堂安律、ドイツ「トップ6」を意識 フライブルクの課題を指摘「失点より…」【現地発コラム】

フライブルクの日本代表MF堂安律【写真:Getty Images】
フライブルクの日本代表MF堂安律【写真:Getty Images】

16位ヘルタ戦で1-1ドローに終わった4位フライブルク

 日本代表MF堂安律がプレーするドイツ1部フライブルクは、代表ウィーク明けのブンデスリーガ第26節、残留争いに苦しむヘルタ・ベルリンをホームに迎えた。下位チーム相手だけにスッキリ勝ち点3を獲得して上位での立ち位置をさらにクリアなものにしたいところだったが、結果は1-1の引き分けに終わった。

 試合開始から主導権を握り、ボールを失っても組織だったゲーゲンプレスですぐに再回収。後半7分にはペナルティーエリアすぐ外で得たフリーキック(FK)を名手ヴィンチェンツォ・グリフォが巧妙に決めて先制に成功する。さらに攻勢に出るフライブルクは堂安、グリフォを中心にしたチャンスメイクから度々ヘルタゴール前に迫るものの、2点目がなかなか奪えない。

 守備陣は長い時間危ない場面がなかったが、後半32分にもったいないミスから失点。相手カウンターからのスルーパスに右ウイングバックのジョナタン・シュミートは先にボールへ追い付いていたが、体勢を崩しながらのGKへのバックパスを上手くコントロールできず、そのボールをヘルタFWジェシク・ヌガンカムに奪われてしまう。GKとの1対1を制したヌガンカムの同点ゴールを喜ぶヘルタ選手を、地面に倒れこんだシュミートはがっかり眺めるしかない。

 シュミートはベテラン選手だが、コロナ感染からの後遺症に苦しみ、この試合が今季初出場。満を持しての復帰戦で手痛いミスとなってしまった。チームとしてはなんとか勝ち越しをして、シュミートの痛みを和らげ、そして重要な勝ち点を手にしたかったが、ヘルタの身体を張った守備を最後まで崩せなかった。

 試合後、クリスティアン・シュトライヒ監督は流石に納得のいかない様子を見せた。

「とてもイライラさせられることだ。チームのパフォーマンスにではない。結果に対してだ。前節のマインツでは96分に同点ゴールで引き分け。今日もリードしながら勝ち切れなかった。この2試合で勝ち点4であれば良かった。だが、勝ち点2止まりというのはいただけない」

シーズン終盤「上位が下位相手に勝てないというのが多くなる」と堂安が言及

 この日、5位ライプツィヒがマインツに0-3で敗れていたため、勝ち点差をつける大きなチャンスだっただけに、逃したものは大きい。GKマルク・フレッケンもそこを認めていた。

「今日はチャンスを逃してしまったと言わざるを得ない。僕らは上位にとどまっていたいし、それなら今日のようなゲームを手放してはダメだ。内容的に良くなくても1-0でも勝利していたら良かったけど、今日はCL(UEFAチャンピオンズリーグ)出場権獲得へ向けて大きな一歩を踏み出すチャンスだったのに」

 確かに順位表でチームの実力を照らし合わせて考えると、4位のチームが16位のチームに引き分けたら「勝ち点を取り逃した」となるだろう。だが、下位にいるチームはそれこそ残留するために必死の思いで試合に臨んでくる。がむしゃらに闘争心全開で戦ってくる。だからこそ、思いもよらぬ結果というのが特にリーグ終盤では起こりやすい。

 堂安もそこを指摘していた。

「ブンデスリーガだと、下位のチームとの試合というのはリーグラスト1、2か月の時期はかなりハードになります。僕もビーレフェルトでプレーした時からそれを強く感じてます。多分これから上位が下位相手に勝てないというのが多くなる。今日はまさにそのとおりの試合になったと思います」

ユベントス戦で大きな刺激、「(順位は)高ければ高いほどいい」

 こうした試合をモノにするうえで大切なことは何か。1点リードしたのだから上手く試合をコントロールして1-0のまま試合を終わらせるべきか、それとも主導権を握っている時間帯に2点目を奪い切るべきか。

 堂安は「2点目を取る必要があったと思います。失点したことよりも、それがチームとしての課題かなと思います」と明言した。そしてそのためには訪れたチャンスからゴールを決め切る力が個人として、そしてチームとして極めて重要になってくる。

 フライブルクは今季UEFAヨーロッパリーグ(EL)のグループステージを首位で突破し、決勝トーナメント1回戦ではイタリアの強豪ユベントスと対戦(2戦合計0-3でフライブルク敗退)。あの舞台に立った事実が選手に、そしてチームにもたらした刺激は大きい。

「チーム的にはヨーロッパコンペティションに入るというのは意識しています。トップ6をチームとして共有しています。もちろん(順位は)高ければ高いほどいいので、そこは意識しています」(堂安)

 リーグ終盤に入ったところで4位につけているフライブルク。堂安が話すように、上位争いをしているチームにしても万全の状態というところは少ない。下位チーム相手に勝ち点を取り逃すことは十分に考えられることだ。ここからは1つ1つの勝ち点がとても重みを持ってくることだろう。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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