王者の重圧背負った強豪校のエースナンバー J内定の逸材…掴んだ全国の舞台は「人生を大きく変える」

前橋育英の竹ノ谷優駕スベディ【写真:FOOTBALL ZONE編集部】
前橋育英の竹ノ谷優駕スベディ【写真:FOOTBALL ZONE編集部】

山形に内定している前橋育英MF竹ノ谷優駕スベディ

 第104回全国高校サッカー選手権の都道府県予選も佳境に入り、各地では代表校が決まり始めている。ここでは全国各地で繰り広げられている激戦の主役たちのエピソード、プレーなどをより細かくお届けしていきたい。

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 第23回は群馬県決勝の前橋育英vs前橋商業の伝統の「群馬クラシコ」から。前年度選手権王者は、伝統校の前橋商業の全員守備、全員攻撃に手を焼くも、前半に挙げたMF柴野快仁(FC今治内定)のゴールを守り抜いて5年連続28回目の出場を決めた。

 昨年度の優勝メンバーで今年は伝統のエースナンバー14とキャプテンを担ったモンテディオ山形内定のMF竹ノ谷優駕スベディについて。彼にのしかかったプレッシャーはとてつもなく大きなものだった。

「開会式に僕と数人で優勝旗やトロフィーを返還しに行くことだけは絶対にしたくはなかった」

 この言葉を聞いただけで、彼が感じるプレッシャーの重さを少しだけ測り知ることができた。もし県予選で敗れてしまったら、今年の12月28日の選手権開会式において、国立に集結した選手たちのほとんどがこれから始まる決戦に胸を躍らせる中で、前回優勝校のキャプテンとして優勝旗返還をするだけで終わってしまうことになる。

「それを想像しただけでも苦しかった。去年の先輩たちが僕らを国立に導いてくれて、いろいろ経験をさせてもらったし、最高の景色を見せてくれた。優勝旗を学校に持って帰ってきてくれたからこそ、今年はまず全員で入場行進をして、優勝旗を『一度』返還することができるようにしなければいけないとずっと思っていました」

 絶対に勝たなければいけない戦いが幕を開けると、準決勝の健大高崎戦、決勝の前橋商業戦は苦戦を強いられた。健大高崎戦は左サイドバックの牧野奨が不在だったこともあり、今年の定位置であるボランチではなく、左サイドバックとして出場。なかなかチャンスをモノにできない中で、最終ラインから献身的な守備とビルドアップに関わりながら、声で何度もチームを鼓舞し、1-0の完封勝利に導いた。

 前橋商戦ではボランチで出場をすると、コンビを組む柴野と中盤で守備でのハードワークをこなしながら、正確なパスで相手のプレスを掻い潜るなど、攻守の要として押し込まれるシーンでもチームに落ち着きを与え続けた。

「今年1年間、どの相手も僕らに対してはかなり高いモチベーションで、きちんと準備をして臨んでくる。ましてやそれが負けたら終わりで、かつ高校最後の大会となる選手権につながる戦いとなると、尚更向かってくる勢いや迫力がリーグ戦と比べ物にならないくらいになる。受け身になってしまったら飲み込まれるので、強い気持ちを持ってピッチに立ちました」

 最後まで毅然たる姿勢でピッチに立つ姿はまさに「闘将」だった。優勝を決めるホイッスルが鳴り響いた瞬間、彼は安堵の表情を浮かべながら天を仰いだ。

「昨年の選手権のおかげでプレーの自信を深められたし、より自立する考えを持てるようになった。プロになれたこともそうだし、僕の中では人生を大きく変えた大会でした。選手権は会場の雰囲気もこれまでと全く違うし、トーナメントで相手もレベルが高い。毎試合全ての力を出さないと勝てないし、追い込まれた状況で、冷静さや技術を発揮しないといけないシチュエーションがより自分の能力を引き出してくれる。短期間だけど、とてつもなく大きなものを得られる特別な時間だからこそ、去年の僕のように後輩たちにも味あわせてあげたいし、それをすることが昨年を経験させてもらった3年生の義務でもありました」

 最低限の目標をキャプテンとして達成することができたからこそ、高校最後の大舞台に向けての準備と、プロに旅立つ前に最高の仲間たちとのサッカーを存分に楽しむために己を捧げるのみ。

「やることはこれまでと一切変わりません。みんなと国立で胸を張って入場行進をして、返した優勝旗をもう一度学校に持って帰ることができるように、1日1日、一戦一戦を大事にしながらみんなで戦っていきます」

 より逞しさと頼もしさを増した背中を仲間に見せながら、彼は力強くチームの先頭に立って着実に前に進んでいく。

(FOOTBALL ZONE編集部)

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