運命を変えたコンバート ミラン本田を育てた星稜・河崎監督が選手権開幕直前に踏み切った決断とは

DF登録のストライカー加藤がベンチ要員一転、エース級の輝き

 運命を変えたコンバートだった。第94回高校サッカー選手権の準々決勝で、前回王者の星稜高校(石川)は、明徳義塾高校(高知)を3-0で破り、準決勝進出を決めた。盤石の強さを見せてきた星稜の前線で、所狭しと走り回る小柄な背番号25が目立つ。

 選手登録はDF。加藤貴也がFWへのコンバートをされたのは昨年12月に入ってからの事だった。ACミランの日本代表FW本田圭佑などを育てた高校サッカー界の名将、星稜の河崎護監督にとって全国の舞台を前に課題として浮かび上がったポジションが前線だった。

「前線の動き出しが足りなくて、ボールが収まらない。それでも県大会は勝ったんですが、全国ではちょっと難しいなと感じました」

 そこで、166センチと小柄な加藤に白羽の矢が立った。サイドハーフやサイドバックを主戦場にしてきた加藤に、「FWやってみろ」という声を掛けた。コンバート間もなく臨んだ全国の舞台で、河崎監督の狙いは奏功した。2回戦の玉野光南戦で加藤はゴールを決めた。「もともと攻撃が好きなので、FWをやれるのは嬉しいです」という言葉通り、溌剌としたプレーを見せている。

 何よりも目立つのは、相手ボールの際に献身的にプレスを掛ける姿勢だ。コンバートに踏み切った河崎監督も「サイドバックもよく走っていますけど、この3試合で加藤の運動量が一番じゃないですか。本当に効果的な走りをしてくれています」と抜群の運動量を評価。チームの重要な戦力になっていると語る。

 加藤自身も、そこが自分の役割であると話す。そして、河崎監督の言葉を聞くと笑顔を見せた。

「自分のプレースタイルからしたら、得点はたまたまです。今日、監督にそういう風に言ってもらえて、どの試合もそう言ってもらえるようにやりたいです」

 

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