激闘の神奈川ダービー、横浜FMマスカット監督が黒星でも「今季ベスト」と評した訳

J1リーグ王者を巡る戦いはさらに熾烈に

 もっとも、互いのスタイルの違いもあるだろう。

 横浜FMは攻守において“量”で他を凌駕する。プレス時の二度追い、三度追いは当たり前。ポゼッションでも何度もやり直し、正解を見つけるためにチャレンジを厭わない。試行回数で圧倒的に上回り、試合の流れを掌握していく。

 川崎は、やはり“質”が高い。その内実は判断を変えられるプレーにあり、MF脇坂泰斗やDF橘田健人はファーストタッチでプレッシャーをいなした。異次元のキープ能力を誇るFW家長昭博については語るに及ばないだろう。彼らの立ち居振る舞いに共通しているのは無駄がなく、かつ流麗であることだ。

 もちろん横浜FMは量だけを追い求めているわけではなく、同時に質も高めていく必要がある。その点において勝利したチームは格好のお手本で、見習うべき部分も多い。スタイルや方向性が異なるから敬遠するのではなく、認めたうえで次に進むべきだ。相手の強みは自分たちの伸びしろと同義である。

 前半戦は開幕直後に対戦し、横浜FMが4-2で勝利した。今回の後半戦は川崎が雪辱を期した格好となり、消化試合数が2試合少ないことを考えれば両チームの差はほとんどない。2017年以降、5連年連続でタイトルを分け合ってきた2チームが今季の覇権争いで一歩も二歩も抜きん出ている、とは決して言い過ぎではないだろう。

 そして直接対決は1勝1敗でも、シーズンを通しての明暗は必ず分かれる。残り約3か月、チャンピオンを決める戦いはさらに熱を帯びていく。

(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)



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藤井雅彦

ふじい・まさひこ/1983年生まれ、神奈川県出身。日本ジャーナリスト専門学校在学中からボランティア形式でサッカー業界に携わり、卒業後にフリーランスとして活動開始。サッカー専門新聞『EL GOLAZO』創刊号から寄稿し、ドイツW杯取材を経て2006年から横浜F・マリノス担当に。12年からはウェブマガジン『ザ・ヨコハマ・エクスプレス』(https://www.targma.jp/yokohama-ex/)の責任編集として密着取材を続けている。著書に『横浜F・マリノス 変革のトリコロール秘史』、構成に『中村俊輔式 サッカー観戦術』『サッカー・J2論/松井大輔』『ゴールへの道は自分自身で切り拓くものだ/山瀬功治』(発行はすべてワニブックス)がある。

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