ドイツ移籍の町野修斗、代表メンバー落選も「慌てない」 “MACHINO”ユニ着用率の高さに驚き…海外クラブで信頼される理由【現地発】

ホルシュタイン・キールで奮闘する町野修斗【写真:Getty Images】
ホルシュタイン・キールで奮闘する町野修斗【写真:Getty Images】

今夏湘南からドイツ2部キールへ移籍、海外クラブでの奮闘ぶりを追う

 日本代表のFWはこのところ上田綺世(フェイエノールト)、浅野拓磨(ボーフム)、古橋亨梧(セルティック)、前田大然(セルティック)の4人が継続して招集されている。ここから割って入るFWは誰なのか。ドイツ2部ホルシュタイン・キールで奮闘する町野修斗は、その1人であることは間違いない。

 今夏に湘南ベルマーレからドイツ北部のクラブに期限付き移籍した町野は、ここまで5試合で2得点1アシスト。今のところ順調に溶け込めているようだ。最初の頃は思ったようにボールが出てこない感覚もあったようだが「チームを大事にするっていうのが、このチームはすごい強い。助けられてますし、人間的にもいい選手が多い」と語る町野は積極的に周りの選手とコミュニケーションを取って、要求しているという。

 そもそもキールは数多くのFWの中からクラブのカラーにあった特長やデータを持った選手をリストアップして、その中から湘南のエースとして活躍していた町野に白羽の矢を立てたという。昨シーズンJ1で13得点、今年も夏までに9得点を記録していた。

 そうした目に見える結果も評価されたはずだが、前からの守備や広範囲で縦パスを受けられる機動力、ボールを持っての推進力、チームに点を取らせる動きなど、町野が湘南で発揮していたプレーをそのままキールで求められているという。

 筆者は日本代表の欧州遠征を前に、パダーボルンとのホームゲームを取材した。まだ加入しておよそ2か月あまりの町野だが、スタジアムや周辺で見かけたサポーターが着ているユニフォームの「13 MACHINO」率の高さに驚いた。パダーボルンはドイツの中でも伝統的に、組織的にハードワークしてくることで知られる。

 町野はそういった相手にも引けを取ることなく、積極的にプレスをかけて、攻撃では前線の相棒ベネディクト・ピヒラーとどちらかが背後に走れば、どちらかがライン間に動いて段差を作る。そこに町野が“スティービー”と呼ぶシャドーのスティーブン・スクリプスキも絡むことで前線に流動性を生み出す。湘南に例えるとピヒラーが大橋祐紀、スクリプスキが平岡大陽と言ったところだ。

 湘南と同じ3-5-2をベースとするキールにあって、町野は2トップの1人でありながら、どっしり構えて深みを作るというよりは、ピヒラーとの適度な距離感で、相手が嫌がるところにポジションを取り、アドバンテージのある状態でボールを受けることでチャンスやフィニッシュにつながる効果的なプレーを意識している。ここまで3試合にフル出場、残り2試合も終盤に近い時間帯までプレーできているのもマルセル・ラップ監督に求められる動きを継続できているからだ。

すでに2ゴールと結果残すも「もっともっと結果と実績を積み上げないとダメ」

 Jリーグから海外に挑戦するFWには国内の古巣でやってきたことと違う役割を求められて、苦労する選手も少なくない。その点、町野は湘南でやっているプレーを本当にそのまま出している。その意味では異国の厳しい環境と言っても、それほど大きなストレスなくプレーできていることが分かる。

 もちろん、町野本人は当たり前のような顔をしているが、並々ならぬ努力が基盤にあることに疑いの余地はない。チームに通訳はおらず、全体ミーティングは当然、ドイツ語で聞く。分からないことがあればラップ監督などからも個別に英語で確認するというが、町野は「英語とドイツ語、両方、習得するチャンス」と前向きに捉えている。

 ここまで第2節のグロイターフュルト戦で自ら獲得したPKによる初ゴールを決めて、第4節のシャルケ戦では左サイドのトム・ローテから出たクロスにファーサイドで合わせる形で今季2点目を記録した。目に見える結果という意味ではドイツ2部という環境で、最低でも二桁は取れないとFWとしての評価を上げられないのは町野も承知だろう。日本代表に選ばれることもそうだ。ただ、点を取るために大事なのは「平常心でやること」という町野に慌てる様子はない。

「まだこっちに来て数試合しか経ってないですし、もっともっと結果と実績を積み上げないとダメかなと思います」

 まずは勝ち点35から40を積み上げて、2部残留を確定させることがクラブの最低目標というように、キールは1部昇格を義務付けられたような強豪クラブではない。町野個人は優勝を目指しているというが、自身が結果を積み上げて行けば、1部や他クラブからビッグオファーが舞い込んでくる可能性は十分にある。しかし、今は「めっちゃチーム」と町野が言うキールのためにも結果で応えていく。その延長線上には当然、代表復帰があるだろう。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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