柿谷曜一朗、輝き詰まった極上トラップと絶妙ゴール “覚醒”の原動力「8番」への思い

2013年頃のC大阪FW柿谷曜一朗【写真:Getty Images】
2013年頃のC大阪FW柿谷曜一朗【写真:Getty Images】

【J番記者が選ぶスーパーゴール|C大阪編】2013年J1第13節名古屋戦(後半22分)…柿谷の輝きが詰まった一発

 セレッソ大阪番記者として真っ先に頭に浮かんだのが、このゴールだった。

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 13年を迎えるオフ、FW柿谷曜一朗には欧州移籍の可能性があった。「(香川)真司くん、乾(貴士)くん、キヨ(清武弘嗣)と同じ舞台に立てる」(柿谷)。高鳴る胸の鼓動。「気持ちは(欧州に)傾いていた」彼に向けられた「セレッソで8番を付けてくれないか」というレジェンド森島寛晃氏の一言が、全てを変えた。

 欧州でプレーする気持ちが「一気に吹き飛び」、「憧れ」の背番号8を身に付けてプレーしたこの年、柿谷はアルビレックス新潟とのリーグ開幕戦(1-0)で終了間際の88分に決勝点を挙げる最高のスタートを切ると、最終的にシーズン21得点を挙げる活躍。終盤には、「8番を付けてゴールする喜びは、今まで以上に嬉しかった。それを何回も味わいたくて、あの感覚が欲しくて、それが続いて、続いて、ゴールする度にその気持ち良さがあった。それがモチベーションになった」と自身の内面に起きた変化が“覚醒”の原動力になったことも明かした。

 なかでも、彼の天賦の才が詰まったゴールが、第13節名古屋グランパス戦(2-1)で決めた一撃だ。MF枝村匠馬(現・藤枝MYFC)のスルーパスに抜け出すと、スピードを落とすことなく左足のアウトサイドでトラップ。そのまま右足ダイレクトで打てる絶妙な位置にボールを落とすと、マークに来た相手のDF田中マルクス闘莉王を置き去りにして、ゴール左隅に鮮やかに決めた。味方との呼吸、相手との駆け引き、利き足ではない左足での柔らかなトラップ、そして、それを瞬時に実行する発想力……。

 この流れるような”ゴラッソ”には、普段は柿谷にハッパをかけることも多かったレヴィー・クルピ監督も、「曜一朗の技術は、ネイマールのレベルに近い。ブラジルに行っても、トラップを含めたボールコントロール、技術という意味ではトップレベルの選手と言い切ることができる」と最大級の賛辞を送った。

 試合後、「トラップはイメージ通り。あとはシュートを逆サイドに流し込むことだけだった」とクールに言い放った自身も納得の一撃は、技術的な能力も突出していたが、「FWでプレーするときは90分の中でメンタルをコントロールすることが大事。うまくいかない時間帯があっても焦れずに」という仕留める集中力も研ぎ澄まされていた。

 この年、初めて本格的にプレーした1トップ。「もう倍くらい取れるチャンスはあった。それを決めていれば、もっと上の順位にいられた。そういうことを考えると、満足すべきではない」とシーズン後に振り返った柿谷だが、卓越した技術をFWとしての決定力に昇華させ、持てる才能をいかんなく発揮した13年の輝きは、Jリーグの歴史と記憶に残り続ける。

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