カメラマンが見た横浜FM、脅威の“3本の矢” FWマテウス台頭で過熱する高レベルな2列目争い

ヤン・マテウスが京都戦で存在感【写真:徳原隆元】
ヤン・マテウスが京都戦で存在感【写真:徳原隆元】

【カメラマンの目】横浜FMのヤン・マテウスが迫力あるプレー

 J1リーグ第12節、横浜F・マリノスはピッチに叩き付けるように降り注ぐ雨の激しさを物ともしなかった。京都サンガを相手に前半こそ1-1と互角の攻防が展開されたが、後半に一気にギアを上げると3点を奪取し、4-1の勝利を飾った。

 もはや説明するまでもないが、横浜FMのチームコンセプトは中盤から後方でボールをつないで相手の守備網に揺さ振りをかけ、チャンスと見ると両翼の突破力のある選手を使って敵陣へと切り込み、ゴール前にラストパスを供給して中央に走り込んできたストライカーがゴールを狙うというものだ。

 このゴールへの必勝パターンは、ファインダーに捉えた場面が雨で煙るほど激しく降り続いた京都戦でも冴えを見せた。横浜FMの優れた点は、ピッチに立つ選手たちの誰もが上記した相手への攻略方法をしっかりと意識しており、全体的なボール回しや局面におけるパス交換が実にスムーズなところだ。しかも、そのパス回しは相手守備に詰まって逃げるようなつなぎは少なく、仕掛けの意識が非常に強い。

 こうした戦術的な崩しに加えて、攻撃の核となる両翼が個人技術で局面を打開していく。そして、この試合で最も輝きを放ったのは右サイドからの攻略を託されたヤン・マテウスだった。背番号20番を背負うブラジル人FWは、開幕当初、水沼宏太が先発していたポジションにライバルとして台頭し、ここにきて前節の鳥栖戦に続き堂々の先発出場を果たした。

 南米人らしい高いボールテクニックに加えフィジカルの強さを合わせ持ち、ドリブルを最大の武器として京都ゴールへと迫るプレーには迫力があった。タイプ的にはパワーファイターのアンデルソン・ロペスとドリブル突破が自慢のエウベルの中間に位置するような選手だ。

 雨を吸った重いピッチでも自在に右サイドで存在感を発揮したマテウスだが、彼の躍動には同サイドの後方に位置するDF松原健の存在が欠かせなかった。後方でのつなぎで松原のところにボールが回ってくると、ほとんどの場合でマテウスの動きを視野に入れてパスを供給していた。

 そのパスもマテウスの足もとや走り出しに合わせたスルーと多彩で、しかも相手守備のマークに詰まると、ボールの受け手としてサポートへと向かっていた。後方は自分に任せて、存分に仕掛けろといった雰囲気に溢れ、マテウスを引き立てようとプレーしていた。この松原の強力なサポートがマテウスの動きをより活発化させたと言える。

 試合は前半10分、マテウスのパスを西村拓真がマーカーに密着されながらも技ありのシュートを決めて先制した横浜FMだったが、30分を過ぎると勢いは一旦トーンダウンし、その隙を突かれて同点とされる。しかし、満を持して迎えた後半に横浜FM自慢の攻撃力が爆発することになる。

京都戦の4ゴール目を決めた水沼宏太【写真:徳原隆元】
京都戦の4ゴール目を決めた水沼宏太【写真:徳原隆元】

水沼も負けじとゴールで存在感を示す

 トリコロールのユニフォームを身に纏った選手たちは、マテウスと左サイドに張るエウベルのドリブル突破を中心に次々とチャンスを作っていく。後半4分にオウンゴールで再びリードをすると、その15分後には途中出場のマルコス・ジュニオールのパスを受けてマテウスがゴール。

 後半41分には勝敗を決定付ける4点目を水沼宏太が豪快なシュートで決めて試合を締め括った。ベンチスタートとなった水沼もしっかりとゴールという結果を残したのだった。

 横浜FMの攻撃の起点となる両ウイングは水沼とエウベルが担っていたが、この2人にマテウスが加わり3本の矢となった。マテウスは水沼が後半18分に交代出場でピッチに立つと、左サイドへとポジションを変更してプレー。ポジションを変えてもそつなくこなす器用さも見せた。エウベル、マテウス、水沼と3人の誰もが持てる力をピッチで発揮し、攻撃を活性化させられることを改めて証明して見せたのだった。

 リーグ戦も3分の1を消化しそれぞれのチームの立ち位置も明確になってきた。ヴィッセル神戸、名古屋グランパス、サンフレッチェ広島と並びリーグを牽引する横浜FMだが、この相手守備網を突き崩す鋭い3本の矢に今後も注目だ。

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徳原隆元

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

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