今夏で退団のイニエスタが繰り返した“日本愛” 世界的スターが見るJリーグの発展とは?「自分はここに来ていい意味で驚かされた」

会見には家族も駆け付けた【写真:FOOTBALL ZONE編集部】
会見には家族も駆け付けた【写真:FOOTBALL ZONE編集部】

イニエスタは神戸市内で会見を開き、7・1の札幌戦を最後に退団すると発表

 J1ヴィッセル神戸に所属する元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタが5月25日、神戸市内で会見を開き、今夏限りで退団することを発表した。会見には三木谷浩史会長も出席。7月1日のホームJ1リーグ第19節・北海道コンサドーレ札幌戦がラストマッチとなる。神戸の選手、スタッフ、家族が駆け付けた会見では5年間で積み上げた“日本愛”を語った。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞)

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 目には涙が浮かび、言葉に詰まった。ゆっくり水を飲み、再びマイクを手に取る。今夏での退団を表明したイニエスタは、その理由を語り出すと、こみ上げる思いを抑えきれなかった。

「ずっと自分はここで引退する姿を想像してきた。しかし、時に物事は希望や願望通りにいかない。まだまだプレーを続けピッチで戦い続けたい思いがある。ここ数か月も激しいトレーニングを重ね、試合をプレーしてチームに貢献するための準備はできているという感覚でやってきた。しかし、それぞれの歩む道が分かれ始め、監督の優先順位も違うところにあるとも感じ始めた。ただ、それが自分に与えられた現実であり、リスペクトを持ってその現実を受け入れた。最終的には、自分の競技面での現実と、自分がプレーし続けることに感じている情熱をかけ合わせた結果、ここを去るのがベストな決断だとクラブとの話し合いで決めた」

 2018年に16シーズンプレーしたスペインの名門FCバルセロナを退団し、神戸へ完全移籍で加入した。バルサの下部組織で育ち、リーグでは9回の優勝、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)で4回の頂点に輝いた。世界のイニエスタがバルサを去り、神戸に入団する決断を下した。卓越したテクニックと戦術眼で攻撃を司り、クラブ初タイトルとなった19年度の天皇杯優勝などに貢献。2021年5月に神戸との契約延長に合意し、2023年までの2年契約を締結していた。

 世界的スターの来日に、列島が沸いた。J1リーグ通算113試合に出場、21ゴール。だが、今季はチームが首位を走る一方で、3試合計38分間の出場にとどまっていた。これが、退団を決断する大きな理由となった。

 イニエスタは、「ずっと自分はここで引退する姿を想像してきた」と話した。来日した時は34歳。サッカー人生を日本に捧げる覚悟だった。その思いが神戸の初めてのタイトル獲得につながった。

「5年前、自分の人生の中でも最も重要な決断の1つをしました。バルセロナを退団し、家族とともに我が家から遠く離れた地で新たな冒険を始めるという決断です。地元をあとにしてからずっと自分のホームだったクラブに別れを告げ、スペインの外で初めての生活が始まった。今、これまでの経験を振り返ると、あの決断に対して大きな喜びと誇りの感情が湧き上がってくる。日本に、神戸に、ヴィッセル神戸に来たことは自分の人生の中でとった最高の決断の1つであり、これからもそうあり続けるだろう」

 元スペイン代表FWダビド・ビジャや元ドイツ代表FWルーカス・ポドルスキとも神戸で共闘。同じスペイン代表として活躍し、サガン鳥栖に所属していたFWフェルナンド・トーレスとも日本で対戦した。スターたちのプレーに多くのファンが熱狂した。だからこそ、Jリーグの未来を今も思い描いている。

強く語った「引退したあともヴィッセル神戸に何らかの形で関わり続ける」

「本当にこのリーグにはポジティブなことしか思い浮かばない。バルサを退団した時に、これからも自分のベストのレベルでプレーしたい、競争の環境でプレーしたいと思ってここに来たが、そういう環境が整っていると思う。今後も成長を続け、世界のサッカーリーグについて考える時に頭に浮かぶリーグになってほしい。個人的にはベストコンディションであることを常に要求されるリーグだったので、その点については良かった。すごくいいラインにいる。ものすごく競争力のあるリーグ。どんどん成長していく。5年前、10年前と比べてもレベルが上がっている。日本人選手はレベルの高い選手が揃っている。引き続き、海外から来る選手に学んで、この道を歩み続けていけば、どんどんいいリーグになる。世界的に見ても魅力的。自分はここに来ていい意味で驚かされた」

 日本に来てから2人の子供に恵まれた。子供たちにとっては偉大な父親の姿の1つにJリーグでプレーした姿が焼き付いている。だからこそ、会見を通してイニエスタは強調した。

「永遠の別れではない。引退したあともヴィッセル神戸に何らかの形で関わり続ける」

 今後はまず現役を続行し、再びピッチに立つ。そして、また日本を訪れることを約束した。この5年間、イニエスタにとって過ごした時間のなか、日本への思いが膨らんでいった。その思いがひしひしと伝わってくる会見だった。また会う日まで――。ここからイニエスタにとって、そしてJリーグにとって、新たな歴史が始まる。

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