降格→古豪へステップアップも「今は耐え時」 日本代表FWが直面…求められる“信じる心”

町野修斗は今季ボルシアMGに加入した
日本代表FW町野修斗にとって2025年は様々な経験を積んだ1年となった。
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ホルシュタイン・キールで戦った昨シーズンに、フィジカル的にも戦術理解という点でも、大きく成長した。チームのエースとして11得点をマークしただけではなく、攻撃の起点、プレスの先鋒として、重要な役割を担う存在になっていた。
そんな町野獲得に動いたのが古豪ボルシアMG。ヨーロッパカップ戦出場を目標にするクラブへのステップアップ移籍を経て、さらなる成長が期待された今季だが、ここまでのところ個人としても、チームとしても不完全燃焼なのが正直なところだろう。
チームは一時最下位に沈み、ゲラルド・セオアネ監督は6節終了時に解任。後任のオイゲン・ポランスキ監督のもと最悪の状態こそ脱したものの、15試合を終えて勝ち点16の12位という立ち位置は、まだ視界良好と言えるほどではない。
25年最終戦となったボルシア・ドルトムント戦後では後半35分からの途中出場となった町野。1点を追う試合展開で、攻撃的にシフトしたい状況だったが、チームとしての狙いがなかなか見えないまま、試合は終了となった。
現状についてこんなことを口にしている。
「今日もニアサイドで僕が空いてるシーンがあったと思うんですけど、そこでパスが出てこない。そういうところを感じています」
昨季終盤のキールでの躍進は、チームが町野への全幅の信頼を寄せていたことが大きい。町野の動き出しを味方が見ているし、町野にボールが入った時のサポートもスムーズ。だから動きに連続性が出てくるし、町野の良さが余すことなく発揮されていた。
「うん。それが(今はまだ)ないです」
キール時代の町野のパフォーマンスを求めて獲得したのだから、そのクオリティを出しやすいようにチームとしての攻撃も設計された方がお互いにとっていい。それはポランスキ監督もわかっている。ただ、チーム事情やメンバー構成、クラブとしてこれまでの取り組みからの方向転換など、そこまで着手できるステップにたどり着いていない。
キール監督のマルセル・ラップはたくさんのプレー原則を選手に求めていた。キールでアナリストとして活躍する佐藤孝大が説明してくれたことがある。
「試合によって、状況によって動きがいろいろと求められる。当然、頭への負荷も相当高い。そうやっていろんなタスクがあるなかで、FWだから最終的にはボックスに入ってこいって話はずっとされてはいた」
負荷の高いプレーが続くなかでも頭の回転を落とさずに、判断クオリティを高みで安定させるのは本当に大変だ。ブンデスリーガとは80〜90キロある相手選手が時速34〜35キロでぶつかってくる世界。それを常にハイクオリティで発揮できるようになるまではそれなりの時間が必要となったが、その感覚を身につけてからの町野はすごかったし、それができるだけの下地はもう身にはつけている。
一方、ボルシアMGではそれぞれの選手の持つクオリティは高いが、そこまで細かくプレー原則や戦術・戦略プランがあるわけではない。守備に関しては少しずつ整理されてきているものの、オフェンスは選手任せになっている傾向がまだ強い。ドルトムント戦でワントップでプレーしたボスニア代表ハリス・タバコビッチは前線で完全に孤立。味方からのサポートがないと、どんな選手でも厳しい。
町野にしてもそうしたチーム事情の中で、プレーの判断基準を整理して、迷いなくプレーできるようになることが必要となる。チームメイトの思考傾向や特徴をつかみ、自分とのかみ合わせを探っていく作業の積み重ねを続けるしかない。
ただこうした苦境は過去に経験済み。キール時代も最初は様々な課題と向き合っていた。
「簡単にいくときばかりじゃないんで頑張りたいです。得点重ねることでしか、信頼はついてこないと思うんで、来たチャンスをしっかり仕留められるようになりたいと思います」
町野はそう語っている。それこそタバコビッチも同じような立場からポジションを勝ち取った選手だ。シーズン序盤は起用されない試合も多かったが、点を奪い取って、いまやレギュラーとして重要な選手となっている。町野も苦しみながら、リーグで2得点をマークしている。
「やっぱり流れに乗ると、FWにはボールもよってきます。いまは耐え時。いつか流れが来ると思っています」
昨季30節ライプツィヒ戦でのゴールを思い出す。右サイドからのカウンター攻撃に、左サイドのハーフェーライン付近にいた町野がゴール前に猛ダッシュをスタート。「味方がボールを失うかもしれない」「走りこむ自分に気づかないかもしれない」なんてためらいは一切ない動きだ。対峙する相手をうまくブロックし、60m近くスピードを落とさずに走り切り、味方からのパスをダイレクトでゴールしたあのプレー。
さらなる信頼関係を築きあげ、そんな爆発的なプレーをボルシアMGでも見たい。
(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)

中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)取得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなクラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国で精力的に取材。著書に『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

















