インテル残留のその先へ キャリアの危機も糧とする長友の人間力

トップ下起用の屈辱も「前線の選手の気持ちが分かった」

 インテルのDF長友佑都は1日、埼玉県内で行われている日本代表合宿に合流を果たした。この日、ロシア・ワールドカップアジア2次予選カンボジア戦(3日・埼スタ)に備え、チームメートとさまざまな確認を行った。一方で、インテル残留となった今夏の去就問題について「いる場所で努力するだけ」と語り、これまでと変わらぬ姿勢でサッカーと向き合うことを言葉にした。
 約1カ月以上にわたって、その去就に注目が集まってきた。プレシーズン中には、未経験のトップ下で起用されるなど、屈辱的な思いも味わったに違いない。だが、5シーズンにわたってカルチョの国でもまれてきた男は、こう口にした。
「いろんなポジション、プレシーズンだけでも3ボランチだったり、トップ下もやったり、サイドハーフもやったり。僕自身にとって良い経験となった。サイドバックに入ったときに、どういうボールがほしいか、前の選手の気持ちが分かった。そこを生かしたいし僕自身も楽しかった」
 その前向きな姿勢こそ、長友佑都のキャリアを支えてきた原動力だ。インテルに移籍した当初、ポジションを得られず、コンディションを落としたことがあった。だが、彼はベンチを温めた試合の翌日、誰に言われたわけでもなく、練習場に向かい、一人グラウンドを走っていたという。その彼だからこそ、残留という結末に至った今、「僕はいる場所で努力するだけ。勝つことだけを信じてやる」と吐き出したのだろう。
 そして、今いる場所に話を移した。3日のカンボジア戦に向けて「まずは、チームが勝つために自分らしいプレーを心がけたい。相手はカウンターを絶対狙ってくる。そこをつぶしながら特長を出していきたい」と、思いを傾けた。
 どこにいるかではなく、何をやるか――。
 曇りがちだった長友の視界は少しずつ開けてきた。なぜなら彼の言葉には、少しの迷いもなかったからだ。
【了】
サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

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