久保建英は「あの時とは全くの別人だ」 “2年間の大きな変化”に古巣番記者が驚き「今のほうが…」【現地発コラム】

レアル・ソシエダMF久保建英【写真:Getty Images】
レアル・ソシエダMF久保建英【写真:Getty Images】

日本代表からソシエダに戻った久保、古巣ビジャレアル戦でエースを押しのけて先発

 レアル・ソシエダMF久保建英は、現地時間4月2日の古巣ビジャレアル戦で、2試合連続の先発出場を果たした。

 3月に日本で行われた代表戦では、PCR検査の結果により出場制限がかかり、24日のウルグアイ戦は欠場。28日のコロンビア戦は途中出場したものの、不本意な形で国際Aマッチ期間を終えた。その後、ソシエダに復帰して日が浅かったが長距離移動の疲れも見せず、ラ・リーガ第27節ビジャレアル戦で、再びエースのミケル・オヤルサバルを押し退け2試合続けてスタメン入りした。

 久保のポジションは、先制点を挙げチームを久々の勝利に導いた前節エルチェ戦(2-0)と同じ中盤ダイヤモンド型の4-4-2の右FW。序盤から前線で激しく動き回り、前半5分にチーム最初のシュートを打つもGKペペ・レイナの好守に阻まれる。その後はビジャレアルに主導権を握られ、ほとんどボールを受けられずに前半を終えた。

 後半に入り、チームが前半よりも勇気を持ってラインを上げたことで久保に再びチャンスが訪れ、同5分にペナルティーエリア内からシュートを打つが、惜しくもクロスバーをかすめゴールには至らない。さらに同15分、今度は右サイドから絶妙な低空のクロスを入れたが、ミケル・メリーノのダイレクトシュートは枠に飛ばず、得点につながらなかった。

 久保が同26分に古巣サポーターにブーイングを受けながら交代したあと、チームは2点を奪われ0-2の敗北を喫し、久々の連勝という波に乗ることはできなかった。

ソシエダの久保建英がプレーしたビジャレアルの本拠地エスタディオ・デ・ラ・セラミカ【写真:高橋智行】
ソシエダの久保建英がプレーしたビジャレアルの本拠地エスタディオ・デ・ラ・セラミカ【写真:高橋智行】

スペインメディアから高評価「久保交代後に崩壊」 久保本人は「いい状態」と自信

 全体的にチームのパフォーマンスが悪かったなか、久保はスペインメディアに高評価された数少ない選手だった。

 クラブの地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」は、「久保が再び最も多く攻撃に絡んだ選手となった。試合開始直後にいきなりレイナの守るゴールのニアポストにシュートを放った。(ラモン・)テラッツと(フアン・)フォイスのイエローカードを誘発し、ハーフタイム後にはシュートをクロスバーに当て、ミケル・メリーノがあと一歩でゴールというチャンスを演出した。ラ・レアルは久保交代後に崩壊した」と評し、チームトップとなる唯一の4点(最高5点)をつけた。またスペイン全国紙「AS」「マルカ」は、ともに2点(最高3点)と高く評価している。

 試合後、久保はチームの無得点ついて、「入らない時は入らない。くよくよしてもしょうがない」と気持ちを切り替え、自身のコンディションについては「いい状態。終盤に差しかかってコンディションがままならない選手もいるが、僕はいいコンディションで臨めているので問題ない」と自信をうかがわせていた。

 またリーグ戦が佳境に入るなか、今後の目標については「上位陣との戦いがまだ残っているので厳しいものになるとは思うが最後笑って終わりたい」「できれば4位で終われたら」と、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場権獲得を切望していた。

スペインメディア「レレボ」ビジャレアル番記者のイグナシオ・サンチス・ファロミール氏が久保建英について分析【写真:高橋智行】
スペインメディア「レレボ」ビジャレアル番記者のイグナシオ・サンチス・ファロミール氏が久保建英について分析【写真:高橋智行】

ビジャレアルの番記者が久保の変化を指摘、当時は「信頼を全く得られていなかった」

 スペインのスポーツウェブメディア「レレボ」でビジャレアルの番記者を務め、2季前の久保をよく知るイグナシオ・サンチス・ファロミール氏に試合後、この日のパフォーマンスを評価してもらった。

「今日の久保はチーム同様、徐々に調子を上げていった。私は彼がピッチ中央でプレーした時のほうが好きだったけど、ペナルティーエリア内でチャンスを作り出す能力が欠けていたように思う。中盤でミケル・メリーノやブライス・メンデスと上手く連係していたが、最後の局面でその輝きが発揮できなかったようだ。それでも今日、久保はいい試合をしていたよ」と、久保の古巣戦を分析した。

 また、2季前の2020-21シーズン前半に所属したビジャレアル時代と現在の久保を比較してもらうと、「あの時とは全くの別人だ。今の久保のほうがはるかにいい。そう思う理由は2つある。1つはレアル・ソシエダでイマノル(・アルグアシル監督)の信頼をしっかり得ていること。ビジャレアル時代はウナイ・エメリ(当時ビジャレアル監督/現アストン・ビラ監督)の信頼を全く得られていなかったからね。もう1つは、久保が自然な形で成長し続け、成熟したことで、より優れた選手になったからだ。今の久保は、ビジャレアルにいた頃とは全く別の選手だよ」と、ここ2年間での大きな変化に驚きを感じていたようだ。

 ソシエダは今回の敗戦により、直近の公式戦12試合およびリーガ9試合でわずか2勝のみと厳しい状況が続いている。残り11節、現在ギリギリで維持しているCL圏内の4位に踏みとどまれるかどうか、今後も気の抜けない戦いが続いていく。次は現地時間4月8日の第28節、ヘタフェとホームで対戦する。久保が今回のビジャレアル戦同様、古巣相手に成長ぶりを見せつける機会となる。

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高橋智行

たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。

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