ACL“日韓戦”、なぜJクラブは劣勢だったのか? 韓国クラブに学ぶべきヒントとJクラブの伸びしろ

全8度の日韓戦実現、、4勝4分のKクラブは相手の分析&対策に加えて適材適所の起用

 実はこのへんに今年のACLでの日韓対決の劣勢の理由が隠されているのかもしれない。

 結局今年は全8度の日韓戦が実現し、Kクラブの4勝4分(PK戦は引き分け扱い)だった。Jリーグを代表した4チームは、いずれも「自分たちのスタイル」を最優先し、ボールを保持しゲームを支配しようとした。対戦相手の長所を消すよりは、まず自分たちの特徴を前面に出し圧倒することに重きを置いた。それに対し全北は、対戦相手の分析に長け要点を絞り込み対策を練り、時には個々のポジションを替えながら適材適所を貫いた。

 例えばJ1で首位を走る横浜F・マリノスは、ラウンド16の神戸戦で右サイドを縦横無尽に切り裂く飯野七聖や、中盤からフリーでゴール前に進出して来る山口蛍を放置したまま敗れたが、Kリーグの全北は見事に対応して神戸を競り落とした。浦和戦もいくらパスを回されても焦れずに、相手が押し上げミスするのを待ってカウンターを仕掛けて決定機を連ねた。

 もちろんシーズンを通してファンを魅きつけるのはJクラブの姿勢だろう。さらにリーグ全体を俯瞰すれば、当然当該国同士で輸入超過のJリーグがKリーグに質で劣ることはないはずだ。逆に全北を筆頭とするKリーグの有力クラブには、それだけ国内リーグに余裕があり、ACL、とりわけJクラブとの試合に集中できる土壌があるという見方もできる。ただし局面ごとの対策や大会を通して勝ち抜くための戦略に目を凝らせば、巧みに総合力を引き出した全北からも学ぶべきヒントはある。そこがJクラブの伸びしろとも言えるかもしれない。

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(加部 究 / Kiwamu Kabe)



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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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