとして走る距離とスペースが広がり、選択肢も増えた。

「相手の守備が引いてくると角度のないパスやプレーが有効でなくなると感じているので、どれだけゴール前に斜めのパスやクロスボールを入れてゴールに近づけるか、相手を引き出すポケットをどう作るかがチャンスに直結すると思ってます」(杉田)

 彼女の場合、特長としてスピードが上がるわけではないが、だからこそ相手が食い付いてくることを逆手に取ってかいくぐることができるのも強み。DFを剥がしたその瞬間からが杉田の真骨頂だ。相手の触れない際どい位置にボールを展開させていくコントロールは独特のものがある。

「ふわんってボールよりもDFとGKの間に流すボール、誰が触ってもおかしくないボールを狙ってます」と杉田も自信を覗かせた。日本の初戦でも何度も介入したVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)をも味方につけようとする柔軟な彼女の姿勢は期待感に変わる。

「(味方が)ここに欲しいっていうのに合わせるパスを出すタイミングを作りたい。VARでオフサイドやノーゴールになっても、それでラインが下がるならラッキーでしょ?(笑)」(杉田)

なでしこジャパンの杉田妃和(中央)【写真:早草紀子】
なでしこジャパンの杉田妃和(中央)【写真:早草紀子】

なでしこジャパンでの主戦場は左ウイングバック、柔軟な姿勢に高まる期待感

 相手によっていくつものフォーメーションを起用するコスタリカ。地道に守ってカウンターを狙いにくるか、初戦のスペインに敗北していることで勝負に打ってくるか、どちらにしてもザンビアほどターゲットが明確でなく、杉田が背負う左サイドも含め、分散しているリスクを取りこぼさないことが1つのタスクとなりそうだ。

 杉田はこの第2戦のポイントを「早い時間帯での先制点」だと語った。チームの雰囲気がこれまでにないほど上がってきているが、杉田自身も「コンディションは上がってきてます。ノリノリです!」(杉田)と上々の仕上がりを見せている。

 今大会最も南に位置するダーニデンの街。夜にもなれば極寒。強風のなかの最終調整も、彼女の表情を見る限り順調に完了したようだ。

 スタジアム自体は屋根付きのため、風の影響は受けにくく、両コーナー付近は外気とつながっているものの、前日練習の会場で感じた凍えるほどの寒さは軽減されそうだ。グループリーグ突破に向けて両者ともに勝ち点が欲しい第2戦。左サイドの攻防に目を向けながら、先制点を待つのも悪くない。

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早草紀子

はやくさ・のりこ/兵庫県神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。在学中のJリーグ元年からサポーターズマガジンでサッカーを撮り始め、1994年よりフリーランスとしてサッカー専門誌などへ寄稿。96年から日本女子サッカーリーグのオフィシャルフォトグラファーとなり、女子サッカー報道の先駆者として執筆など幅広く活動する。2005年からは大宮アルディージャのオフィシャルフォトグラファーも務めている。日本スポーツプレス協会会員、国際スポーツプレス協会会員。

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