日本代表で「絶対外せない」&「アピール不足」は? ペルー戦出場全17選手を金田喜稔が採点
【専門家の目|金田喜稔】猛アピールに成功した菅原は「定位置を確保しそうな勢い」
森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング20位)は、6月20日のキリンチャレンジカップでペルー代表(同21位)と対戦し、4-1で快勝した。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏が、この試合に出場した17選手を5段階(5つ星が最高、1つ星が最低)で採点した。
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◇ ◇ ◇
<GK>
■中村航輔(ポルティモネンセ)=★★★★☆(4つ星)
1失点は喫したが、あの近距離からフリーでシュートを打たれしまってはノーチャンスだった。ほかの場面では好セーブも披露しており、試合を通じた安定感としては上々で、アピールになる試合だった。
<DF>
■谷口彰悟(アル・ラーヤン)=★★★★☆(4つ星)
板倉との連係は試合を重ねるごとに深まり、ギリギリのラインコントロールを見せるなど守備陣を統率。ペルーの嫌らしいパスや抜け出しに手を焼く場面も見られたものの、1対1の対応はソツがなく、安定感も際立った。
■板倉 滉(ボルシアMG)=★★★★☆(4つ星)
なんといってもキックの質が良く、最終ラインから攻撃の起点となれるのは大きい。守備の対応も冷静沈着で、ピンチの芽を何度も摘んだ。空中戦、地上戦いずれも信頼の置ける存在であり、菅原の上がったスペースも常にケアしていた。
■伊藤洋輝(シュツットガルト)=★★★★☆(4つ星)
代表初ゴールは思い切りの良さが光り、シュートが狙える位置まで入り込んでいた判断が素晴らしい。欲を言えば、高いキック精度を攻撃面でさらに生かしてほしいということ。同サイドの三笘はもとより、逆サイドまで生かせるキックを持っているだけに、「伊藤らしさ」がより出てくると定位置確保が近づく。
■菅原由勢(AZアルクマール)=★★★★★(5つ星)
→後半16分OUT
圧倒的な運動量で猛アピールに成功した。右サイドの好連係からゴールの起点になるだけでなく、伊東と並んで相手に脅威を与えており、文字どおり右サイドの槍となった。オーバーラップ、インナーラップの判断、上がるタイミングなども良くなっており、このまま定位置を確保しそうなほど勢いがある。守備でも身体を投げ出し、素早く間合いを詰めてブロックするなど好判断を見せた。
2列目の両サイドが躍動、久しぶりに先発した古橋は「決めてもらいたかったのが本音」
<MF>
■遠藤 航(シュツットガルト)=★★★★★(5つ星)
→後半36分OUT
まさに「遠藤ここにあり」を見せつけた試合。中盤のバランスをケアし、幅広いエリアでピンチの芽を摘み続けた。相手のチャンスシーンでも、1人素早い出足でブロックしており、危機察知能力は群を抜く。2列目の強力なアタッカー陣を生かすのであれば、今の遠藤は絶対に外せない選手の1人だろう。
■伊東純也(スタッド・ランス)=★★★★★(5つ星)
→後半26分OUT
古橋のポジションを常に意識し、高精度のクロスを供給。FWのタイプに合わせて自分のプレーを最適化できるのも伊東の良さだ。時に菅原と連係しながら打開。また伊東の守備は圧巻。攻撃から守備へ移行した際の素早い寄せは伊東ならでは、攻守両面でスピードを生かしていた。競争は激化しているが、伊東の壁はとてつもなく高い。
■鎌田大地(フランクフルト)=★★★★☆(4つ星)
→後半26分OUT
要所で鎌田らしいテクニカルなプレーを披露した。三笘のゴールシーンでも流れを止めないトラップは、さすがの一言。基本的に「攻撃の流れを止めないプレー」というのが、彼の良さを1つだと思っており、強みが生きたシーンと言える。とはいえポテンシャルはもっと高く、もっとやれるはずという思いが強い。
■旗手怜央(セルティック)=★★★☆☆(3つ星)
→ハーフタイムOUT
脚光を浴びるプレーは少なかった印象だが、裏を返せば攻守両面で上手く順応していたとも言える。2列目のバランス、鎌田との距離感も常に意識しながらサイドを生かす意識が垣間見えた。ウイング、2列目、ボランチ、サイドバックに対応するのは強みだが、攻撃面でより変化を加えられる存在だけに、武器をさらに磨いてほしい。
■三笘薫(ブライトン)=★★★★★(5つ星)
1ゴール1アシストと結果を残し、存在感も抜群だった。右の伊東、左の三笘で相手に脅威を与え続けた。ゴールシーンは、日本や海外で何度も見せ続けたシュートの形で、まさに「三笘ゾーン」と言える。パスの出し手と受け手、その両方で機能するだけでなく、チームとしても三笘の生かし方が改善されてきた。今の状態であれば先発定着間違いなしだろう。
<FW>
■古橋亨梧(セルティック)=★★★☆☆(3つ星)
→後半16分OUT
ボールを受ける際の予備動作も含めて、磨いてきた動きの質はやはり高い。代表で久しぶりの先発という点だけを考えれば上々の出来と言えるが、上田や前田との違いを十分に発揮したかと言えば、今日の活躍では弱く、アピール不足の感も否めない。ゴールチャンスは何度かあっただけに、シュートの形が豊富で精度も高い古橋には決めてもらいたかったのが本音。
“らしさ”を発揮した途中出場の前田、堂安と久保の「セット投入は今後もありそうだ」
<途中出場>
■守田英正(スポルティング)=★★★☆☆(3つ星)
←ハーフタイムIN
遠藤の安定感に比べると、どうしても守備面は見劣りしてしまう。その分、起点となるプレー、攻撃陣と絡むプレーなどで攻撃面をより活性化させたかったが、守田の良さが存分に発揮できたかと言えば、まだまだ物足りない。とはいえ遠藤との連係は板に付いており、安心して見ていられる。
■相馬勇紀(カーザ・ピア)=★★★☆☆(3つ星)
←後半16分IN
主戦場ではないものの、2試合連続のSB起用。サイドからのクロスに対して、中央への絞りがやや甘くなる場面があり、守備面で課題を残した。一方、攻撃面では積極的な上がりで厚みを加えており、リスクを冒して得点を狙いに行く際の一手という意味でテストは上々だった。
■前田大然(セルティック)=★★★★☆(4つ星)
←後半16分IN
限られた出場時間ながら、前線からのプレッシングとスピードという持ち味を生かし、ゴールも陥れた。クロスに対しても再三飛び込み、ゴールへの意欲は感じさせている。ボールを収める技術という点は改善点と言えるが、らしさは発揮したので評価したい。
■堂安 律(フライブルク)=★★★☆☆(3つ星)
←後半26分IN
大阪凱旋とあって気合いみなぎる雰囲気を醸し出していた。ゴール前に走り込む姿にも積極性が表れており、シュート意識も高かった。久保と連動したプレスで相手のミスを誘発し、前田のゴールにつなげた。久保とのセット投入というのは今後もありそうだ。
■久保建英(レアル・ソシエダ)=★★★☆☆(3つ星)
←後半26分IN
ボールを持てば何かやりそうという雰囲気が漂う。三笘とはまた一味違うワクワク感があり、攻撃を活性化するという意味では最適の一手になり得る。この日もゴールへの意識は高く、隙があればシュートを打ちそうな怖さがあった。堂安と同時投入され、前田のゴールシーンでは2人の守備の連係も光った。
■瀬古歩夢(グラスホッパー)=短時間のため採点なし
←後半36分IN
失点シーンでは、ぽっかりとスペースが空いてしまい、相馬とのギャップを突かれた。試合の流れに乗る前だっただけに致し方ない面もあるが、今後へのアピールという意味ではゼロで抑えたかったところ。本職がCBで、クラブではボランチも経験しているとはいえ、まだ不慣れない一面が覗いた。
金田喜稔
かねだ・のぶとし/1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。