“新生”清水が放つ「ワクワク感」 躍動する新戦力の陰で光る既存メンバーの存在感
【J番記者コラム】ロティーナ新体制、14年ぶりの開幕2連勝を逃すも好発進
新生清水エスパルスは、Jリーグ開幕戦の鹿島アントラーズ戦で下馬評を覆す逆転勝利(3-1)を収めた。昨年は攻撃的サッカーを掲げたピーター・クラモフスキー監督の下でチーム改革を目指したが、成績が振るわずシーズン半ばで挫折した。
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こうした状況を受けて、4チームが自動降格になるという例年以上に厳しい今季に向けて、クラブはJリーグで実績のあるロティーナ監督を招聘し、15人の既存選手を放出して新たに11人の選手を獲得。鹿島との開幕戦には11人中7人の新戦力を先発起用して6年ぶりの開幕戦勝利を手にした。
ホーム開幕戦となった第2節は5年ぶりにJ1へ昇格したアビスパ福岡が相手となった。前節に名古屋グランパスに1-2と力負けした福岡は、リーグ戦「10位以内」という目標達成のために連敗は避けたい状況でもあった。
上限1万人のIAI日本平スタジアムには、昨年のコロナ禍になってから最多となる9000人を超える清水サポーターが駆け付けるなど、期待の大きさが窺えたホーム開幕戦は、それに応えようと選手たちが躍動した。前半12分に右サイドのMF中山克広のサイドチェンジからFWカルリーニョス・ジュニオにわたり、ペナルティーエリア間際のMF中村慶太へ。DF片山瑛一が猛然とエリア内に侵入する動きで福岡ディフェンスを引きつけるとフリーで余裕のできた中村がタメを作り、その間に中央に回り込んだカルリーニョスへヒールで落とし、ブラジル人FWは右足でコースを狙いすましてゴールを決めた。後半16分に同点に追いつかれるも、その4分後には片山のロングスローからのチャンスで生まれたこぼれ球を、中山が左足を振り抜く豪快なシュートで再びリードを奪った。
中山は同30分にもダメ押し点となるシュートを決めたかと思われたが、これはオフサイドでノーゴールの判定に。専修大学から当時J2の横浜FCに加入し、新卒1年目で32試合6ゴールを決め、横浜FCの13年ぶりとなるJ1昇格に大きく貢献。しかし、昨季は体調不良から初挑戦のJ1で16試合出場ノーゴールという不完全燃焼で終わってしまった。「去年1年間、体調不良が原因で試合に出る機会がすごく少なかった。そんな僕を必要としてくれた清水エスパルスさんにはすごく感謝して移籍を決断した」と加入会見で話したが、中山と清水とは縁があり、専修大学3年生時の2017年7月に清水に8人もの別メニュー選手が出たため、現在、ヴァンフォーレ甲府に在籍しているMF小林岩魚と2人で「応援練習参加」という形で清水の練習着に袖を通していた。この試合の1点目の起点、そして一時は勝ち越しゴールとなった自身J1初ゴールと、激戦のサイドハーフのポジション争いで一歩リードする活躍となった。
下舘浩久
しもだて・ひろひさ/1964年、静岡市(旧清水市)生まれ。地元一般企業に就職、総務人事部門で勤務後、ウエブサイト「Sの極み」(清水エスパルス応援メディア)創設者の大場健司氏の急逝に伴い、2010年にフリーランスに転身。サイトを引き継ぎ、クラブに密着して選手の生の声を届けている。