王者星稜を襲った半年間の低迷期 連覇を逃した悔しさの裏にあるものとは

次の冒険を見据えて

「私が現場に復帰したのは9月。今大会に臨む上で、半年弱の期間での調節が求められた。その完全とは言えぬ状態の中で、なんとかここまで来ることができたな、というのが正直な気持ち。選手たちはよく頑張ってくれた」

 星稜は定期的なミーティングを行う際、まずチームミーティングで1~1時間半ほど戦術的な共有を行い、それから選手のみのミーティングを1時間、そして必要であれば3年生のみでのミーティングも開き、入念に考えやイメージを擦り合わせてきた。星稜の選手たちは「どのチームよりもミーティングをしてきた自負がある」と口を揃えた。他校に出遅れた分、限られた時間の中で最大限の調整を行ってきた。それが前回王者を、準決勝の舞台まで辿り着かせたのだ。

 河崎監督の表情は終始晴れやかなものだった。長年選手権を戦ってきた経験値から、現有戦力のベストを引き出したというやり切った思いからの笑顔だったのだろう。しかし、どうやら理由はそれだけではないようだ。

「今度は来年の選手権まで丸1年、チーム作りに時間をかけて準備することができる。また、ここに帰ってきますよ」

 そう語った名将の目には、連覇を成し遂げられなかった悔しさではなく、次の冒険に向けた燃えたぎる闘志が宿っていた。

【了】

城福達也●文 text by Tatsuya Jofuku

 

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