選手権覇者が危機…試合中に「『敗退』の2文字」 優勝候補も「僕らは王者ではありません」

前橋育英の柴野快仁【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】
前橋育英の柴野快仁【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】

インターハイで優勝候補筆頭に挙げられる前橋育英、薄氷の予選突破だった

 7月26日から開幕するインターハイにおいて、優勝候補筆頭に挙げられるのが、昨年度の選手権のファイナリストであり、今年もプレミアリーグEASTで2位につける流通経済大柏と同・4位の前橋育英だ。開幕を前に2つの優勝候補のチーム紹介と夏に懸ける思いをコラムにしたい。前編は前橋育英について。

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「僕らは王者ではありませんし、慢心をしたらどこにでも負ける危険性があると思っています」

 こう口にするのは前橋育英の中盤の要・MF柴野快仁だ。前年度選手権王者であり、柴野を始めとして多くの優勝メンバーを残していることから、今年のチームは大きな注目を集めている。

 昨年の優勝メンバーで今年レギュラーを張っているのは、大岡航未と平林尊琉の2トップ、柴野と竹ノ谷優駕スベディのダブルボランチ、右サイドハーフの白井誠也、CB久保遥夢、左サイドバックの牧野進と右サイドバックの瀧口眞大の8人。選手権でも個性を発揮した彼らが軸となるのは間違いないが、今年に入って台頭してきた選手も非常に能力が高い。

 GKは2年生の南京佑。184センチのサイズとセービングスキル、足元の技術も併せ持ってビルドアップにも関わる守護神だ。久保とコンビを組む3年生CB市川劉星は屈強なフィジカルを誇り、圧倒的な対人の強さとサイドチェンジや縦へのロングパスなど、フィードに確かな技術を持つ。

「こうしてハイレベルな彼らと一緒にプレーできているのは感謝しかないし、自分も周りにいい影響を与えられるようにプレーしないといけない」と、自覚も十分。今や無くてはならない存在となっている。

 左サイドハーフの2年生・瀬間飛結は縦突破だけではなく、ポケットに飛び込んでいって決定的なシュートを放つなどフィニッシャーとして存在感を発揮。プレミアEASTでは大岡に次いでチーム2位の3ゴールをマークしている。同じく3ゴールを挙げている牧野との縦のコンビはチームの大きな武器となっており、絶妙なポジショニングとチャレンジ&カバー、ときには2人で崩してフィニッシュまで持っていくことができる。

 ここまで見ても、いかに今年のチームのレベルが高いかが分かる。それでも冒頭の柴野の言葉が出るのは、インターハイ予選で大苦戦を強いられたからだった。

 準決勝の前橋商業戦では後半アディショナルタイムまで0-1とリードを許していた。提示された時間は3分。万事休すかと思われたアディショナルタイム3分、柴野の仕掛けからPKを獲得し、これを自ら決めて土壇場で同点に追いついた。勝負は延長戦でも決着がつかず、PK戦までも連れ込んで、まさに薄氷の勝利だった。

 決勝の桐生第一戦でも後半途中まで一進一退の攻防が続き、後半22分にセットプレーから竹ノ谷のゴールで先制すると、後半アディショナルタイムにようやく追加点を奪えた。

「県予選の試合中に『敗退』の2文字が浮かんだこともあるなかで、僕もそうだし、周りのみんなも最後まで諦めない姿勢を崩さなかった。まだまだ僕らはチャレンジャーなので、この姿勢をなくしたら全国すら危ういと思っています」(竹ノ谷)

「今年はまだタイトルを取っていないので、去年と今年は別物と気持ちを入れ替えてやっていくことが大事だと思っています」(柴野)

 王者が持つ生粋なチャレンジャー精神。もちろん優勝メンバーだけではない。前述した今年台頭してきたメンバーもチャレンジャー精神を持っている。

「最終ラインで優勝を経験していないのは僕だけ。他にも瀬間と南の3人だけ。僕らはまだ彼らを追いかけている段階。それに僕は中学まで無名だったし、チャレンジするためにここにきたので、みんなに食らいついていきたい」(市川)

 王者に慢心は一切なし。真夏で連戦という過酷な連戦を乗り切るだけのエネルギーはチームに満ちあふれている。

(FOOTBALL ZONE編集部)

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