サッカー界の流行に見る広島やC大阪が伸びた理由 欧州トップレベルはすでに次の段階、Jリーグも時間の問題?

ルヴァン杯決勝で広島とC大阪が対戦【写真:徳原隆元】
ルヴァン杯決勝で広島とC大阪が対戦【写真:徳原隆元】

【識者コラム】広島は今季のJ1を象徴するチームの1つ、欧州の流行がJリーグに流入

 天皇杯を逃したサンフレッチェ広島だったがルヴァンカップでは優勝。広島は今季のJ1を象徴するチームの1つだと思う。ルヴァンカップの決勝で対戦したセレッソ大阪も似たタイプのチームだった。

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 広島、C大阪の共通点は高い位置でのプレッシングとショートカウンターだ。広島のほうがボール保持者へプレスするタイミングが早く文字どおりのハイプレスなのに対して、C大阪は4-4-2の守備ブロックを組んでからハーフウェーライン付近からプレスという違いはあるものの、どちらも前からしっかり守備をして奪い、相手の守備が整う前に攻め込もうという狙いは共通している。

 なるべく高い位置でプレッシングを行おうとするチームは多く、J1の半数以上がそうなっている。これはJリーグだけの傾向ではなく世界的なものだろう。少なくともヨーロッパの主要リーグは数年前からそうなっている。自陣からビルドアップするチームが増えれば、それを奪って得点に結びつけようとするチームも増えるのは自然な流れと言える。

 敵陣でボールを奪えば、相手の守備は半壊している状態なので崩す手間が省けるというメリットも大きい。戦力的にビッグクラブに太刀打ちできない中堅以下のクラブでも、ハイプレスが機能すれば勝ち目はあるので採用したい戦い方なのだ。逆にビッグクラブもボールを支配して押し込めるので、ボールを失った時にわざわざ自陣まで引いて守るのは合理的ではなく、ボール支配力の強いチームはもともとハイプレス志向である。つまり、ハイプレスは多くのチームに需要のある戦術ということになるわけだ。

 今季のJ1ではヨーロッパ人の新監督であるミヒャエル・スキッベ監督(広島)、アルベル監督(FC東京)は明確にハイプレスを採り入れていて、解任されてしまったがレネ・ヴァイラー監督(鹿島アントラーズ)もそうだった。ヨーロッパの流行がJリーグに流入した形である。横浜F・マリノスや川崎フロンターレなどはすでにそうなっていた。

 ポジショナルプレーの概念が数年前から浸透してきて、自陣からビルドアップするチームが増えてきた。それに対するカウンタープレスが機能すれば、未熟なビルドアップ型をことごとく食い尽くす可能性がある。広島やC大阪が伸びてきた理由の1つだ。

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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