ダークホースになるのは? J2全クラブ戦力分析…主力引き抜きでダメージ大「衝撃的な事実」

J2全クラブを戦力分析【写真:柳瀬心祐】
J2全クラブを戦力分析【写真:柳瀬心祐】

降格した新潟や、磐田などがA評価

 今やJリーグの各カテゴリーの中で、もっとも舵取りが難しいのがJ2リーグではないだろうか。選手が活躍すればJ1クラブに引き抜かれ、逆に出場機会に恵まれなければ、プレーの場を求めてJ3クラブへ流出していく。

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 クラブに潤沢な資金があれば話は早い。相手チームよりも好条件を提示すればいいからだ。だが、J2クラブの平均売上高は約19億円と、J1クラブの約58億円には遠く及ばない(数値は2024年度)。限られた予算の中で、シーズンを通してチーム力を維持し、結束を保ち続けなければならない。

 その手腕が最初に試されるのが、シーズン前の編成だ。特に今季は、例年とは異なる「百年構想リーグ」という舞台が用意されている。各クラブがこの特別大会にどう臨むのか、その姿勢が問われることになる。

 今回の特別大会には2つの大きな特徴がある。一つは、たとえどんな順位になっても「昇降格がない」こと。もう一つは、勝点1につき50万円の賞金が出るという「明確なインセンティブ」が存在することだ。

 この大会をチームの土台作りに充て、来る2026-27シーズンに備えたい。昇格がない以上、資金的に無理はしたくない。しかし、地域リーグラウンドを全勝すれば手に入る2700万円という賞金は、決して無視できない魅力だ。

 多くの選手が入れ替わる中で、各クラブはどのような手を打ったのか。1月14日時点の移籍情報を基に、各チームの戦力を分析した。基準としたのは、放出された選手が昨季残した実績(出場時間・得点)を、獲得した選手がどれだけ補えているかという数値だ。さらにカテゴリー間の差を考慮した係数を用い、「経験値ポイント」と「得点力」の2軸で評価を行った。

 まず、得点力の大きな上積みに成功したように見えるチームはどこか。

1. 鳥栖
2. 山形
3. 秋田
4. 宮崎

 鳥栖は主力の流出が多いものの、それを上回る数の即戦力を獲得し、攻撃的なスタイルを継続しようという意思が見える。山形も安部崇士らが抜けた穴を的確に埋め、プラスに転じている。注目はJ3から昇格した宮崎。J2での実績がある選手を加え、攻撃力アップに成功している。

 次に、経験値ポイントの収支はどうだろうか。

1. 札幌
2. 磐田
3. 新潟
4. 湘南

 衝撃的な事実は、「放出した選手の経験値を、獲得した選手が上回ったクラブは一つもない」ということだ。全チームにおいて、主力の流出に対してJ1・J2実績のある選手の獲得が追いついていない。特に横浜FC、今治、いわきなどは、主力の引き抜きによるダメージが数値に大きく表れている。その中で、札幌や磐田はマイナス幅を比較的抑えており、健闘していると言えるだろう。

 これらを踏まえた総合評価は以下のとおりとなる。

チーム(去年の順位) 評価 コメント
札幌(12位)C 高嶺朋樹ら主力流出の穴は大きい。内田瑞己獲得も戦力ダウンは否めない。苦しいシーズンになる可能性も
八戸(J3・2位)C 白井達也ら主力が流出している。平松航獲得も全体的には戦力ダウンか。堅守を維持できるかが生命線
仙台(7位)C 真瀬拓海ら主力流出の穴を埋められるか。五十嵐聖己獲得も戦力ダウンを組織力でカバーできるかにかかる
秋田(14位)C 村松航太ら主力流出の穴は大きく、野々村鷹人獲得だが苦しいのは間違いない。堅守速攻の再構築が求められる
山形(10位)B 安部崇士抜けるも柳町魁耀補強で穴埋め。現有戦力の底上げが鍵となるが、大崩れはしない陣容
いわき(9位)C 石田侑資ら主力流出の影響がありそう。高橋勇利也獲得も戦力は充実できず。フィジカルの強みを維持できるか
栃木C(J3・1位)C 関野元弥ら主力流出をカバーすべく西谷和希獲得も昇格に十分な戦力とは言いがたいか。J2の強度への適応が鍵
大宮(6位)C 下口稚葉ら主力流出の穴は大きいが山本桜大を獲得。余力を残しているのは間違いない。攻守のバランス再構築が必要
横浜FC(J1・18位)C ンドカ・ボニフェイスら主力流出の穴は大きく、杉田隼獲得も不安要素は隠しきれない。守備再建が急務
湘南(J1・19位)C 鈴木章斗ら主力流出の穴は大きい。クラブは新体制で臨むため今後も含めて未知数が多い。総合力の底上げが必須
甲府(13位)C 孫大河ら主力流出の穴は大きく、野澤陸獲得も戦力ダウンと考えられる。守備の安定感をどう取り戻すか
新潟(J1・20位)A 長谷川元希の穴をバウマンら即戦力で埋め、さらに上積みを狙える補強。J1復帰へ視界良好のスタートか
富山(17位)C 神山京右ら主力流出。谷本駿介獲得も、降格はないと言え戦力ダウンは否めない。このままではないと思うが……
磐田(5位)A リカルド・グラッサの穴を藤原健介ら即戦力で埋め、さらに上積みを狙える補強。守備再建に目処
藤枝(15位)C シマブク・カズヨシら主力流出の穴は大きく、菊井悠介獲得もまだまだ不安な戦力。攻撃スタイルの継続なるか
徳島(4位)C 田中颯ら主力が流出し、松田佳大獲得もチーム力上積みとまでは言えない模様。若手の台頭に期待がかかる
今治(11位)C マルクス・ヴィニシウスら主力が流出。山本透衣を獲得して今後のチームを作り上げるはず。得点源の確立が課題
鳥栖(8位)B 井上太聖が抜けるも松原颯汰の補強で穴埋め。課題の得点力は向上しており、攻撃的なスタイルで上位を狙う
大分(16位)C 天笠泰輝ら主力流出の穴は大きく、山口卓己獲得も、現状では得点力不足解消への道筋が見えにくい。
宮崎(J3・4位)A 安田虎士朗の穴を安部崇士ら即戦力で埋め、さらに上積みを狙える補強。昇格組のダークホースになり得る

 実のところ、今季の「百年構想リーグ」はJ2・J3混成で行われるため、このデータ上の評価がそのまま順位に直結するとは限らない。また、各チームともJ1昇格がかかったシーズンほどの積極的な戦力拡充は行っておらず、「様子見」とも言える状態で開幕を迎えることになりそうだ。

 その中で、どのチームが大会を通じて手応えを感じ、次なる補強へ打って出るのか。2026-27シーズンに向けた戦いはすでに始まっている。このまま静かに移籍期間が終わるはずはないだろう。

(森雅史 / Masafumi Mori)



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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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