VAR判定で繰り返される「ぬか喜び」 ゴールに“歓喜しない”のが新たな常識に?
U-20W杯で日本もVAR後のノーゴールを経験 韓国対セネガルでは“ぬか喜び”の連続に…
U-20ワールドカップでは、新たな改定ルールが先行して適用されていた。改定ルールではないが、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の運用の仕方も、この大会では少し変わっている。
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どうなのだろうと思うのが、得点のたびに映像チェックが行われていることだ。主審が映像をチェックしているのではなく、映像をチェックした結果を無線で主審に報告している。その時間が少々かかる。得点したチームは当然その間に喜んでいるわけだが、映像チェックの結果ノーゴールになるケースが何回もあった。
ラウンド16の日本対韓国がそうだった。後半に日本がゴールして喜んでいたら、VARでオフサイドが確認されてノーゴールに。判定自体は正当なのだが、その間の“ぬか喜び”がダメージになったという。「10分や20分では修正できない」という選手のコメントもある。
準々決勝の韓国対セネガルは、VARが「猛威をふるった」と言いたくなる展開だった。セネガルが1-0とリードして後半に入ると、後半17分に韓国がPKを得る。ボールとはあまり関係のないところでセネガルの選手が韓国選手を押し倒したことがVARで判明した。
後半30分にはVAR判定で今度はセネガルにPKが与えられる。GKイ・ガンヨンが止めるが、これもVARによって早く動きすぎたと判定されやり直し。そして再度のPKが決まってセネガルが2-1とした。
後半40分、セネガルがCKからゴールするが、またもVARが入りハンドが判明してノーゴール。後半44分、セネガルはまたゴールするがVARでオフサイド。その間、“ぬか喜び”の連続である。
もう時間もなかったので、セネガルは得点を諦めたように選手交代して守備固めに入ったが、長いロスタイムの最後に韓国が同点ゴールを決めて延長戦に突入。最後はPK戦で韓国が勝ってベスト4進出を決めている。
はっきりした判定が出るまでは静かに待つ、感情を高ぶらせない、喜ばないというのが賢明なのかもしれない。しかし、得点しているのに、まるで何事もなかったかのようにしているというのもどうなんだろう。サッカーの大事な部分が阻害されているような気がしないでもない。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。