Jリーグを席巻した「MVP不在」の最強チーム 川崎の姿は直近4大会のW杯王者に類似

ベストイレブンに9人も選出された川崎フロンターレ【写真:高橋学】
ベストイレブンに9人も選出された川崎フロンターレ【写真:高橋学】

【識者コラム】ベストイレブンに9人選出も…川崎からMVP1人を選ぶのはかなり難しい

 今年のJリーグアウォーズで発表されたベストイレブンは、ほぼ川崎フロンターレだった。

 GKチョン・ソンリョン、DFジェジエウ、谷口彰悟、山根視来、登里享平、MF家長昭博、田中碧、守田英正、三笘薫。ここまでは川崎勢が独占。他チームから選ばれたのはFWのオルンガ(柏レイソル)とエヴェラウド(鹿島アントラーズ)だけ。2020年がいかに川崎のシーズンだったかが表れている。

 一方、MVPは得点王にもなったオルンガだった。

 オルンガの受賞は妥当だと思う。個の能力は図抜けていた。最優秀選手は優勝チームから選ばれることが多いのだが、川崎から1人選ぶのはかなり難しい気がする。印象的だったのは三笘だが、家長だという人もいるだろうし、谷口や山根でもいいかもしれない。チームとしての強さは圧倒的だったが、MVPが誰か思い当たらないのだ。これはけっこう珍しい現象だと思うのだが、近年のサッカーがそうなっているとも言える。

 ワールドカップを例にとると、1974年まではスーパースターのいるチームが優勝していた。1954年の西ドイツは例外になるが、準優勝のハンガリーにはフェレンツ・プスカシュがいた。西ドイツの勝利は「ベルンの奇跡」と呼ばれたくらいで、これ以外はおよそスーパースターのいるチームが優勝していた。

 流れが変わったのが1978年から。優勝したアルゼンチンに図抜けたスター選手はいない。次の1982年のイタリアもそうだ。大会限定でスーパーな活躍をしたゴールゲッター(マリオ・ケンペス、パオロ・ロッシ)が決め手だった。1986年のディエゴ・マラドーナは例外。まさにスーパースターのいるアルゼンチンが優勝したのだが、次の1990年に優勝した西ドイツには特定のスーパースターはおらず、得点を量産したゴールゲッターもいなかった。その点で、後の流れを先取りしていたかもしれない。

 1994年はゴールゲッター、ロマーリオのいたブラジルが優勝。ここまではスーパースターか、得点王になるゴールゲッターのいるチームが優勝。その意味で転換点となったのは1998年優勝のフランスだ。

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西部謙司

1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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