“ドリブル小僧”からゴールゲッターへ C・ロナウドの変貌を支える「尋常でない速さ」

ユベントスFWクリスティアーノ・ロナウド【写真:AP】
ユベントスFWクリスティアーノ・ロナウド【写真:AP】

CLアトレチコ戦でハットトリック、ヘディング弾直前に見せた強烈なステップワーク

 UEFAチャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦の第2戦、ユベントスがアトレチコ・マドリードに3-0で快勝し、2戦合計3-2と逆転してベスト8進出を決めた。ユベントスの得点は、すべてクリスティアーノ・ロナウドだった。

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 3ゴールのうち最初の2点はヘディングシュート、3点目はPK。3トップの左でプレーしたロナウドのドリブルに、全盛期のキレは感じられなかった。スポルティングCPからマンチェスター・ユナイテッドに移籍した頃は典型的な“ドリブル小僧”だったが、徐々にドリブラーからゴールゲッターへと変貌し、ここ数年に関してはドリブラーだったことさえ忘れそうになるぐらいである。

 アトレチコ戦に関して言えば、ロナウドは「ヘディングの人」だ。

 1点目は左からのクロスボールをファーサイドで合わせている。マークしていたフアンフランのほうが先に落下点に入っていたが、ロナウドは背後から競りかけ、突き出した頭でボールを捉えていた。この時のステップワークの速さが強烈だ。こういう時のロナウドは、体に電流を走らせることができるようだ。反応の速さが尋常でない。

 ドリブラーはたいていスピードがあり、ロナウドもそうだ。シザースや引き技など多種多様な技を高速で繰り出すドリブラーだが、抜く時は意外とシンプルにスピードでぶっちぎる。ただ、全盛期のキレとスピードはなくなってきている。そのかわり、ゴール前でクロスボールにアジャストする時の細かいステップワークには磨きがかかっているように思う。

 スピードスターは、もともと瞬発力に恵まれているのでジャンプ力がある。リオネル・メッシも見た目よりヘディングは強い。ただ、メッシには身長がない。ロナウドのジャンプ力は驚異的で、長身のぶん打点の高さは他の追随を許さない。ドリブラーとしてのステップワークと瞬発力を、今はゴール前のシュートに集中的に使っている。

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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