久保建英の左サイド起用、メリット&デメリットは? アメリカ戦から考察…アピール成功も浮上した2つの懸念点

瞬発力に秀でた前田の特徴を生かせる意味でも、久保の起用は理に適う

 また、この試合では見られなかったが、久保が左サイドに入ることでのメリットがもう1つある。左サイドに開いたところから、スムーズにクロスを入れられる点だ。これは、この試合の1トップで起用された前田の持ち味を考えても重要になる。仮に左サイドの高い位置でボールを奪えた時、右利きの選手なら一度持ち替えなければならなくなる場面でも、左利きの久保であれば、すぐに中にボールを入れられ、瞬発力に秀でた前田の特徴を生かせるのだ。今回の試合では、久保から前田へのクロスという場面はあまりなかったと思うが、前田を1トップとするこのシステムで戦うなら、左の久保は理に適っている。

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 久保がハードワークでき、プレッシングをかけに行った時、あるいは構えた状態で相手に仕掛けられた時には、十分に守備でも戦えることが見えたのも、今回、左サイドで久保を起用したことで見えた収穫だった。攻守において貢献しており、問題がないようにも見えるが、気がかりな点が2つある。

 1つ目は、前半8分に見られたように自陣の深いエリアでパワーのある相手に対応しなければいけなくなった時だ。フィジカル面で強くなってきている久保だが、フィジカルの屈強な相手とのぶつかり合いになると苦しい。この場面も、もう少しサイズがある選手であれば、相手のプレーを制限できそうだったが、深い位置まで侵入を許した。狡猾な相手とのマッチアップになれば、ファウルを誘われてPKを取られることも想像される。忘れてはならないのは、カタールで対戦するのはドイツ、スペイン、コスタリカという国なのだ。

 そして、もう1つは最大の持ち味である久保の攻撃力が、どうしても制限されてしまうことだ。これは今回の相手がアメリカだったからこそ、余計に目に付いたのかもしれない。前述のように、アメリカは右SBを高い位置に押し上げて、ウイングに近い位置に置いた。これに面食らったDF中山雄太(ハダースフィールド・タウン)は、立ち上がりの10分ほど、かなり困惑した状態でプレーし、MF守田英正(スポルティング)や久保に助けられていた。

 久保も「相手SBがウイングのような位置を取って、相手のウイングも中山選手のところに張り付いたので、戻らないといけなかった。不本意だけど、チームの勝利のためにやるしかない。前半はそこで守って奪ってカウンターというシーンが何回もあった。僕としてはほかの選手に比べて守備のタスクも多かったけど、チームの決まり事から派生したなかでのことなので、チームのために身を粉にして頑張って良かったと思う」と話し、守備面での要求に応えられたことを強調したが、同時に攻撃面で関わりきれなかったことへの悔しさも滲ませている。

 かつてMF中村俊輔(現・横浜FC)が左ウイングバックでプレーした際、MF名波浩がより高い位置で自由にプレーさせたような戦い方ができれば、より久保の持ち味である攻撃力も生かせるように思われるが、アメリカ戦ではかなりのエネルギーを守備に割かざるを得ず、低い位置でのプレーも強いられた。

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