日本代表GKシュミットが明かす危機感 Jリーグとベルギーの違い体感「めちゃめちゃ上手いわけではない」【現地発コラム】

シント=トロイデンのゴールマウスを守るシュミット・ダニエル【写真:(C) STVV】
シント=トロイデンのゴールマウスを守るシュミット・ダニエル【写真:(C) STVV】

ベルギー1部シント=トロイデンで今季31試合に出場、指揮官から高評価

 ベルギー1部シント=トロイデンに所属する日本代表GKシュミット・ダニエルに対するベルント・ホラーバッハ監督の信頼は非常に高いものがある。ドイツメディアに掲載されていたインタビュー記事に次のような記述があった。

「シュミットはセービング能力に優れているし、ボールを持ってのプレーも素晴らしい。全身から落ち着いたオーラを出している。どちらかというと大人しいタイプだが、チーム内では非常にリスペクトされている選手だ」(シント=トロイデン/ホラーバッハ監督)

 シント=トロイデンでは正GKとして今季31試合に出場。取材に訪れた最終節ロイアル・アントワープ戦では両チームともに決定的な場面が多くないなか、冷静かつ正確なビルドアップでチームに落ち着きをもたらした。前半唯一危険なシーンでは、適切なタイミングで飛び出し相手FWとの1対1を見事にブロックしている。

 ホラーバッハ監督は「もっと勇敢に前に出てくるべきだという話はしている」と指摘していたが、守備ラインを超えてくるロングボールに対して適切な対応を見せていた。後半34分にはロングボールに対してセンターバック(CB)が対応しようとするのを見て一度下がったが、そのCBがボール処理をもたついているのを見て、すぐまた前へ出てクリア。相手FWが迫っていたので、とても大事なプレーだった。

 後半3分の失点シーンは味方がビルドアップでミスをし、相手FWがフリーで抜け出してのシュートだっただけに、GKとしては致し方ない場面だったのだろうか。

「そういう試合が多い。本当に危ないシーンが1個だけでそれでやられてしまう。今日のもミスから始まったシーンですけど、最後はやられ方も、裏の取られ方も軽い。僕の課題でもあるかなとは思っています。自分もちょっと慌てて対応したというのがあった。止められる時もあれば、ああやって入っちゃうこともあるけど、それでも止められる確率を上げるように練習するだけだと思っています」(シュミット)

 チームは序盤、比較的順調に勝ち点を重ね、プレーオフ進出の可能性もあったが、終盤に失速し12位でシーズンを終えた。シュミットは今季を振り返る。

「ミスで負けた試合もあった。今思えば、そこからちょっと気持ちの部分で整理が難しくなったのは正直あって。それでもどうにかもがき続けてはいたんですけど、もっともっとチームを助けるようなセーブとかができれば、もっといい順位にもいけたし、個人的な印象も良かったんじゃないかなと思います」

 一方で少なからず成果を感じている部分もある。今シーズンを通して練習からそうした1対1時のブロッキングなどに取り組み続けていたという。決定機を見事に防いだシーンにもつながっている。

「いい時もあれば、悪い時もあるんですけど、そこには取り組んできたし、シーズン通してそういう面で成果が出せた試合もあったんで、そこはプラスに捉えていいところだと思います」

見据えるのはさらなる成長「もっといいリーグに行かなきゃいけない」

 シント=トロイデンに移籍してもう長い。リーグ内での評価をすでに得ているシュミットは、2019年からプレーするベルギーリーグをどう感じているのだろうか。

「フィジカル的に優れてる選手は何人かいますし、シュートスピードもないわけではない。そういう部分でJリーグとのスピード感の違いっていうのを体感できる部分はあると思う。ただ……」

 そういうと少し考えてから、次のように話してくれた。

「技術的な部分でめちゃめちゃ上手いというわけではないと思う。だから、めちゃめちゃ上手い、シュートも上手い、崩し方も上手いみたいな相手と対峙するために、そしてもっと自分のスタンダードを上げるためには、もっといいリーグに行かなきゃいけないと思います。けど、それだけに今季のプレーだともうちょっとインパクトがほしかったなっていうのはあります」

 ホラーバッハ監督は「シュミットは国際舞台でまだ過小評価されていると思われるが、トップレベルのGKだと私は思っている」と最大限の評価を口にしている。果たしてステップアップ移籍が実現するだろうか。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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