CL歴史的一撃のフランクフルト鎌田大地、ボランチで見せた“成長の幅” 「ここはドイツ…そういうプレーが評価される国」

守備で拍手も「僕自身は攻撃でいいプレーをして沸くほうが嬉しい」

 守備でも頼もしい姿を見せ続けている。この試合でも何度タイミングのいいスライディングタックルでボールを奪取したことか。ファンからはその度に大きな拍手が送られたが、そこまで大きいものではない。ファンが鎌田を見るスタンダードが明らかに高くなっているからだろう。今の鎌田ならば、そのくらい当たり前なのだ。

「僕自身は攻撃でいいをプレーして沸くほうが嬉しいですよ。ここはドイツだし、(守備で身体を張る)そういうプレーが評価される国でもある。しっかりやっていかないとダメだなと思います」

 気負った様子も見せずにサラッと話す。ボランチとしてプレーするからなのか、いずれにしても鎌田はさらに成長の幅を広げ、攻守に欠かせない存在であることをコンスタントに証明し続けている。

「試合数もすごく多い。ブンデスも、カップ戦も、CLもいい位置につけていて、毎試合、目の前のことに集中している。今日も勝たないといけないっていうよりは、『自分たちのプレーをして、そうしたら結果は付いてくる』っていうような感じのミーティングだった」

 積み重ねてきた自分たちのパフォーマンスへの自信。フランクフルトの歴史的な勝利は決勝トーナメント進出の可能性を最終節までつなげている。

 オリバー・グラスナー監督が「このグループの4クラブは拮抗している。最後までどこが抜けるのかは分からない」と語っていたように、最終節を前にトッテナム(勝ち点8)、スポルティング(同7)、フランクフルト(同7)、マルセイユ(6)と、どのクラブにも決勝トーナメント進出、UEFAヨーロッパリーグ(EL)へ転戦、グループステージ敗退の可能性がある。

 11月1日、フランクフルトはスポルティングとの運命のアウェー戦に挑む。

「自分たちが開幕戦(0-3で負け)でね、こういうふうな展開にしてしまったと思う。ただ勝てる相手でもあると思う。まずは(リーグのボルシア・)ドルトムント戦があるんで。しっかりやっていきたいと思います」

 鎌田はいつもと変わらぬ落ち着いた様子で、そう話していた。GKケビン・トラップは「勝負を決める一戦を乗り越える力が自分たちにはある」ときっぱり。昨季ELでも見せた勝負強さを発揮して、悲願の決勝トーナメント進出を果たすことができるだろうか。鎌田に懸かる期待は大きい。

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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