「徹底できていない」 VARの浮かび上がった課題、審判委員会・東城氏が言及「選手に判定を伝えるのは大切だが…」

オフサイドラインの3D化についても取り上げている(写真はイメージです)【写真:高橋 学】
オフサイドラインの3D化についても取り上げている(写真はイメージです)【写真:高橋 学】

来期から導入のオフサイド3Dラインも説明

 日本サッカー協会(JFA)は11月14日にオンラインでレフェリーブリーフィングを開催。出席した扇谷健司審判委員長と東城穣Jリーグ審判デベロプメントシニアマネジャーが、13日の試合までの主な事象について説明した。今季の総括としてビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)に関する各種データのほか、課題や来季に導入されるオフサイドラインの3D化についても取り上げている。

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 東城氏からは今季のJ1トータル306試合で、主審が耳のレシーバーに手を当ててVARを交信するチェックを行った回数が2220回(1試合平均7.25回)であり、その平均が59.1秒間。オフサイドやボールがラインを越えていたかどうかなどの事実をVARが確認して判定の修正に至るVARオンリーレビューが24回、主審が映像を確認するオンフィールドレビューが46回のトータル70回で、4.37試合に1回の割合でVARが介入しているというデータを示した。

 VAR導入にあたり、サッカーのルールを統括する国際機関のIFABからは、3試合に1回ほどの割合でVAR介入が起こるという目安を提示されていたことから、現状はその想定より少ないとしている。

 課題としてはコミュニケーションや試合再開までの時間短縮が挙げられた。東城氏は「大きな判定があった時、選手は反応するもの。レフェリーに言いたくなる気持ちは理解できるが、協力してもらいたい部分もある。VARと会話したい時、できなくなってしまう。選手に判定のことを伝えるのは大切だが、どこかで切ってVARと話さなくてはいけない。現場の判定は下り、VARの確認を待つ流れになる。そこは来季に向けての課題かもしれない」とコメントした。

 東城氏はピッチ上で主審がPKの判定を下してVARがチェックする場面を仮定し、「PKの判定をした時、選手が言いたい気持ちは理解できる。ただし、そこでみんなで話しをして、チェックの結果が終わってからPKの準備になると時間が掛かる。次の再開準備をしている間にVARの確認が終われば理想的。プレーが切れてから再開までの時間の短縮に取り組んでいきたい」と話した。

 10月に開催されたレフェリーブリーフィングでも、主審が選手とVAR双方とのコミュニケーションの板挟み状態になり、適切な確認ができていない場面が課題として挙げられた。東城氏は「一言で言えば『協力』になってしまうが、VARと話したいので時間を下さいという具体的な声掛け、レフェリーのパーソナリティーや時間の使い方もある。いろいろなやり方はあるが、徹底できていない」と課題を認識している。

 そのうえで東城氏は「なかなか新型コロナウイルスの影響で各クラブ回りができていなかったが、キャンプ地でトレーニングマッチの審判をさせてもらう時などにコミュニケーションを取りたい。また、スタンダードビデオなどで共有したい」と話した。

 来季はVARによるオフサイド確認が3D化される。懸念される判定が出るまでの時間の問題に東城氏は「実際に比較するポイントを合わせる手前までオペレーターが操作し、最終的にどこに合わせるかをレフェリーと協力する。これからトレーニングをしてになるが、なるべく時間を短くできるようにしたい。ただ、VAR導入のころと少し近い感覚があるかもしれない」と、導入当初は運用面で慣れていく必要性があることを示唆した。

 VARの本格導入から2シーズンが終わってJ1ではかなり定着している感もあるが、選手との協力関係の形成など改善点も見られる。オフサイドラインの3D化も含め、シーズン前からの準備が大切になるとも言えそうだ。

(FOOTBALL ZONE編集部)



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