カナダ戦の快勝劇に隠れた課題 森保ジャパン、時間をかけたはずの“サイドの使い方”が不発だった訳【コラム】

日本代表がカナダ戦で残した課題とは?【写真:Getty Images】
日本代表がカナダ戦で残した課題とは?【写真:Getty Images】

「前線の守備からの素早い攻撃」は中村のゴールが象徴

 森保一監督率いる日本代表は、10月13日のカナダ戦で4-1と快勝した。

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 開始早々からプレスをかけてたたみかけると、そのままの勢いで前半2分、相手のクリアを拾った田中碧があっという間に先制点を奪う。前半20分にはアルフォンソ・デイビスを大迫敬介が引っかけたとしてPKを取られたが、これを見事に大迫が弾いて失点を許さない。

 前半40分には浅野拓磨のクロスからオウンゴールで追加点が生まれ、同42分、浅野が中盤のチャレンジからボールを奪って独走し、最後は中村敬斗につないで3-0とした。さらに後半4分、南野拓実の技巧的なトラップとパスを、これまた伊東純也がテクニカルなパスでつなぎ、またも田中が蹴り込んで4-0。後半44分に1点を返されたものの、危なげない勝利を収めている。

 この試合で、日本は数多くの狙いどおりのプレーができた。

 チームの狙いである「前線の守備からの素早い攻撃」は、前半42分に生まれた浅野のチェイスからのゴールが象徴しているだろう。ハーフライン付近でも激しく相手を追い、そこで奪ってカウンターを仕掛ける。さらに中村がちゃんとフォローに入っているところが、チームとしての意思統一されていることが窺えた。

「相手の嫌がる守備」は右サイドがその例だろう。カナダの攻撃の起点であるデイビスを生かした左サイドを警戒するために、日本の攻撃の核である伊東ですら守備に重点を置いてプレーした。

 伊東は「(カナダは)左サイドストロングっていうのがあったので、守備にもちょっと頑張らなければいけないということがあり、毎熊晟矢のフォローできるように意識していましたし、そんな縦に行かなくても勝てればいいんじゃないでしょうか」と、勝利に徹したことを明らかにしている。

 選手の組み合わせも試すことができた。町田浩樹と組んだ冨安健洋は「新しいメンバーでやっていますし、ハマってないなっていう感覚は正直あって、でも、それはやる前から分かってはいたことだったので、ゲームの中で少しずつお互いの距離感だったり選手の立ち位置だったりが分かってきました。そういったところは試合の中で時間を重ねていくことでしかないので、次につながる試合だったと思います」と振り返った。

 代表経験の少ない、あるいはないGKの中で、大迫が安定感のある守備を見せたのも好材料だった。大迫は笑顔で「自分はプロなってPKを止めたことなかったので、それがここ(の場面)で良かったです」と振り返った。

 さらに、3月以降のトレーニングで取り組んでいる、GKからの組み立ても次第に精度を上げている。トレーニング方法も招集を重ねるごとに洗練されていて、そのおかげもあるのだろう。ゴールキックからの展開に相手がプレッシャーをかけてくる場面で、どうパスをつないでミドルサードまで持っていくのか、カナダ戦では途中で引っかかる場面がなかった。大迫も「ピッチも難しいなかで、短いパスなのかロングボールなのか、上手く使い分けながらできたと思います」と胸を張った。

右サイドの田中はなかなか上がれず、左サイドの中村&中山もギクシャク

 個人的な課題を解決した選手もいる。田中は今回の合宿に集合した時、自らの課題をこう語っていた。

「ゴールに絡むところは自分の課題だと思っています。日本にいる時もそんなにゴールやアシストをしてこなかったし、向こう行っても全然していない。貢献度として、見え方としてもやっぱり違うところはあると思うし、日本からの課題でもあるので、そこはすごくこだわっていきたい」

 ミックスゾーンで田中の話を聞いている時、横を通った冨安から「ハットトリックできたよ!」とからかわれていたものの、まずは複数得点を挙げて、意識が変わったところを証明したと言えるだろう。

 と、ここまではカナダ戦で森保ジャパンが成し遂げたことを整理してみた。その一方で、トレーニングでやっていた形をあまり見ることができなかったこともある。

 カナダ戦の前々日のトレーニングで、長い時間を割いたセッションがあった。それはサイドの使い方で、5レーンの一番外側をさらに縦に2分割したエリアを使って、ボランチ、アウトサイドMF、インサイドハーフがパス交換をしている間にサイドバックが長い距離を走ってオーバーラップする練習だった。

 カナダが3バックを敷き、さらに左サイドを攻撃の起点にしていたため、伊東のサイドはなかなか攻め上がれなかった。左サイドも中村と中山雄太といういつもと違う組み合わせだったため、ギクシャクしたまま終わってしまった。

 練習どおりならもっとスピードに乗った攻撃が見られるべきところだった。もちろん相手あってのことだが、それでも形が上手く作れなかったところは次への課題ということになるだろう。

 10月17日のチュニジア戦では大幅なメンバーの入れ替えも考えられる。その選手たちでも、この日の達成レベルと同じがそれ以上のことができてこそ、10月の成果が大いにあったと言えることになるはずだ。

森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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