日本代表の「中心になっていきたい」 MF川辺駿、欧州でキャリアハイの自信と決意【現地発コラム】

日本代表に復帰した川辺駿【写真:Getty Images】
日本代表に復帰した川辺駿【写真:Getty Images】

スイス1部グラスホッパーで9得点6アシスト、約2年ぶりの日本代表復帰

 日本代表招集の報がようやく届いた。

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 スイス1部グラスホッパーで中心選手として活躍しているMF川辺駿が、6月の代表シリーズで約2年ぶりにサムライブルーのユニフォームに袖を通した。

 グラスホッパー1年目の2021-22シーズンにいきなり7得点3アシストをマークすると、2シーズン目の今季は9得点6アシストとそれぞれの数字をさらにアップさせた。チームの中心選手として相手からのチェックも厳しい。御多分に漏れずスイスリーグもフィジカルコンタクトがとても強いリーグで、激しいチェックは日常茶飯事だ。

 そんな状況下で川辺は違いを生み出すプレーを見せた。当たり負けしないように相手との距離を測りながら自分のタイミングで飛び込み、ぶつかり、身体を入れてボールを奪い取るスキルが身に付いている。そしてチャンスを嗅ぎ分ける能力には、さらに磨きがかかった。

 ここぞというタイミングを見逃さずに猛ダッシュで一気にゴール前まで走り込み、パスを受けるのが上手な川辺だが、その動き出しがあまりに鋭いので相手マークが一気に引きはがされる場面も少なくない。取材に駆け付けた最終節のバーゼル戦でもそうしたシーンがいくつも見られた。

 ハイインテンシティーで攻守に走っているため、終盤になると疲れも出てくる。そうした時でもチャンスの匂いを嗅ぎつけたらギアが一気に入る。シュート意欲や精度の向上で得点力もアップしたわけだが、チャンスメイク能力も優れているのが川辺の特徴だろう。相手選手が寄せてくると華麗なワンタッチパスで味方を好機へ誘う。

 バーゼル戦は善戦したものの1-3で敗れ、シーズン7位で終了。強豪相手の好プレーに手応えを感じつつも、自身の課題と向き合っていた。相手のレベルが高いからこそ、試されるところだ。

「自分で(相手マークを)はがせる部分がもう少し必要だったと思う。ラストパスを通せたシーンと通せなかったシーンがあって、もちろんミスはありますけど、得点につながる、決定力を作るパスを出せるのが自分の良さだと思うんで。そのあたりをもっと回数と質を丁寧にやりたいですね」(川辺)

結果と内容を求めて欧州で奮闘「成長した部分をすごく評価してもらえたと思う」

 欧州での長いシーズンが終わり、川辺は中盤の選手としてチーム内得点王。FW陣がそこまで点を取れないなかでどんなプレーをすべきか考え、実践し、周囲から期待をかけられるなかで結果も出した。それが今回の代表招集にもつながっていることだろう。

「ボランチよりもう1つ前のインサイドハーフで試合に出ることが多かった。去年7ゴール、今年9ゴール6アシストとキャリアハイの数字を出すことができた。これをやっぱり続けていきたいと思います。どこに行っても結果を求めてやりたい。日本代表に今回選んでもらえたので、そういう部分でもやっぱり結果と内容を求めて、代表に選ばれ続けられるように、そしてもっと上へ上へと成長していけるようにやっていきたいですね」

 海外挑戦から2年。再び手にした代表への切符。その知らせをもらった時の気持ちはホッとした安堵だったのだろうか。それよりも喜びが何より先にきたのだろうか。

「嬉しかったですよ。ヤングボーイズ戦かな、(代表スタッフの方が)見に来てたのは知ってました。上のチームに行けばいくほど、選ばれる確率というのが高くなると思いますけど、このグラスホッパーで成長した部分をすごく評価してもらえたと思う」

 選手として成長するためには試合出場が絶対条件として必要で、自分の長所を生かしながら課題改善に取り込める環境も大切だ。自分を理解し支え、一緒に戦ってくれる監督やスタッフも欠かせない。川辺にとって、グラスホッパーとはそうした場所だった。だから、代表でも自信を持って戦うだけだ。

「(代表でも)自分のプレーを思い切って出すだけですね。自分にしかないものっていうのがあると思うので。それを還元できれば、常に必要な存在になれると思う。自分の良さを出して、結果を求めつつ、求められてることをやっていきたいですね。1回だけじゃなくて、何回も何回も選ばれて、(日本代表の)中心になっていきたいなと思います」

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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