元Jリーガーのミキッチが日本サッカー界へ提言 成長の鍵は「確固たるスタイルを持つ監督」にあり【インタビュー】

かつてJリーグで活躍をしたミハエル・ミキッチ氏【写真:本人提供】
かつてJリーグで活躍をしたミハエル・ミキッチ氏【写真:本人提供】

ミシャ監督や曺監督、鬼木監督を例に、「確固たるスタイル」の重要性を主張

 ミハエル・ミキッチ氏と言えば、サンフレッチェ広島で9年、湘南ベルマーレで1年プレーし、多くの人々に愛された歴代最高助っ人の1人だ。常々「Jリーグのレベルは高い」と語り、現在は指導者の道を歩む熟練のサイドアタッカーが、さらなる発展を願って日本サッカー界へメッセージを送った。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小田智史、通訳=塚田貴志)

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 クロアチアの名門ディナモ・ザグレブ、ドイツのカイザースラウテルンなどでプレーしたのち、2009年1月に完全移籍で広島に加入したミキッチ氏。並外れた走力と豊富な運動量で右サイドを制圧し、2012、13、15年と広島のリーグ優勝に貢献した。18年にも湘南でルヴァンカップのタイトルも獲得するなど、Jリーグ史に名を残す外国籍選手の1人だ。

 2019年4月に現役引退後、U-21クロアチア代表U-21のアシスタントコーチを皮切りに、古巣ディナモ・ザグレブのトップチームコーチを経て、現在はスロベニア1部マリボルでアシスタントコーチを担当。「Jリーグのオーガナイズは世界トップクラス。サッカーが素晴らしいレベルで行われていた」と、来日当初からJリーグを高く評価していた。

 そんなミキッチ氏は「Jリーグには今後も成長していってほしいと思います」と語り、ポイントの1つに“指導者の強化”を挙げた。

「確固たるスタイルを持った監督を増やしていくことが大切だと思います。例えば、日本で言うなら、(北海道コンサドーレ札幌の)ミハイロ・ペトロヴィッチ監督は独自のスタイルを築き上げた方ですし、横浜F・マリノスにいた(アンジェ・)ポステコグルー監督(現トッテナム監督)、京都サンガF.C.の曺貴裁監督、川崎フロンターレの鬼木(達)監督もそうですよね。スタイルを築き上げるのはサッカーにおいて難しい部分でもあります。そのスタイルを戦術に当てはめていった時に、チームと選手のクオリティーが爆発的に上がると思っています。だからこそ、日本サッカー界の成長を考えると、独自のスタイルを持った監督を招聘するのはすごく大切だと思います」

川崎の鬼木監督と札幌のミハイロ・ペトロヴィッチ監督【写真:徳原隆元 & 小林 靖】
川崎の鬼木監督と札幌のミハイロ・ペトロヴィッチ監督【写真:徳原隆元 & 小林 靖】

 日本には才能豊かなタレントが揃っており、それを発見し、育成できる指導者が増えれば、サッカー界全体の成長を加速できると説く。

「ただ単にスプリントを多くしているだけではダメですし、フィジカルの能力だけでなく、独自のスタイルが選手への刺激となって、成長を促す。日本人選手では、(イングランド1部ブライトンの)三笘薫選手がヨーロッパで素晴らしい活躍をしていると思いますが、日本には彼のようなポテンシャルを持った選手はたくさんいます。ただ、それを育てる、見つける仕事が大変です」

「指導者として日本に戻りたい」という思いを抱き、すでにUEFAプロライセンスを取得するなどヨーロッパで指導者としての腕を磨くミキッチ氏が、自ら指摘した課題の解消役を担ってくれる日もそう遠くはないかもしれない。

[プロフィール]
ミハエル・ミキッチ/1980年1月6日生まれ、クロアチア出身。インケル・ザプレシッチ―ディナモ・ザグレブ(ともにクロアチア)―カイザースラウテルン(ドイツ)―リエカ―ディナモ・ザグレブ(ともにクロアチア)―広島―湘南。J1通算227試合8得点。現役時代はスピードと持久力を生かし、サイドアタッカーとして活躍。2009~17年まで在籍した広島では3度のJ1リーグ優勝に貢献し、クラブの外国籍選手史上最長となる在籍の記録を持つ。広島発祥のパン屋「アンデルセン」や、広島の知る人ぞ知るピザハウス「ピッツァリーヴァ」を「マイキッチン」と呼ぶなど、心から広島を、そして日本を愛した。

(FOOTBALL ZONE編集部・小田智史 / Tomofumi Oda)



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