アンダー日本代表、パリ五輪行き「飛び級」7候補 浦和17歳&磐田18歳の高校生Jリーガーら逸材厳選

左から後藤啓介、早川隼平、貴田遼河【写真:Getty Images】
左から後藤啓介、早川隼平、貴田遼河【写真:Getty Images】

【識者コラム】“飛び級”でパリ五輪に食い込み得る2005年、2006年生まれ7人を厳選

 大岩剛監督が率いるU-22日本代表はパリ五輪の予選や1年後の本番に向けて、欧州遠征など強化を行なっている。五輪メンバーは2001年以降の生まれが対象となり、本大会のみ3人のオーバーエイジの参加が可能となる見込みである一方、下の年代の年齢制限はない。A代表の森保一監督もサイクルを早めていくことを掲げるなかで、今回は28年のロサンゼルス五輪にも出場可能な2005年、2006年生まれの選手から“飛び級”でパリ五輪に食い込み得るタレント7人を厳選した。

■早川隼平(MF/浦和レッズユース/2005年生まれ)

 この世代の中心を担っていくことが期待される左利きの俊英だ。いまだトップ契約は結んでいないが、4月のルヴァン杯の湘南ベルマーレ戦で味方のシュートのこぼれ球を押し込むプロ初ゴール。直後に行われたJ1第9節の川崎フロンターレ戦でリーグ戦初出場を果たした。チャンスに果敢な仕掛けやシュートでマチェイ・スコルジャ監督の期待に応えると、アジア王者をかけたACL(AFCチャンピオンズリーグ)ファイナルの第1戦でも途中起用された。直近ではU-19代表として南フランスのモーリスレベロトーナメントに参加。「どういうところで周りとの違いを見せていけるのかと常に思いながらプレーしています」と語る。左足のキッカーとしても期待が懸かる早川は浦和で主力として活躍することをパリ五輪行きの指標に定めている。

■高橋仁胡(DF/FCバルセロナ・フベニールA/2005年生まれ)

 先日行われたU-20ワールドカップ(W杯)に唯一、2005年生まれの“飛び級”選手として選ばれて左サイドバックとして3試合すべてでスタメン起用された。アルゼンチン人の父と日本人の母を持つ若者はスペインでプレーする一方、日本代表に対する思いは強い。カンテラの大先輩であるジョルディ・アルバに憧れるが、同時に長友佑都も目標の1人として挙げるなど、技巧的でありながらダイナミックなプレーで左から攻撃を活性化させる。パリ五輪の基準で見れば守備面はまだまだ向上の余地がありそうだが、決して層が厚いと言えないポジションだけに、チャンスは十分にあるだろう。当然ここから同ポジションのレジェンドでもあるセルジ・バルファン監督の率いるバルセロナBに昇格、さらにステップアップできるかも注目ポイントだ。

磐田の18歳FW後藤はJ2で躍動中、名古屋17歳FWも注目株

■後藤啓介(FW/ジュビロ磐田/2005年生まれ)

 18歳の現役高校生ながら磐田のトップ契約、1年目にしてJ2で5得点を記録するなど、小さくないインパクトを放っている。それでも、W杯優勝という大目標に向けて、ここで加速を緩めるつもりはないようだ。191センチのサイズに甘えることなく、動き出しの質にこだわるなか、当初課題だった相手ディフェンスを背負ってのポストプレーや競り合いも日増しに改善している、高橋と並ぶ“飛び級”でのU-20W杯メンバー入りも期待されたが、冨樫剛一監督も視察に来た東京ヴェルディ戦で負傷してしまった。その時はさすがにショックを隠さなかったが、すぐに「僕はパリに行く」と切り替えており、海外での飛躍も視野に入れている。もっとも今は磐田をJ1のステージに導くためにゴールを積み重ねる。順調にステップアップしていれば、2年後のU-20W杯は”助っ人”のような立場になっているはずだ。

■貴田遼河(FW/名古屋グランパス/2005年生まれ)

 ストライカーとして、17歳にして豊かな感性を見せているタレントだ。昨年の天皇杯で高校2年生ながらスタメン出場して話題を呼んだなか、今年4月、ルヴァン杯の横浜FC戦でコーナーキックの流れから左足でクラブ最年少記録となる初得点、さらに中央から右足で突き刺す2点目を決めた。5月にはプロ契約を結んでおり、J1で早くも4試合の途中出場を記録している。元FWである長谷川健太監督の下、守備のタスクは精力的にこなすが、攻撃ではボールを前向きに受けたら迷わずシュートを選択する姿勢が危険な存在にしている。2-1で勝利した6月11日のアビスパ福岡戦ではGKとの1対1を外してしまい、J1リーグ初得点のチャンスを逃した。そうした悔しい経験も糧にしながら、名古屋のエースを目指している。東京都の出身で、ヴェルディのジュニアに所属していたが、白血病を患う苦難を乗り越えて現在がある。そうした経験も、夢に向かって諦めない気持ちをサッカー少年へのメッセージとして伝えていく。

■石渡ネルソン(MF/セレッソ大阪/2005年生まれ)

 ナイジェリア人の父を持つスケール感のあるボランチで、テクニックとダイナミズムを兼ね備えている。シンプルに展開するだけでなく、少しでも隙があれば持ち上がってチャンスの起点を作れる選手だ。京都生まれだが、地元のチームに所属しながらセレッソとガンバのスクールに通っていたという。育成年代を通してFWからセンターバック、サイドバック(SB)までプレーした経験から、なんでもできる万能性が身に付いたようだ。昨シーズン、2種登録選手としてJ1デビュー。高校生にしてプロ契約を結んだ今年はなかなか試合に絡めていなかったが、天皇杯2回戦で右SBとして出場。関西リーグ1部のチェント・クオーレ・ハリマを相手にダイビングヘッドで初得点を決め5-0の勝利に貢献した。U-20代表の候補合宿には“飛び級”で招集されたが、最終メンバーには食い込めなかった。2年後の同大会は中心となるべき選手だが、そのポテンシャルから考えれば、来年のパリ五輪も貪欲に狙ってもらいたい。

清水ユースの16歳MFは10代の頃の香川真司を想起

■道脇 豊(FW/ロアッソ熊本/2006年生まれ)

 2006年生まれの大型FWは今月タイで開催されるU-17アジアカップから世界の舞台を目指すが、大きな目標はさらに先にある。16歳でプロ契約、今年2月の開幕戦でプロデビューを果たした。もともとは裏抜けばかり狙っていたというが、大木武監督から攻撃の起点になるプレーなども学んでおり、サイズに見合ったスケール感も徐々に出てきている。今季最も長い出場となった5月28日のモンテディオ山形戦では前線でボールを粘り強くキープしてフリーキックを獲得するシーンもあった。ここまでJ2で9試合に出場、いまだ無得点だが代表活動後のリーグ戦でどんなパフォーマンスを示せるか非常に楽しみだ。今年はU-17W杯、さらに2年後のU-20W杯もあるが、“飛び級”でのパリ五輪は視界に入れている。しかし、道脇が強く意識する後藤啓介を超える結果とインパクトを残していかないと、そこに食い込むことはできないと考えているようだ。もちろん2人が切磋琢磨して行けば、上の世代を一気に蹴落として、かつてない夢の“ツインタワー”が実現するかもしれない。

■矢田龍之介(MF/清水エスパルスユース/2006年生まれ)

 道脇らとともに、今年のU-17W杯を目指す“06ジャパン”の中でも、一際センスが光る16歳のMFだ。攻撃では正確なボールコントロールとルックアップが目を引く。U-17代表では4-4-2のボランチ、4-3-3ならインサイドハーフからビルドアップに加わり、流れに応じてスルスルとゴール前に進出していく。攻撃のあらゆる局面に関わりながら、狭い局面でもアクセントになれる特長が、10代の頃の香川真司を想起させる。今年3月にはスペイン1部マジョルカにトレーニング参加して、貴重な国際経験を積んだ。浦和の早川は埼玉県の町クラブ1FC川越水上公園時代の1つ先輩に当たる。2年後のU-20W杯では共演もあるかもしれないが、そこを待たずに”飛び級”でパリを目指してほしい。

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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