U-23日本代表「最新序列」 運命の五輪最終予選…福田師王&チェイス・アンリ招集の可能性も【コラム】
3月の2連戦招集メンバーの最新各ポジション序列考察
大岩剛監督が率いるU-23日本代表は今月行われた国際親善試合2連戦でマリに1-3と敗れたものの、ウクライナに2-0と勝利。特長の違う相手ではあるが、中2日でしっかりと修正力を見せてパリ五輪最終予選となるU-23アジアカップに向けた最後のテストマッチを内容、結果ともに良い形で締め括った。
この流れだけ見るとウクライナ戦でチャンスを得た選手たちがアピールに成功したようにも思うが、すでにパリ五輪の切符を得ている両対戦国でも、アフリカ勢のマリは慣れない相手ということもあり、難しい試合になることが想定されていた。そうした事情も踏まえながら、大岩監督が本大会出場3枠を懸けた最終予選に向けて、どういう基準で絞り込みをかけていくのか。
1つの焦点になるのはU-23アジア杯のメンバー構成が23人になること。GKの3枠は変わらないなかで、今回の3月シリーズで招集された26人から少なくとも3人が招集外になる。もう1つは今回招集外メンバーから加わる選手がいるのかどうか。欧州組に関してはIMD(インターナショナルマッチデー)だった今回、U-23アジア杯で招集困難と見られる選手はあえて呼ばなかったと想定できる。
そう考えるとA代表の常連である鈴木彩艶(シント=トロイデン)や久保建英(レアル・ソシエダ)はもちろん斉藤光毅(スパルタ)や鈴木唯人(ブレンビー)、小田裕太郎(ハーツ)といった、大岩監督がこれまで中心的に招集、起用してきたメンバーもU-23アジア杯は招集外となり、予選突破を仲間たちに託す形になることが濃厚だ。
ただ、海外組でも福田師王(ボルシアMG)やチェイス・アンリ(シュツットガルト)のように、トップチームで主力に定着していない選手はU-23アジア杯に招集できる可能性もある。そこは今回のメンバーの評価も影響してきそうだ。メンバー発表は4月4日なので、カタールで来月15日に開幕するU-23アジア杯に向けて、Jリーグの同世代の選手たちがアピールできるのは2試合。最終予選ということを考えるとサプライズ招集は考えにくいが、招集経験のある選手であれば逆転の可能性はありそうだ。
センターバック2枚は馬場晴也&鈴木海音のコンビが軸
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GKの3人は3月シリーズのメンバーでほぼ確定か。その中でもウクライナ戦で大きく評価を上げたとみられる小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)は正GK候補に。野澤大志ブランドン(FC東京)はマリ戦でのパフォーマンスがやや不安定だったことから公式戦に出られていないことが響いているかもしれない。藤田和輝(ジェフユナイテッド千葉)も守備範囲が広く、安定感のある選手だが、マリ戦、ウクライナ戦ともに出番がなかったことから現状は3番手と見るのが妥当だ。
右サイドバックは良い意味で選考が非常に難しい。従来の序列ならマリ戦のスタメンだった半田陸(ガンバ大阪)、左右のサイドバックをこなす内野貴史(デュッセルドルフ)だが、大卒ルーキーの関根大輝(柏レイソル)がウクライナ戦で非常に良かった。しかも、攻守のセットプレーで1枚高さを加えられるというのはアジアの戦いを考えても頼もしい。
もし3人全員を招集するとなると、内野が左もこなすことを前提に、左のバングーナガンデ佳史扶(FC東京)と大畑歩夢(浦和レッズ)のどちらかを外すケースも想定される。ただ、FC東京の主力で、第4節のアビスパ福岡戦で見事なゴールを決めたバングーナガンデ、地元・北九州でのウクライナ戦で非常に安定した守備と左からのビルドアップが光った大畑はどちらも重要戦力であり、難しい判断を強いられそうだ。ここに食い込む可能性があるとすれば畑大雅(湘南ベルマーレ)だが、自チームでも途中出場が続くと、今回は苦しい状況かもしれない。
センターバック(CB)は大岩ジャパンの悩みどころだったが、ウクライナ戦では馬場晴也(北海道コンサドーレ札幌)と鈴木海音(ジュビロ磐田)がハイラインの統率、カウンターのリスク管理、サイドチェンジ、持ち上がり、縦パスを意識したビルドアップなど、非常に良かった。馬場は札幌でも3バックの右でスタメンを張っており、昨年のアジア大会でキャプテンを担って以来、序列を上げた1人と言える。
ウクライナ戦で馬場の相棒を務めた鈴木海はもともと、大岩監督の信頼度が高い。磐田ではここまでの4試合ベンチで、出番を得られていないが、少なくともU-23アジア杯の23人から外す理由が見当たらない。ただ、本人も認めるとおり、自チームでこの状況が続くようであれば本大会のエントリーは難しい。逆に代表での実戦経験を磐田でのポジション奪取につなげられるといいが、東京五輪で森保一監督を支えた横内昭展監督がどう判断していくか。
マリ戦で3失点してしまった西尾隆矢(セレッソ大阪)と高井幸大(川崎フロンターレ)の両CBは、慣れないアフリカ勢相手、しかも短い準備期間の1試合目ということで、やや割を食った感もある。マリ戦の反省からウクライナ戦の無失点という流れにおいて、馬場や鈴木海と課題を共有していたはずだ。西尾は人に強く、高井は自チームで鍛えた技術とディフェンス陣でナンバーワンの高さがある。
4人との入れ替わりがあるとすれば欧州組のチェイス・アンリか。現在シュツットガルトではセカンドチームが主体ながら、トップチームのベンチ入りもするようになってきており、クラブとの話し合いによってはU-23アジア杯での滑り込みがゼロではないだろう。抜群の身体能力を誇り、188センチというサイズ以上に高さがある。招集可能となった場合、川崎で代表明けの試合に出られないようだと、高井が苦しくなるかもしれない。
山本、藤田、松木の3人は中盤で「外せない」存在に
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中盤はチームキャプテンの山本理仁(シント=トロイデン)とウクライナ戦でその山本に代わりキャプテンマークを巻いた藤田穣瑠チマ(シント=トロイデン)がコンディションに問題がない限り当確、さらに中盤で多様な役割を果たせる松木玖生(FC東京)は外せないだろう。4-3-3と4-2-3-1を併用するチームで、中盤の構成バランスをどう考えていくか。
自チームでの存在感を考えれば、A代表の経験もある川﨑颯太(京都サンガF.C.)の選出も順当だが、マリ戦ではやや評価を落としてしまったところもあるかもしれない。一方で、利き足の違いはあっても似たような特長のある田中聡(湘南ベルマーレ)が、途中出場からゴールという結果を出したことで、10番タイプの荒木遼太郎(FC東京)、FWとのポリバレントで、得点力のある植中朝日(横浜F・マリノス)と多様な選手構成を大岩監督がどう考えるか。
左右のサイドアタッカーは斉藤や三戸舜介(スパルタ)など有力選手を招集できないと見られるなかで、貴重な欧州組である佐藤恵允(ブレーメン)、左足のキッカーを担う山田楓喜(東京ヴェルディ)、今回の2試合で猛アピールした平河悠(FC町田ゼルビア)の3人はほぼ当確だろう。あとは藤尾翔太(FC町田ゼルビア)が前線の中央と右の両ポジションで起用する計算が立てば、A代表でアジアカップも経験した細谷真大(柏レイソル)、ウクライナ戦でポストプレーが目立った染野唯月(東京ヴェルディ)と3人のFWを招集しやすい。
ただ、三戸や鈴木唯などが不在となる状況で、攻撃のアクセントを付ける選手としてスピードのある小見洋太(アルビレックス新潟)は貴重な存在になり得る。一方で今回は外れたが、大岩ジャパンでも実績のある松村優太(鹿島アントラーズ)が、五輪最終予選前のリーグ戦で大活躍すれば滑り込みもあり得る。松村は左右のサイドをこなすポリバレントでありながら、ジョーカーとしてもスペシャルな能力を発揮できる。ランコ・ポポヴィッチ新監督の下、開幕時はベンチからも外れていたが、彼が再浮上してきてくれたら、大岩監督としても大助かりだろう。
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。